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2014.04.01

椎名純平「SV-1」インタビュー

椎名さんといえばやはりビンテージ・エレクトリック・ピアノというイメージですが、そもそもの出会いは?

そうですね…もちろん70年代や80年代のAORをリアルタイムに聴いていたというのもありますし、いちばん初めに衝撃を受けたのは10ccの「アイム・ノット・イン・ラブ(I’m Not In Love)」(*7)か、ビリー・ジョエルの「素顔のままで(Just the Way You Are)」(*8)のどちらかだったと思います。「この世界は何だ?」って思ったっていう…。で、それがようやく像を結び始めたのは、グローバー・ワシントン・ジュニアの「クリスタルの恋人たち(Just the Two of Us)」(*9)のライブ・ビデオを見て、そこで初めて「この音の楽器」がビンテージ・エレピだったと知ったんです。でも当時の僕は楽器の知識があまりなくて、それが現役で作られているのかどうかということすら知らなかったので、どうしたら入手できるのか、もっと言えばそもそも手に入るものなのか、ということも全然分かりませんでした。そうこうしているうちに大学に入り、今でも手に入るものだということが分かったんですけれど、結局手に入れたのは、デビューちょっと前だったかな…。ある楽器店ですごいボロボロのをようやく手に入れて…嬉しかったですね。

(*7)10ccの「アイム・ノット・イン・ラブ(I’m Not In Love)」: 1970年代に活躍したイギリスのバンド10ccの代表曲のひとつ。1975年発表のアルバム『オリジナル・サウンドトラック(The Original Soundtrack)』に収録。

(*8)ビリー・ジョエルの「素顔のままで(Just the Way You Are)」: アメリカのロック歌手、ピアニスト、作曲家の代表曲のひとつ。1978年グラミー賞最優秀楽曲賞を受賞。1977年のアルバム『ストレンジャー(The Stranger)』に収録。

(*9)グローバー・ワシントン・ジュニア(Grover Washington Jr.)の「Just the Two of Us」: アメリカのジャズ・フュージョン界の代表的サックス・プレイヤー。スムーズ・ジャズの父としても知られる。1980年発表のアルバム『Winelight』に収録の「Just the Two of Us(邦題:クリスタルの恋人たち)」で1981年グラミー賞ベストR&Bソング部門を受賞。1999年没。

「コレだぁ~!」って感じで…

そうですね。今思えば状態は酷かったんですけどね。ケースが木製なんですけど、あちこちボコボコ割れてて。でも結局それをメンテしてもらったりして、今でもライブで使ってるのはそれなんですよ。

(驚き)そうなんですか!

そうなんです。まぁ、程度の良いのを買ったほうが早かったんだと思うんですけどね、今となって思えば。 そもそもは軍用と言っては何ですけれど、要するに軍人たちを癒すために開発されたものなんですよね。だからたぶん、音質とかそういう部分ももちろん考えられてはいたんだろうけれども、どちらかというと可搬性とかそういうことのほうが大事だったわけじゃないですか。それが結果今でも鍵盤楽器界では立派に現役ですもんね。不思議な偶然なんだなぁと思いますね。

ビンテージ・エレピのココが好き!っていうポイントは?

う~ん、どこが好きなんでしょうね…。とにかく、あの音の涼しさと言うか、あの感じはもう何物にも代え難いですよね。 コードを響かすだけでも何かもう特別ですもんね。それはまぁ良い楽器って何でもそうなんだろうけれども、好きとしか言えないですね。全然飽きないし…家にも1台持っているんですけど、実は滅多に弾かないんです。

あ、そうなんですか?

ええ。よっぽど気が乗った時にだけ弾くようにしていて、普段はカバーをかけています。……つまり、大事な時に弾きますね。曲が出来てきた時とか、曲を捕まえかけている時ですね。

節目節目にご登場…

はい、節目節目で我が家のビンテージ・エレピって感じですね。別に弾こうと思えばいつでも弾けるんですけどね。

逆に、ルールと申しますか、気持ちの中で線を引かれているということでしょうか。

そうですね。ですんでカバーを外して「いまに弾くからな。待っとけよ」っていう、そういうプレイをよくしてますね(笑)。ひとつ言えるのは、結局ビンテージ・エレピって気持ちいいもんですから、それなりの曲でもそれなりに響いちゃったりするんです。だから別の音でもちゃんと響く曲をまず作ってからじゃないと、何かうまくいかないようなジンクスが自分のなかでありまして…

じゃ、事前に曲を磨き上げて、仕上げとして…

そうです。仕上げとしてビンテージ・エレピで弾いて「やったー!」っていう感じです。

「音の良すぎるスタジオ・モニター」と似ている話かもしれませんね。

あ…そうなんですか?

「定番スピーカーで聴いて…

ああ!そう!それですそれです(笑)。要するにTD(トラック・ダウン)終わりでラージで聴いて「よっしゃぁ?!」っていう達成感とまったく一緒です(笑)。

でもビンテージ・エレピの特別な感じってありますよね。

そうですね、それでないと出ない音だとかフィーリングとか、あとタッチですね。ビンテージ・エレピの鍵盤はアクションが案外ゆっくりなんですね、特にMark Iはそういう感じで。アタックとリリースがちょっとモタる感じがしますよね。それにタッチもピアノのようにどこかの段階で軽くなるような(エスケープメント)感じもないですし。

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