2025.06.02
川口成彦「Poetry」インタビュー

2025年大阪・関西万博のポーランドパビリオンにて行われた屋外ライブで、ピアニスト・川口成彦さんがコルグの電子ピアノ Poetry を演奏しました。フォルテピアノ奏者としても第一線で活躍されている川口さん。今回の演奏は、そんなピリオド楽器に深い理解と経験を持つ彼が、あえて電子ピアノでステージに立つという注目の機会となりました。 Poetryを選んだ理由、実際の演奏体験、そして電子ピアノに対する真摯な思い──そのすべてを川口さんへのインタビューからお届けします。
──川口さんは普段フォルテピアノを演奏されていますが、今回は本番で電子ピアノをご使用になりました。どういった経緯だったのでしょうか?
川口: 当初は自分のフォルテピアノを運んで演奏する予定だったんですけど、万博という大きなイベントで、しかも屋外のステージという環境だったので、天候のことを考えて「どうしよう…」と悩んでいました。そんな中でコルグさんにご相談させていただき、Poetryをご提供いただくことになりました。本当にありがたかったです。
実は以前、コルグの本社に伺ってPoetryを試奏させていただいたことがあり、その時からこの楽器のことは知っていたんですが、やはりお客さまの前で演奏するというのは、楽器と本気で向き合うことになります。今回、その機会をいただけて本当に良かったと思っています。
川口: 当初は自分のフォルテピアノを運んで演奏する予定だったんですけど、万博という大きなイベントで、しかも屋外のステージという環境だったので、天候のことを考えて「どうしよう…」と悩んでいました。そんな中でコルグさんにご相談させていただき、Poetryをご提供いただくことになりました。本当にありがたかったです。
実は以前、コルグの本社に伺ってPoetryを試奏させていただいたことがあり、その時からこの楽器のことは知っていたんですが、やはりお客さまの前で演奏するというのは、楽器と本気で向き合うことになります。今回、その機会をいただけて本当に良かったと思っています。
──電子ピアノで演奏することの良さ、Poetryならではの魅力はどう感じましたか?
川口:子どものころに初めて弾いたピアノは電子ピアノだったんです。バッハの曲を練習していると、自然と「チェンバロの音で弾きたいな」と思って、音色をチェンバロに変えて弾いていました。当時は無意識だったかもしれないけれど、それが自分なりの“作曲家への憧れ”の表現だったんだと思います。
6歳の子どもが「チェンバロを買ってください」なんて言えるはずもないですよね(笑)。でも、電子ピアノならボタン一つでそれが叶う。Poetryはそういう“夢を叶えるための入り口”として、本当に素晴らしい楽器だと思います。
川口:子どものころに初めて弾いたピアノは電子ピアノだったんです。バッハの曲を練習していると、自然と「チェンバロの音で弾きたいな」と思って、音色をチェンバロに変えて弾いていました。当時は無意識だったかもしれないけれど、それが自分なりの“作曲家への憧れ”の表現だったんだと思います。
6歳の子どもが「チェンバロを買ってください」なんて言えるはずもないですよね(笑)。でも、電子ピアノならボタン一つでそれが叶う。Poetryはそういう“夢を叶えるための入り口”として、本当に素晴らしい楽器だと思います。
──Poetryには“プレイエル”の音色も搭載されていますが、実際に演奏してみていかがでしたか?
川口:僕自身、ショパンの時代の本物のピアノを知っています。Poetryのプレイエル音色をステージで弾いたとき、子どものころに抱いていた「いつかショパンの時代の楽器で弾いてみたいな」という憧れの気持ちを思い出しました。
本物のプレイエルを弾くには何百万円もかけてフランスから取り寄せなければいけないかもしれないけれど(笑)、Poetryならボタン一つでその音が出せる。その体験が、ショパンを愛する多くの人たちにとって、夢の入り口になると思います。
川口:僕自身、ショパンの時代の本物のピアノを知っています。Poetryのプレイエル音色をステージで弾いたとき、子どものころに抱いていた「いつかショパンの時代の楽器で弾いてみたいな」という憧れの気持ちを思い出しました。
本物のプレイエルを弾くには何百万円もかけてフランスから取り寄せなければいけないかもしれないけれど(笑)、Poetryならボタン一つでその音が出せる。その体験が、ショパンを愛する多くの人たちにとって、夢の入り口になると思います。
──イタリアン・ピアノとプレイエルの音色を弾き比べてみて、印象の違いはありましたか?
川口:今回、1回目のステージでは偶然イタリアン・ピアノの音色で演奏して、2回目はプレイエルでした。弾いてすぐに感じたのは、音の減衰のスピードの違いです。
ショパンが生きた時代のピアノって、音が現代のピアノよりも早く消えていくんです。そこにある“儚さ”が、彼の音楽の世界観とものすごく合っているんですよね。その減衰のニュアンスが、Poetryのプレイエル音色に十分に感じることができ、その音の表情を楽しみながら弾くことができました。
川口:今回、1回目のステージでは偶然イタリアン・ピアノの音色で演奏して、2回目はプレイエルでした。弾いてすぐに感じたのは、音の減衰のスピードの違いです。
ショパンが生きた時代のピアノって、音が現代のピアノよりも早く消えていくんです。そこにある“儚さ”が、彼の音楽の世界観とものすごく合っているんですよね。その減衰のニュアンスが、Poetryのプレイエル音色に十分に感じることができ、その音の表情を楽しみながら弾くことができました。
──電子ピアノでも、ピリオド楽器のような“質感”を感じられるのでしょうか?
川口:はい。僕は昔のピアノの音を、よく“和紙”にたとえています。現代のピアノはつるつるの上質紙みたいな音がするんですが、昔のピアノは、どこかざらっとしていて、音の中に“毛羽立ち”を感じることができる。そこに情緒があるんですよ。
Poetryのプレイエル音色には、その“毛羽立ち”がある。ショパンの音楽を弾く上で、その質感ってとても大切なものです。電子ピアノという媒体でその質感ならではの表現を模索できることは、喜ばしいことでした。
川口:はい。僕は昔のピアノの音を、よく“和紙”にたとえています。現代のピアノはつるつるの上質紙みたいな音がするんですが、昔のピアノは、どこかざらっとしていて、音の中に“毛羽立ち”を感じることができる。そこに情緒があるんですよ。
Poetryのプレイエル音色には、その“毛羽立ち”がある。ショパンの音楽を弾く上で、その質感ってとても大切なものです。電子ピアノという媒体でその質感ならではの表現を模索できることは、喜ばしいことでした。
──電子ピアノで育ったというご自身の体験について教えてください。
川口:僕は子供の頃からマンション暮らしだったので、ピアノを始めた頃は電子ピアノを弾いていました。途中からアップライトを買ってもらいましたが、それもサイレント機能付きで、マンションという住宅環境ゆえに電子音で練習する時間が大半でした。
ピアノの先生によっては「生(アコースティック・ピアノ)じゃないとダメよ」とおっしゃる方もいますが、現実的にそれが難しいご家庭もあります。だから、電子ピアノを使っている子たちが「それでもピアニストになれるのかな?」と悩んでいたら、僕は「大丈夫きっとなれる!情熱さえあれば、きっと将来本物のピアノを沢山弾けるよ!」って答えています。ピアニストになれるか否かは、才能が大きく関わるものではありますが、家庭環境ゆえに夢を諦めることを僕は促す気持ちが全く湧き起こりません。音楽への情熱を持ち続けることがピアニストになるためにまず一番重要です。
川口:僕は子供の頃からマンション暮らしだったので、ピアノを始めた頃は電子ピアノを弾いていました。途中からアップライトを買ってもらいましたが、それもサイレント機能付きで、マンションという住宅環境ゆえに電子音で練習する時間が大半でした。
ピアノの先生によっては「生(アコースティック・ピアノ)じゃないとダメよ」とおっしゃる方もいますが、現実的にそれが難しいご家庭もあります。だから、電子ピアノを使っている子たちが「それでもピアニストになれるのかな?」と悩んでいたら、僕は「大丈夫きっとなれる!情熱さえあれば、きっと将来本物のピアノを沢山弾けるよ!」って答えています。ピアニストになれるか否かは、才能が大きく関わるものではありますが、家庭環境ゆえに夢を諦めることを僕は促す気持ちが全く湧き起こりません。音楽への情熱を持ち続けることがピアニストになるためにまず一番重要です。
──Poetryのような多彩な音色を持つ電子ピアノには、どんな可能性がありますか?
川口:音色が変わると、演奏のアプローチも変わります。バッハをピアノで弾くのと、チェンバロの音色で弾くのとでは、解釈も表現も変わってくる。そういう“音から受けるインスピレーション”ってすごく大事なんです。
電子ピアノを使うことで、即興的な表現や柔軟な発想が育まれる。それはピアニストにとって大切なスキルですし、Poetryのような楽器は、演奏者の創造性を豊かにしてくれる存在だと思います。
川口:音色が変わると、演奏のアプローチも変わります。バッハをピアノで弾くのと、チェンバロの音色で弾くのとでは、解釈も表現も変わってくる。そういう“音から受けるインスピレーション”ってすごく大事なんです。
電子ピアノを使うことで、即興的な表現や柔軟な発想が育まれる。それはピアニストにとって大切なスキルですし、Poetryのような楽器は、演奏者の創造性を豊かにしてくれる存在だと思います。
──最後に、Poetryがこれから果たしていく役割についてどうお考えですか?
川口:ショパンを好きな子どもたち、あるいは音楽を本気でやりたいけれど環境が整っていない人たちにとって、Poetryのような楽器は“夢の架け橋”になれると思います。
「いつか本物のプレイエルを弾きたい」という気持ちが、Poetryの音に触れることで育まれ、その思いが将来につながっていく。ショパンを愛する多くの人たちの心を耕してくれる、そんな面白くて希望のある楽器だと思っています。
──ありがとうございました。
川口:ショパンを好きな子どもたち、あるいは音楽を本気でやりたいけれど環境が整っていない人たちにとって、Poetryのような楽器は“夢の架け橋”になれると思います。
「いつか本物のプレイエルを弾きたい」という気持ちが、Poetryの音に触れることで育まれ、その思いが将来につながっていく。ショパンを愛する多くの人たちの心を耕してくれる、そんな面白くて希望のある楽器だと思っています。
──ありがとうございました。

川口成彦
1989年盛岡に生まれ、横浜で育つ。第 1 回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位、ブルージュ国際古楽コンクール最高位。フィレンツェ五月音楽祭や「ショパンと彼のヨーロッパ」(ワルシャワ)、モンテヴェルディ音楽祭(クレモナ)をはじめとした音楽祭に出演。協奏曲では18世紀オーケストラ、{oh!} オルキェストラ・ヒストリチナなどと共演。東京藝術大学楽理科卒業後、同大学およびアムステルダム音楽院の古楽科修士課程修了。フォルテピアノを小倉貴久子、リチャード・エガーの各氏に師事。第46回日本ショパン協会賞、第31回日本製鉄音楽賞 フレッシュアーティスト賞受賞。こよなく愛するスペイン音楽においては、自主レーベルMUSISによるCD『ゴヤの生きたスペインより』や自主公演「スペイン音楽の森」といったプロジェクトを展開中。
製品情報

Poetry
DIGITAL PIANO