2026.02.20
丸茂睦(THE CHERRY COKE$)「FISA SUPREMA」インタビュー

アイリッシュパンクの轟音の中で
丸茂睦(THE CHERRY COKE$)が語るFISA SUPREMAのリアル
国内外のフェスやツアーで存在感を放つアイリッシュパンクバンド 「
THE CHERRY COKE$」。その轟音のステージでアコーディオンを演奏する 丸茂睦(まるも むつみ)氏に、電子アコーディオン FISA SUPREMA(フィサ スプレーマ) について語っていただきました。
音、蛇腹の操作感、操作性、そして現場での信頼性。ライブの最前線で鳴らし続けてきた丸茂氏の率直な言葉から、FISA SUPREMAのリアルに迫ります。
── まずは改めて、アコーディオンを始めたきっかけから教えてください。
丸茂: アコーディオンを習っていた祖母が、家でよく弾いていたんです。ある日そのアコーディオンが壊れて、「正直に言ってごらん、触った?」って(笑)。触ってなかったんですけど。それで「興味があるなら、一緒に教室行ってみる?」って言われて、正直あまり興味なかったんですけど、「お小遣い500円あげる」って言われて。5歳だったので、喜んで行きました。
── かなり正直なスタートですね(笑)。
丸茂: そうですね(笑)。でもやってみたら、子どもだったから飲み込みも早くて、別に難しいとも思わなかったんですよ。右手と左手も自然に動いて。コンクールにも徐々に出るようになって、なんとなく続いていました。中学のときは周りの友達みたいに、ギターやりたいって思った時期もありましたけど、cobaさんをテレビで観て「こんなにかっこいいんだ」って衝撃を受けて。それでまた本気で向き合うようになりました。
ジャズを学んだのも、アドリブや編曲ができるようになりたかったからです。アコーディオンって当時は楽譜が限られていたので、自分で作れるようになりたかった。 そこからマヌーシュジャズをやったり、アイリッシュパブで投げ銭ライブをやったりして、ご縁があってTHE CHERRY COKE$に加入しました。

── FISA SUPREMAをバンドで初めて弾いたときの印象はどうでしたか?
丸茂:
「異物感がない」と思いました。どうしても電子楽器って、ピッチが完璧すぎるイメージがあったんです。でもこれは、いい感じに揺らぐ。チェリコ(THE CHERRY COKE$)ではティンホイッスル(アイリッシュ音楽で使われる縦笛)とユニゾンすることが多いんですけど、そこにピッチがビタビタに合いすぎると、逆に気持ち悪くなる。FISAは合いすぎない。揺らぎがあって、ちゃんと寄り添える。そこが一番最初に感じた違いでした。ちゃんと弾き方で変わるんですよ。蛇腹の押し方次第で反応が違う。それが楽しいな、という印象でした。
── 蛇腹の操作感、演奏感はいかがですか?
丸茂: 自分の中で「この楽器が今どれだけ頑張っているか」が、はっきり分かるんです。車のエンジンで言うと、
今何千回転で走っているかが分かる感じ。この辺は気持ちよく走れてるな、とか。これ以上行ったらちょっと無理だな、とか。で、「もう一段階いきたい」ってときに、
蛇腹を強く押すとちゃんとついてきてくれる。無理をするとちゃんと無理が分かるし、馬に鞭を入れるじゃないけど、無理したいときにはちゃんと応えてくれる。音が自分にくっついてきてくれるというか、
対話してる感覚があるんです。
── 音色についてはどう感じていますか?
丸茂: 安心感があります。ものすごく種類が多いので、
絶対に「これだ」って音がある。会場だったり、気分によって、音を変えていけるのが気持ちいいですね。生楽器だとその日の湿度とか会場で多少変わりますけど、FISAは「決めた音」がちゃんと出てくれる。
アコーディオン以外にも、ピアノとかオルガンの音も結構よく使っています。
── 音色をいじってカスタマイズされてますか?
丸茂: アコーディオンの音色で、バンドサウンドで抜ける音域も入れたりとか、ミュゼットチューン(複数リードのわずかなピッチ差によって生まれる揺らぎ)をいじったりとか、やってますね。エフェクトは、基本はPAさんにお任せしてます。自分一人で弾く時は、リバーブを入れることが多いです。あとは、アコースティック企画もやったりするので、そういう時は結構色々変えてます。エージング機能(リードの経年変化を再現するパラメーター)とか、曲の雰囲気や気分によってその場で感覚的に変えることもあります。
── 音色切り替えなどのコントローラーなども、事前にガチガチに設定していますか?
丸茂: そこまでしてないです。もちろん顎スイッチとかマスターバーに、あらかじめアサインもできますけど、セットリストによって色々変わることも多いので、僕は割とその場でボタン押して変えてます。ディスプレイも見やすいですし、そこまで複雑じゃない。いい緊張感で操作してます(笑)。ソロの現場で、変更しないといけない設定が3個ぐらいあったりして心配な時は、事前にセットすることもあります。

── 現場でのメリットは?
丸茂: 圧倒的にセッティングが早いです。他のメンバーがアンプ調整やマイク位置確認で5分、10分かけている間に、僕はラインを挿して音出して、1分くらいで終わります。本当に「ジャン!」って鳴らして「はい、今日も鳴ってます!」で終わり(笑)。これがどれだけ精神的に楽か。毎回会場の条件が違う中で、安定して同じ出力で出せるのは大きいです。
── 結構タフな現場もあると思うのですが。
丸茂: はい。クルーズ船の現場だと潮風、野外フェスだと夏の日光とか。もちろん楽器なので置きっぱなしにはしないですけど、特にトラブルはないです。生のアコーディオンだと湿度や風は気になりますから。FISAはそこが強いですね。
── バッテリー持ちはいかがですか?
丸茂: 全然困らないです。リハやって本番やっても大丈夫。強いて言えば、充電がもう少し早ければ嬉しいかな、くらいですね。
── 重さはどうですか?
丸茂: 構えてみると、思ったより軽いです。FISAは10kgですよね。同じ10kgでも楽器によっては、すごく重く感じるものもあるんですけど。FISAはバランスがいいのか、そこまで重さを感じないんですよね。楽器って重心で全然違いますからね。
── チェリコ加入前は、アコースティックでサポートもされていましたよね。
丸茂: はい。右手に2本、左手に1本マイクつけて、プリアンプでまとめて。動くとケーブルが引っ張られるし、断線の不安もある。マイク位置が少しズレるだけで音が変わるので、毎回調整が必要でした。精神的にかなり神経を使ってましたね。今はライン1本。ワイヤレスも使える。本当に楽です。
── 今でも生を使う場面はありますか?
丸茂: あります。ソロでの現場が多いですね。あまり音響の設備が整っていない現場に行くことも多くて、結構ガヤガヤしている環境だと、やっぱりアコースティックの方が純粋に音が大きいので。あとは、やっぱり勝手がわかっているのでコントロールしやすかったりするんですよね。

── 電子だからこその良さは?
丸茂: 頑丈さもやっぱり良さの一つですよね。アコーディオンってなんか強そうに見えるけど、結構繊細な楽器で。気にせずにガシガシ使えるっていうのは、個人的に大きいです。
あと、アコーディオン以外の色々な音色を使えるのも、自分の演奏や音楽の幅を広げるという意味で良いところですね。アコーディオン奏法のまま、違う楽器の世界観を持ち込める。それってかなり可能性が広がると思うんです。それでいて、このFISAは、ちゃんと楽器として反応してくれる。単なるデジタル音源じゃなくて、蛇腹で押した分だけ返ってくる。そこが一番大きいですね。
── 丸茂さん、ありがとうございました!
丸茂睦(まるも むつみ)
東京都町田市出身。12月10日生まれ。A型。 幼少の頃より祖母の影響でアコーディオンを始め、数々のコンクール等で受賞。LIVE活動、結婚式、レストラン、テーマパークでのレギュラー演奏、アーティストのサポート、舞台、CM音楽、レコーディング、映画楽曲提供など様々な分野で活動する。所属するIrish Punkバンド「THE CHERRY COKE$」で徳間ジャパンよりメジャーデビュー。マイアミ発の豪華客船にステージを特設した船上LIVEクルーズツアーにアジア人として初参加するなど国内外で活動中。2017年 朗読+生演奏のプロジェクト【TellersCaravan】を立ち上げる。作り出す楽曲は聴くものに情景を強く浮かばせる。
THE CHERRY COKE$(通称:チェリコ)
1999年、東京・大田区で結成された6人編成のフォークパンクバンド。ボーカル、ドラム、ギター、ベースに加え、アコーディオンやティンホイッスル、マンドリン、バンジョーなど多彩な楽器を取り入れ、陽気さと哀愁を併せ持つサウンドを展開している。海外アーティストの来日公演サポートを務めるほか、FUJI ROCK、COUNT DOWN JAPANなど大型フェスにも出演。2007年にはFLOGGING MOLLYに招かれアメリカ横断ツアーに参加。2010年にはNHKアニメ『ジャイアントキリング』主題歌を担当。これまでに9枚のオリジナルアルバムをリリースし、国内外で唯一無二の存在感を放ち続けている。