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2015.05.20

斉藤 恒芳 (KRYZLER & KOMPANY)「KRONOS & SV-1」インタビュー

1996年の日本武道館公演をもって、惜しまれつつ解散したクライズラー&カンパニー。結成25周年の今年「奇跡の再結成」を遂げ、2月に待望の新作『NEW WORLD』をリリース、5月には全国ツアーをスタートする。ツアー直前にクライズラーのキーボード奏者、斉藤恒芳氏にお話を伺った。
──楽器を始めたきっかけ、始めた楽器は?

最初からキーボード、ピアノです。うちは楽器もなく、習わせて貰えなかったんですけど、仲の良い友だちについて音楽教室に見学に行くうちに、先生が「君も弾いてみる?」って言われて、弾いたら「筋が良い」と褒められて。母は反対したのですけど、父はどうせすぐやめるから習っていい。でもピアノもオルガンも買わないというので、自分で描いた紙の鍵盤を弾いていたんです。自分の中では音が出て、ミス・タッチするとその音もちゃんと鳴る。そのときから、絶対音感はあったと思います。

3年生の時にピアノの先生から作曲を勧められ、それで作曲の先生について勉強するようになり、それから1日1曲ずつ、毎日曲を書いていました。初めてのレッスンのときに「ハイドンの交響曲96番の(ポケット・)スコアを来週までに買って来なさい」といきなり言われて、それを全部解析することから始めました。

──子供にも容赦ないですね(笑) 趣味でバンドはやられていたんですか?

プログレのバンドをやっていました。クラシックと一番近い感覚ですかね。リック・ウェイクマンが大好きで、作曲を始めたのと同じ頃…小学3年生のときにレコード屋で「ヘンリー八世と六人の妻」(※1)を手にとってからかな。

※1:「The Six Wives of Henry VIII」リック・ウェイクマン 作・編曲・制作のソロ・アルバム1作目。6曲入りでそれぞれの曲名に6人の妻の名前が付けられている。

──大学は芸大に入られたわけですけど、プロになろうと意識してという流れからですか?

美大志望で予備校に通っていて、芸大が第一志望だったんです。でも友だちにデッサンのすごくうまい子がいて、これは無理かなと思うようになって。その頃も作曲の勉強はずっと続けていたので、そっちに行こうかなと。

──そこから音楽で芸大に入っちゃうのがすごい。大学に進まれてから、クライズラー&カンパニーに参加することになるわけですけど。

葉加瀬(太郎氏)とは同級生なんだけど、最初は口も利かない感じで。葉加瀬は学校に入った瞬間から取り巻きがバーっといてスターだった。僕は図書館で辞書とか抱えているタイプ。僕が何の音楽が好きかも知らなかったと思うんだけど、食堂でご飯食べていたら前に葉加瀬が座って「俺のこと知ってる?」「葉加瀬くん」。そしたらいきなり「何か一緒にやらない?」って。葉加瀬は芸大の寮に住んでいたので行ったら、彼が好きな古いレコードを聴かせて「こんな曲やりたいんだけど」って。その後、葉加瀬とカフェで演奏することになり、車が必要になり、車を買ったばかりの竹下(欣伸氏)を誘って「一緒に演奏しない?楽器は何?」「ベース」とか言うから「車持っているし、良いよね」と。

──ベースじゃなくて、車が先ですか(笑)

そしたらたまたまそこに、クライズラーのプロデューサーとなる人が見に来ていて、すぐスカウト。あまり下積み経験などせずに。

──クライズラーの活動休止後の斉藤さん個人の活動について、お話して頂けますか。

作曲家、ですね。オーケストラとか、舞台の音楽です。作曲家になることは最初の目標だったので、それが職業になりました。

──宝塚や劇伴(劇中音楽)を書かれていますよね。

クライズラーをやっているときに、天海祐希さんと一緒の対談番組があって、対談のあと天海さんがライブを観に来てくれて、親友の姿月あさとさんも一緒に観に来るようになって、姿月さんが作曲家として呼んでくれました。ただ制約も多くて、阪急の宝塚駅から劇場までの道が「花のみち」って言う名前なのですが、初日終わったところで「もうここには来ないな」と思いながら帰りました。色々あったのですけど、文化庁の賞(※2)を取ってからは皆が「斉藤先生」って(笑) もうやだって断っていましたが、どうしてもと言われて書いているうちに次々仕事が来て、あっという間に20〜30作。

※2:1999年、宝塚歌劇団宙組公演「激情」で文化庁芸術祭優秀賞を受賞。

──アニメの曲作りは1日何曲も作るとお聞きしましたが。

そうですよ。僕も1日7曲から8曲作ります。大きな編成(オーケストラ)が多いのですが、スコアもすごく大変なので、夏休みの時間割みたいに朝7時から9時で1曲、9時から11時で1曲、30分休憩入れてとか自分でタイムテーブルを作り、それに沿って曲を作ります。