2025.10.20
奥野大樹「Grandstage X」インタビュー

本公演から新たにGrandstage Xを導入して頂いたとのことで、お話を伺いました。
Grandstage Xには以前から注目していた
──先日は暑い中のワンマンライブでしたがお疲れ様でした。日比谷音楽堂の徐々に夜になっていく風景と蝉の声がマッチして、最高に夏感の強いライブでした。
ところで、この度Grandstage Xを導入するに至ったキッカケはなんだったのでしょうか?
奥野: Grandstage Xには以前から注目していたのですが、実際に試奏してみて、ピアノ音色の弾き心地の良さに感動しました。繊細なタッチを音色に忠実に反映してくれるので、冗談抜きにいつまでも弾いていられそうなんです(笑)
更にエレピ、Tine系にアナログ・トーン効果を加えたサウンドは特に素晴らしく、往年のヴィンテージ機材に触れた事がある人なら必ずピンとくると思います。ポップミュージックの歴史への深いリスペクトを感じ、そういった点がBRADIOの姿勢とも重なり、導入を決める大きな決め手になりました。
また、ホワイトを基調とした本体デザインも魅力的ですよね。ヴィンテージキーボードを現代的にアレンジしたようなフォルムも新鮮で気に入っています。
Shimmerリバーブの音を聞いた時に、野音の風景が浮かんだ
──本公演では今回Grandstage Xから新たに追加されたサウンドを存分に活かして頂いている印象があって、たとえばReverb / DelayタイプにShimmerが追加されたのですが、曲間のアコピのインタールードで繊細にShimmerリバーブを使っていたのが印象的でした。
奥野: ありがとうございます。試奏させていただいた際、Shimmerリバーブの煌びやかさも非常に印象的でした。そもそも、Shimmerリバーブが搭載されているキーボード自体珍しいのではないでしょうか? 音を聴いた瞬間に「広い空の下で鳴らすイメージ」が浮かんで、これは次の野音で使うしかないと思いました(笑)。早速披露できて嬉しく思いますし、まさにGrandstage Xとの出会いが生んだ一場面でした。
Grandstage Xを導入したことで、バンドアンサンブル全体の表情が変わった
──他にも、本機から強化したFM EP系のサウンドがバンドの世界観とバッチリハマっているなぁと思いました。野外なので見ている方も当然暑いのですが、涼やかなサウンドで体感温度が3℃くらい下がりました(笑)。あれは何のサウンドを使ったのでしょうか?
奥野: FM E.Piano 1を使用しました。音色自体も素晴らしいのですが、ユニゾン機能を使う事でサウンドに一段と奥行きが増しますね。弾いていてとても気持ち良いです。
また、この曲のサビ部分ではここにM1の硬質なピアノ音色をレイヤーしています。エクスプレッション・ペダルにM1音色のみをアサインする事で、レイヤーのオンオフはもちろん、曲のダイナミクスに合わせてブレンド感を調整しています。繊細なボリュームコントロールが必要な場面において、こういった機能は本当に重宝しますね。
── BRADIOのメンバーの皆さんはGrandstage Xについてどのような印象でしたか?
奥野: リハーサルで何曲か合わせた時点で違いを実感してもらえました。特にEPやFM EPの音色がとても好評で、リハーサルを経てアンサンブル全体の表情が変わっていくのが実感できました。これからツアーでも長く使用していく予定なので、バンドにどんな変化が出てくるか楽しみです。
Grandstage Xは、小編成やボーカルとのデュエットでより良さが活きる
──奥野さんは、Grandstage Xの他にNAUTILUSもご利用頂いておりますが、サウンド感の違いや現場ごとの使い分けはどのように位置付けていらっしゃいますか?
奥野: あくまで個人的なイメージですが、ピアノ音色をローまでしっかりと聴かせられる小編成やボーカルとのデュエットなどではGrandstage Xの良さがより生きるのではないでしょうか。一方、歪んだギターが複数入るようなラウドなアンサンブルの中では、コンプやEQなどをより細かく設定できるNAUTILUSが向いているのかなぁと思いました。とはいえ、Grandstage XもOASYS Pianoを筆頭にピアノ音色の抜け感も抜群なので、ラウドなアンサンブルの中で埋もれて困るような事は全くなかったです。NAUTILUSが多彩な機能でクリエイティビティを刺激してくれるのに対し、Grandstage Xは弾き手の演奏体験によりフォーカスしている印象でしょうか。ステージで「ピアノ」を弾く喜びを再発見させてもらっています。
──今後のライブや活動予定がありましたらお知らせください。
奥野: この秋から冬にかけてBRADIOのアルバムツアーに参加しますし、12月にはTeleの幕張メッセ公演があります。また、今年から始まったWidescreen Baroqueというプロジェクトにはプレイヤー、アレンジャーとして参加しています。どの現場も毛色は違いますが、いずれもキーボードが活躍するライブになるので、ぜひ注目していただければと思います。
──ありがとうございました。

photo: Ishikawa Hayato
奥野大樹(おくのだいき)

1989年生まれ、神奈川県横浜市出身。国立音楽大学(作曲専修)を首席で卒業。学部在籍時、4年間すべての専攻試験において首位を獲得、卒業時に有馬賞受賞。学内最優秀成績者として(財)明治安田クオリティオブライフ文化財団奨学金授与。同大学院修士課程に進学後、カリフォルニア芸術大学(CalArts)へ交換留学。
在学時よりCM音楽を中心とした作編曲活動を行い、大学院卒業後はCM音楽制作会社に作家所属の後、フリーランスに転向。作編曲家としてドラマ・ゲームなどの音楽を手がける傍ら、キーボーディストとしてShiggyJr.、BRADIO、集団行動、Teleなど、様々なバンド・アーティストのサポート演奏を担当。
自身のルーツであるクラシック〜現代音楽を基盤としたプロフェッショナルな知識と技術に加え、様々なバンド・アーティストのレコーディング・ライブ現場で培ったポピュラー音楽に対する感性で、親しみやすくバランスの良い楽曲制作を持ち味としている。