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2017.06.16

D.A.N.「minilogue」インタビュー Powered by CINRA.NET

あの人の音楽が生まれる部屋 Vol.33 Powered by CINRA.NET
D.A.N.櫻木の自宅に潜入。現在に至るまでの悩みと、次の夢を訊く

インタビュー・テキスト: 黒田隆憲  撮影:豊島望 編集:矢島由佳子
 

今最も動向が注目されている若手バンドのひとつ、D.A.N.。CINRA.NETの年間ランキングでも2位を獲得した1stアルバム『D.A.N.』からおよそ1年ぶり、ミニアルバム『TEMPEST』が、4月19日にリリースされます。

櫻木大悟、市川仁也、川上輝の三人が奏でる、シンプルながら圧倒的な存在感を持つフレーズを、タペストリーのように織り込んだミニマルかつメロウなアンサンブルは健在。さらに、前作よりも官能的かつソウルフルに進化した櫻木さんのボーカルが絡み合い、唯一無二のサウンドスケープを作り出しています。

そんなD.A.N.の音楽は、一体どのように生み出されているのでしょうか。今回、都内にある櫻木さんの自宅兼プライベートスタジオに集う三人を訪ね、それぞれの音楽の原点から、就職に心が揺れた時期も経て、バンドが現在の状況に至るまでの歩みを振り返ってもらいました。

こちらの記事はCINRA.NETでもお読み頂くことができます。

D.A.N.(だん)

2014年8月に、桜木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人で活動開始。様々なアーティストの音楽に対する姿勢や洗練されたサウンドを吸収しようと邁進し、いつの時代でも聴ける、ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション。2014年9月に自主制作の音源である、CDと手製のZINEを組み合わせた『D.A.N. ZINE』を発売し100枚限定で既に完売。2015年7月にデビューe.p『EP』を7月8日にリリースし、7月にはFUJI ROCK FESTIVAL ‘15《Rookie A Go Go》に出演。 9月30日に配信限定で新曲『POOL』を発表。2016年4月20日には待望の1sアルバム『D.A.N.』をリリースし、CDショップ大賞2017ノミネート作品に選出される。7月には2年連続で『FUJI ROCK FESTIVAL’16』の出演を果たす。

三人とも、一度楽器をやめたことがある
 
1993年生まれの3人組、D.A.N.。2014年に100枚限定で出した『D.A.N. ZINE』は瞬く間に完売となり、昨年4月にリリースした1stアルバム『D.A.N.』は各メディアで高い評価を獲得。今や、その動向が日本で最も注目されているバンドへと急成長を遂げました。そんな三人は、もともとどんなきっかけで音楽に目覚めたのでしょうか。

櫻木(Gt,Vo,Syn) :中学3年生のときに、ギターを買ったのが最初の音楽体験です。確かEpiphoneのレスポールだったかな。当時、周りの友人たちが楽器を始めだした頃で、僕もそれに便乗したんですよね。でも、弾いてみたら指は痛くなるし、思うように弾けないし、「面白くないな」と思っちゃって(笑)。すぐにやめて、高校に入って本格的にバンドを組むまではずっとサッカーをやっていました。

 

左から:市川仁也、川上輝、櫻木大悟



 
川上(Dr) :僕も中学のときに友達に誘われて、空いてるパートがたまたまドラムだったので、やってみたけどボロボロで。「やりたくねえな、もう」って感じで一度挫折しました。高校で仁也(市川)と出会って、それでまたバンドを始めるんですけど、そのあいだは僕も大悟(櫻木)と一緒でサッカーをやってましたね。

市川(Ba) :僕と大悟は中学校も同じで、一緒にバンドをやっていたわけではないけど、同じ「音楽好きの仲間」としてよく遊んでたんです。その頃ベースを買ったんですけど、僕もやっぱり「指が痛い」と思ってほとんど弾いてなくて。高校に入って初めてちゃんとバンドを組みました。


 
「D.A.N.は瞬く間に売れた」という言葉を、自ら否定する
 
高校で一緒にバンドを組んだ川上さんと市川さん。そこでは、櫻木さん曰く「変態的、かつ肉体的な」グルーヴを持ったニューウェーブ的なサウンドを奏でていました。一方、NUMBER GIRLあたりに影響を受けた櫻木さんは、ラウドなロックバンドでがなり散らしていたそうです。

川上 :三人ともほとんど初期衝動でやってた感じでしたね。それでも4年ぐらい、普通にライブハウスの「チケットノルマ」などをこなしながら続けていたんですけど、段々限界を感じてきてしまって。それで一旦は音楽からは離れた生活を送っていて、「またバンドやりたいな」と再び思ったときに、大悟たちに誘われて組んだのがD.A.N.でした。

櫻木 :当初は6人編成でやっていたんです。他の三人も、中学と高校で一緒に音楽をやっていた友達。この三人になって、やっとバンドとしての音楽的な土台が固まったという感じでしたね。六人のときは、曲があまりできなくて。

 


 
川上 :六人でやってたときは、自分がこのバンドでやっている意味みたいなものが、よくわかんなくなってきちゃったんですよね。音楽は好きだけど、自分はどこに向かって音楽をやっているのかがわからなくて。

結構、僕らだけじゃなくて同世代のバンドはみんな、一度そういう経験をしてるんじゃないかなって思います。みんな、新しいバンドをやり始めて、そこから上手くいっているので。never young beachとか、高校時代からの友達なのでよく知ってるんですけど、やっぱり同じようなプロセスを辿っているんですよね。

櫻木 :よく、「デビューして瞬く間に売れたね?」みたいなことを言われるんですけど、意外と高校生の頃から地道にやってたんですよ。トータルのキャリアでいうと、5年以上はあるから。


 

2015年7月発表曲



「就職か? 音楽か?」と悩んでいた過去の自分に、今言ってやりたいこと
 
6人編成からスリーピースへ。バンドとして最小単位になったことで、それぞれのパートがお互いに補い合い、強化し合いながらアンサンブルを奏でられるようになりました。それまでなかなか作れなかったというオリジナル曲も、次々に生み出され、バンドとして大きく動きだします。しかし、まだ学生だった彼らにとって、「バンドを取るか、就職を取るか」の二者選択に迷うときもあったのだとか。

櫻木 :大学3年の半ばくらいで3人編成になって、しばらく活動したところで、「就職するかしないか」の分岐点が目の前にやってきました。僕は正直、怖くて……「就職しながら音楽をやる」っていう気持ちでいたんですけど、二人に「バンドだけでやっていこう」と強く言われ(笑)。

市川 : 一番好きなことに一番時間をかけたい。それが俺たちの性格的にもいいだろうなって。仕事もして、音楽も続けるなんて、2つのことを並行してやっていたら、今みたいには絶対にできてないと思う。

 


 
川上 :僕ら、頻繁に三人で集まって曲を作っていたし、ライブ活動も不定期だし、就職してしまうと「活動は土日のみ」っていうふうに縛られてしまうじゃないですか。「それではちょっと無理でしょ」って。音楽以外のしがらみはなしで、ちゃんと純粋に音楽を追求しようよ、と。

櫻木 :そうやって、ブレまくってた僕を、二人に説得してもらったんです。当時の自分に言ってやりたいです、「楽しいぞ」って。飛び込んでみて、今はまったく後悔はないですね。素晴らしい人たちに恵まれて、音源制作の面でも、ライブ活動の面でも、すごく満足しているので。