2026.08.07
a_kira(曇ヶ原)「KRONOS」インタビュー

6月に開催されたシンセサイザーイベント『MARKS SYNTH GROOVE 2026』に出演し、プログレッシブハードフォーク「曇ヶ原」でも活躍するキーボーディストa_kira。
当イベントではKRONOS3でそのプログレッシブ・ロック魂を遺憾無く発揮し、圧巻の早弾きと怒涛のサウンドで聴衆の度肝を抜きました。
プリセットではなかなか表現できないそのサウンドメイク術をご本人に聞いてみました。

── 今回のイベントでは主にどのようなプログラムを使用されたのでしょうか?
a_kira:今回は普段自分が使っている歪んだオルガンサウンドを再現してみたもの、ソロ用にAL-1から作った金属的なフィードバック音のあるシンセリード、普段自分が愛用しているMS-20のノコギリ波を使ったリードサウンドを再現したもの、それにKRONOS3で新たに搭載されたItalian F Pianoやエレピ音色などを使用しました。Italian F Grandやエレピ音色は曇ヶ原の最新作「幻日夢」でも使ったのですが、非常に素晴らしい質感で感動しました。これ1台あれば、キーボーディストが出したい音色のほとんどを非常に高いレベルでカバーできると思います。
── オルガンの方から見ていきたいのですが、いわゆるベーシックな下3本のプリセットと比較した時にAmpをプリアンプにしてインサート・エフェクトの方で歪みやロータリースピーカーのパラメーターを作り込んでいるのが印象的でした。この辺りのこだわりポイントはありますか?
a_kira:通常のRotary Speakerのエフェクトでも歪み成分は調整できるんですが、普段の自分のサウンドとしてはもう少し歪みが多いので、ルーティングを少し工夫してみました。
CX-3側でのRotary Speakerは使わず、[①CX-3のAmpはPre Ampに→②IFX1:TUBE PREAMP→③IFX2:OD/High-Gain Wah→④IFX3:Rotary Speaker Pro CX Custom]という接続になっていたかと思います。基本的な歪みは②の方で作った上で、ソロを取る際に③をONにするようにしました。こうすることで、和音でリフを弾く時の音圧と分離感を保ちつつ、ソロの際にギターに負けない迫力と抜け感のあるサウンドを作れるので、普段実機を使うときもこのようなセッティングにすることが多いです。
── ブレイクでオルガンが残るところでキース・エマーソンを感じました…ドローバーのセッティングは下4本に2 ⅔を足したセッティングなんですね。
a_kira:これは僕の大好きなジョン・ロードの基本セッティングですね。ドローバーのセッティングは若い頃から色々試行錯誤したのですが、歪みエフェクトを使う場合はフルドローバーにするよりもこちらの方がマッチングが良いなと感じています。
勿論キース・エマ―ソンも大好きですし、今回のイベントで演奏した曲は完全にEL&Pオマージュです(笑)。パーカッシヴなオルガンサウンドにする時は、パーカッションをより際立たせるために下4本だけにすることが多いですね。
── PercussionのLevelが最大になっているのは気合いを感じますね(笑)
a_kira:好みの音量を探っていったら最大になってしまったという(笑)。オルガンは持続音の楽器なので、そのまま弾くとのっぺりとした質感になってしまうという弱点があります。
パーカッションやレガート奏法、それにエクスプレッションペダルで抑揚を付けてあげることで、立体感のある音にしたいという意識があります。
CX-3はオルガン専用機と同じくらい調整できるパラメータが多いので、とても嬉しいですね。「Rotary Speakerの回転を止めた時のホーンの角度」まで調整できるのは狂ってて最高だと思いました(笑)。
── 確かに(笑)この他、リーケージノイズやキーオンクリックのパラメーターを上げていて、この辺りはやはりa_kiraさんはエレキギターも演奏されるということで、やはりノイズの部分に音楽的なものを感じていらっしゃるのでしょうか?
a_kira:このあたりのパラメータは実際に自分が所有するヴィンテージの実機も参考にしながら調整していきました。オルガンにはあのリーケージノイズが不可欠だと思いますね。あのノイズによって、単なる正弦波ではないオルガン独自の「揺らぎ」を感じられるのかなと。
また僕は普段ロックバンドでエレキギターと一緒に演奏しているので、「どうやってギターに負けない存在感をオルガンで出すか」ということは常に考えています。シンセリードを弾く場合でも、ピッチベンドやビブラードなど、キーボーディストがギターから学ぶべきテクニックは非常に多いと思います。
キークリックノイズはギターのピッキングやフルートのタンギングに近しい表現方法だと捉えていますし、特に歪ませた時にとても印象的なサウンドになるので、基本的には強調することが多いです。

── 次にシンセリードですが、音源はAL-1のアナログモデリング音源で、一番印象的だったのはジョイスティックを下に倒すとリングモジュレーターがかかるセッティングになっていたことでした。この辺りの狙いは何でしょうか?
a_kira:リングモジュレータは普段オルガンによく使っていまして、どちらかというと飛び道具的に使うサウンドになります。KRONOSだとエフェクトのDRY/WETをジョイスティックでコントロールできるので、これを利用してギターのフィードバックのようなサウンドを狙いました。
今回イベントで演奏したのは「夢幻泡影」という曲の一部なのですが、元の音源ではギターソロになっているパートをKRONOSで弾いたため、エレキギター的な質感のあるリードサウンドを意識しました。
AL-1はモデリングとは思えない音の強さを感じる、非常に優れた音源だと思います。KRONOSでリード音色を作る時の第一選択かなと。
── ポイントなのがインサート・エフェクトにGuitar amp modelのUK modernが挿さっていて、これがあることによってリングモジュレーターがギターのフィードバックのように聞こえるのだと思いました。この辺りは意識されたのでしょうか?
a_kira:上記の通り、エレキギターのソロを意識した音色だったのでギターアンプのモデリングエフェクトを使いました。確か元になったパッチは「Pure Square Lead」だったと思うんですが、OSC1をノコギリ波、OSC2をパルス波に変更してdetuneをちょっと調整した覚えがあります。
素で聴くと素朴な音なんですが、これをアンプのシミュレータを通すことで、強烈な倍音を持ち、かつ音圧のあるサウンドにすることが出来たかなと思います。ギターのPUセレクターをフロントにしたサウンドのイメージですね。
またリングモジュレータは後ろに歪みを通すことで更に過激な音色になるのですが、これはジョン・ロードのサウンドメイクから学びました。また敬愛するギタリストのSUGIZOさんもリングモジュレータを使った非常に強烈なサウンドを作られていて、その影響も非常に大きいです。
シンセに載っているリングモジュレータはあまり過激な変化をせずに落胆することが多いんですが、KRONOSのリングモジュレータは実機と遜色ない非常に強烈で金属的な変調が掛かるのでとても素晴らしいなと思いました。
── プリセットのシンセリードだとジョイスティックを手前に倒すとCUTOFFが変わることが多く、あまり経験しない音の変化なので余計にインパクトがありました。あとはピッチベンドレンジが±2からオクターブに変わっていたのはこれは基本ですね(笑)
a_kira:普段シンセリードでは可変幅を±2オクターブにすることが多いので、実は控えめだったりします(笑)。あとCUTOFFはやはりツマミで弄りたいなあと。
ジョイスティックのピッチベンド幅を±1オクターブに設定することで、リングモジュレータにより過激な変化を与えることができたかなと思います。これはXY方向にコントロールできるジョイスティックを持つ、KRONOSならではのセッティングですね。
シームレスに音を変化させることができるので直感的なコントロールができますし、KRONOSの持つ非常に高いポテンシャルと合わせて無限の可能性を持った機構だなと改めて感じました。
── ありがとうございました!
FUJIROCK FESTIVAL'24でのステージ
MARKS SYNTH GROOVE 2026の映像は、配信特設ページにて8月30日(日)までの期間限定でお楽しみ頂けます。
インタビューで触れたKRONOSのサウンドを、 コルグの高音質配信サービス「LIVE EXTREME」にて ぜひご体感ください。
配信特設ページは こちら
a_kira
キーボーディスト・ギタリスト。プログレッシヴ・ロックバンド「曇ヶ原」を中心に活動。
演出家/音楽家のJ・A・シーザーに師事し、その舞台音楽やコンサート活動を2018年まで支える。
その後は木幡東介率いる「マリア観音」での活動を経て、現在は一噌幸弘率いる「返シドメ」や、鬼怒無月・佐藤研二・吉田達也との「ハードメタリックプログレの夜」、自身の主宰プロジェクトである「百鬼夜行」「天使乃聲」、他アーティストや舞台音楽のライブサポート・レコーディング・編曲・即興演奏など幅広く活動。
オルガン・アナログシンセサイザー・メロトロンを軸に、静と動を自在に行き来する演奏と、身体性を伴うライブパフォーマンスに定評がある。
曇ヶ原
2010年より石垣翔大の弾き語りプロジェクトとして始動し、2014年よりバンド形態へ移行。
「プログレッシヴ・ハードフォーク」を標榜し、絶望の淵でもがく苦しみと人間の哀しさを歌う儚いフォークパートと、変拍子を多用した激しいヘヴィパートの対比の鮮やかさに定評がある。2021年に発表した初の全国流通盤「曇ヶ原」は国内プログレシーンでは極めて異例のセールスを記録し、2024年にはFUJI ROCK FESTIVALへの初出演を果たす。
バンド創始者である石垣の脱退を経て体制を一新した今年、5年ぶりとなる待望の新作「幻日夢」をリリース。音楽評論家・伊藤政則氏に絶賛されたアルバムは前作を超える勢いで早くも追加プレスが決定するなど、その規模を拡大し続けている。