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2025.05.23

PANDORA - 小室哲哉 x 浅倉大介インタビュー


西川貴教、小室哲哉、浅倉大介 / 撮影:田中聖太郎

PANDORAが約7年ぶりに再始動した一夜限りのライブ『PANDORA LIVE 2025 -OPEN THE BOX-』が、2025年2月28日にZepp DiverCity(TOKYO)で開催されました。本公演では、小室哲哉と浅倉大介による圧巻のシンセサウンドに加え、世界初となるKORG PS-3300を2台同時に使用した演奏が披露され、大きな話題を呼びました。今回、ライブを終えたばかりの小室哲哉と浅倉大介に、PS-3300の使用やステージへのこだわりについて話をお聞きしました。

 


 

 

──約7年ぶりに「PANDORA」の箱が開かれるということで、今回のライブの魅力や注目ポイントを教えてください。


小室:PANDORAの本来のコンセプトは<デジタルオーケストラ>。エレクトリックでダンスライクなトラックで切れ目のない楽曲が永遠と続くような予定ではあったのは確かなのですが、今回のもういくつかのテーマとして、僕の中でも浅倉大介と西川貴教のT.M.Revolution、機動戦士ガンダム逆襲のシャア〜機動戦士ガンダムSEED FREEDOMの歴史、そして僕も含めた3人のピースを繋げたかった。

昨今、IP (知的財産) との繋がりが深いJ-POPですが、Beverlyが参加することでPANDORAとしてヒットした「Be The One」(仮面ライダービルド主題歌)もそれを象徴する楽曲になっていることもあり、仮面ライダー、ガンダムという日本が誇るIPをこのメンバーだけで表現できることは稀有ですので、本来のPANDORAの<デジタルオーケストラ>に加え、このようなコンセプトもありました。突出した2人のボーカリストを迎えられたことも大きいと思います。


ステージ上の2台のPS-3300 / 手前:浅倉大介氏使用、奥:小室哲哉氏使用

──今回のライブで、復刻版としては世界初となる2台のPS-3300を導入されると伺いました。その経緯や、ライブにおけるPS-3300の役割について教えてください。


浅倉:以前、PS-3300復刻のニュースを聞いてずっと気になっていました。今年2月の上旬にコルグ本社スタジオに試作品を見に来ませんか?とお声がけ頂きました。復刻された実機はコルグならではのとてもパワフルな音はもちろんのこと、144VCOの豊かな響きに感動しました。3週間後のPANDORAライブで演奏できたら最高ですね!と勢いで提案してみたところ、コルグスタッフのみなさまのご協力で、なんと実現できてしまいました。ありがとうございます!PS-3300に触れてまだ間もないのですが、抜けの良いVCOや稀に見るLFOスピードの幅広さを活かしたアナログサウンドでアプローチできたらPANDORAらしいかなと思います。新たに実装されたメモリー機能もライブステージでは強い味方ですね!


小室哲哉、浅倉大介 / 撮影:田中聖太郎

──小室さんはnanoPAD2を2台置いてますが、これは何に使っておられますか?


小室:鍵盤数は少ないのですが常時ソフトシンセをレイヤーにしているので、そのソフトシンセのセレクトした音色をnanoPADに30音分読み込んでおります。ソフトシンセは数種類から引っ張ってきております。


──PS-3300以外で、お気に入りのコルグの機材があれば教えてください。


小室:当時エピック・ソニーのオフィスに持ち込んだ機材で、TM NETWORKのデビューに繋がったデモテープは KORG Polysix をマスターキーボードとして使っていました。

浅倉:KingKORG はショルダーキーボードの音源にずっと使ってます。アナログモデリング音源なのですが、搭載している真空管ドライバーがワイルドなドライブ感を作り出してくれます。


小室氏使用のnanoPAD2 x 2

──ライブパフォーマンスをする際に、特に気をつけている点や、機材面で注意していることはありますか?


小室:実機、ソフトに関わらず、音の抜けというか..いくら重ねても、VCOが何層になっていても他の楽器やシステムの中に埋もれてしまう音のシンセサイザーは選ばないですね。 音源が、VCOが1つでも良いシンセは存在感がしっかりありますね。

浅倉:再現性とリアルタイム性のバランスです。どんな状態でもイメージした音を瞬時に引き出せる再現性。思い付いたアイデアから柔軟なエディット操作で音色を瞬時に変化させることができるリアルタイム性。自分のライブパフォーマンスにおいてのパートナーはこのバランスが良いマシンが多いと思います。


Beverly、小室哲哉、浅倉大介 / 撮影:田中聖太郎

──数々の名曲を手がけてこられたお二人ですが、ヒット曲を生み出す秘訣を教えてください。


小室:曲もありますが「音」だと思います。「声」や「音」が気持ちいいとか、感情を揺さぶるとか、引っかかるとか。技術的な転調などもありますが、それも含めて「音」だと思っています。

浅倉:歌声を最大限に活かすサウンドデザインですね。歌声の帯域や定位を取り囲むようにシンセサイザーで立体的な音空間を作り込むのにかなりの時間をかけています。そんなこだわりの音を感じてもらえていたらうれしいです。


──貴重なお話をありがとうございました。

撮影:田中聖太郎

小室哲哉と浅倉大介のユニットPANDORAのライブ 『PANDORA LIVE 2025 -OPEN THE BOX-』を収録したBlu-rayが5月28日に発売決定。世界初となるKORG PS-3300を2台同時に使用した貴重なライブ映像を収めた本作は、シンセサウンドの魅力を存分に体感できる必見の一枚だ。

  • 初回生産限定盤

  • 通常盤

小室哲哉(Tetsuya Komuro)

音楽プロデューサー、作曲家、キーボーディストとして日本の音楽シーンを牽引してきたレジェンド的存在。1983年にTM NETWORKのメンバーとしてデビューし、その後、安室奈美恵、globe、TRFなど数々のアーティストをプロデュースし、一世を風靡した。シンセサイザーを駆使した革新的なサウンドメイクが特徴で、日本の音楽業界に多大な影響を与え続けている。

Official Fan Club「TETSUYA KOMURO STUDIO」
Twitter @tetsuyakomurotk
Instagram @ tk19581127_official

浅倉大介(Daisuke Asakura)

作曲家、編曲家、プロデューサー、キーボーディストとして活躍し、緻密で躍動感あふれるシンセサウンドで知られる。TM NETWORKのサポートメンバーを経て、1990年代には自身のユニットaccessでの活動や、T.M.Revolutionのプロデュースで大きな成功を収めた。エレクトロニックミュージックの可能性を追求し続け、唯一無二の音楽スタイルを確立している。

ウェブサイト: http://www.danet.ne.jp
X: https://x.com/daisukeasakura

PS-3300

2025年2月28日のZepp DiverCity『PANDORA LIVE 2025 -OPEN THE BOX-』のステージ上には、小室哲哉氏、浅倉大介氏の後ろに今回復刻したPS-3300を1台ずつ設置。その巨大な壁のような操作パネルが圧倒的な存在感を放っていました。


左:小室哲哉氏セット / 右:浅倉大介氏セット
 


↑小室哲哉氏使用、PS-3300。パッチ設定は何をやっているか、あくまで目視からの推測ですが、(1)Joystick YでModule 1、2、3のピッチベンドをかけている模様。(2)SW1でDamper効果をかけっぱなしにできるようにしている。Hold効果で鍵盤を弾かずに音を出しっぱなしにしてつまみを操作したかったのかも。


↑浅倉大介氏使用、PS-3300。こちらも同じく推測で、(1)Joystcick XでModule 1、2、3のピッチベンドをかけている。(2)SW1でDamper効果をかけっぱなしにできるようにしている。Hold 効果で鍵盤を弾かずに音を出しっぱなしにしてつまみを操作したかったのかも。(3)(見えないので正確には不明ですが)ペダルが接続されているのであればエクスプレッションのための接続をしているのかもしれません。(4)あとは無効なパッチングが放置されている??