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2014.04.01

JiLL-Decoy association「MR-2000S」インタビュー

この作品の聴きどころ、ポイントを教えてください。

towada:聴きどころはやっぱりボーカルで、今までの中で一番歌詞とか歌が伝わり易いものになったんじゃないかな、と思ってるんです。今回ボーカリストにとっては、非常にチャレンジングな状況だったと思うんですけど(笑)

普通、一発録りっていうのは、特にボーカルにとってはいやですもんね…。

towada:ええ、ただ1月くらい前から今回はこういう録り方をするからって結構脅して(笑)ピッチ補正なんかもできるような時代に、敢えてそういうことができない状況に自分たちで追い込んだんです。曲の中に恋愛の話が多いですけれども、全員でその話にいろんな色を添えて行くような形で演奏できたので、そういう意味では全体的には伝わるものになったんじゃないかと思います。例えばボーカルの録り方として、カラオケみたいな感じで歌っているとちょっと伝わりにくくなることもありますが、バンドで演奏している空気自体が入っているとカラオケとは全く違う雰囲気になります。今回は歌とインストが影響し合った音が録れたので、存分にそんな歌を楽しんで欲しいとなというのが希望です。

オススメのリスニング環境とは、どんなもの(オーディオ・セットなのかヘッドホンなのか)ですか?

藤巻:実際DSDという形で配信したとして、再生に対応した機器もまだ少ないですし、それこそMR-2000Sを持っている人はもっと少ないので、満足する形で聴ける人って結構少ないとは思っています。ダウンロードする人は、高音質だから聴いてみたいのか?ジルデコのファンの人たちが音源を聴きたいと思って聴いているのか?両方の場合があると思うんですけど、音を作っている僕らからすると、ヘッドホンで聴いた方がいいとか、良いスピーカーで聴いて欲しいとかより、例えばもし高音質だってことがわからない状態で聴いたとしても、高音質であることによって、楽曲から得られる感動や演奏の空気感、僕達がスタジオで聴いていたものが削ぎ落とされることなく伝わればいいなっていう気持ちはすごくあります。

  towada:ラジカセとか、安いヘッドホンとか高いヘッドホンとか、色んなもので聴いてみました。うまく説明できないんですけれども、粗いものをなだらかにしても粗いままなんですけど、なだらかなものが粗くなっても、元のなめらかさっていうものは影響してるな、ってのはあると思うんです。 ちょっと面白いエピソードがあって、レコーディングしているときにプレイバックして聴く機会があって、そのときにDSDで録ったものをプレイバックすると「こんな感じでいいのかな?」って、みんな不安になっちゃうんですよ。PCMで聴いて「たぶんこれで行ける」って思うんですけど、それは正しい正しくないというのは別として、正解としてPCMやmp3の方に耳が慣れているというだけの話だと思うんです。だけどそれは、どっちもあって良いものだと思うんですよね。なのでこの奥行き感が出せる音源(DSD)にも慣れる機会が増えると良いと思うんです。

不安になったのは、生々しすぎたんでしょうかね?(笑)

towada:そうでしょうね、レコーディングするとこうなるものだっていう、潜在的にクセがついちゃってるんですね。今回コンプもかけてなかったし、EQも本当に必要な部分だけしか使ってないので。DATが世の中に出てきたとき、リハーサルとかライブを録ったときに、確かに音はキレイなんですけど演奏が気になったんですよね。そのときの記憶が蘇りました(笑)

この作品は、定位がすごく面白いのですが。

藤巻:DSD版は、PAのミキサーさんがその場でリアルタイムで作ったミックスが、そのまま収録されています、僕もこのあとPCM版をミックスするのはわかっていたので、パンニングについてはtowadaさんと録音前から話はしていて、長方形の部屋にセッティングを組むときに、それをそのまま再現するとしたらという並びにして、ドラムを真ん中、その横にベース、コード楽器は最終的なパンニングを意識してセッティングしていきました。ルーム、アンビエンスを拾っているマイクは感覚で使っていますが、DSDのMIXでは奥行きを、CD版のMIXでは広がりを出すように使っている感じですね。

towada:最初みんなで話していたのは、モノラルで…定位じゃなくて奥行きっていう発想でやってみようかっていうことで、右にいる人、左にいる人っていうんではなくて、距離感だけなんですよね。ボーカルが前にいて、ドラムが後ろにいて、その間にアンサンブルがいてっていう。

藤巻:DSDだと奥行きのフィールドが普段よりも広く感じられるので、モノラル・ミックスするときの許容量みたいなものが普段よりもきっとある。その上でEQもせず、配置するって意味では、フォーマットとしても優れているっていうか、逆に僕がPCMでミックスしたものについては、パンニングはDSD版よりはもっと広がりのあるものにしています。まあ意図的に区別したわけではないんですけれども、あの場で感じていたものを再現しようとして、ちょっと広がりのあるミックスをしたんですけれども。

towada:DSDの場合は、例えば部屋が20mあったとしたら、20m分の距離感を作れるかもしれないですね。

選曲がスローなものになっているのも、そういったところからですか?

towada:音と音との間のスペースを一番拾ってくれる状況というときにはバラードがいいなって。