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2024.12.25

「音を見える化して、早く目標に近づく」鹿内芳仁「VPT-1」 インタビュー

楽器も音程を合わせるためにチューニングするのだから、それに合わせるボーカル用のチューナーがあっても良いのでは。そんな発想から「チューナーのコルグ」が初めて手がけたボーカル向けチューナー、VPT-1。

この製品への反応として「ロングトーンが安定した」「カラオケが楽しくなった」などの声を頂いていますが、専門家から見たVPT-1はどうなのか。この製品のより効果的な使用方法や、今後の課題などについて、国立音楽大学附属中学校高等学校音楽科に現在まで27年間勤務されている声楽と合唱指揮の鹿内芳仁先生を訪問し、お話を伺いました。
 

取材協力:宮地楽器国立音大店

──まずはボーカル向けチューナーというものを実際に使ってみての率直な感想をお願いできますか?

コンパクトなサイズなので持ち運びにもとても適しています。また、軽量なので譜面台の上などの狭いスペースの隙間に置いても邪魔な感じにならず、優れたサイズと重さだと思います。

私自身の声楽練習のときもこのチューナーは欠かせないほど大事な役割を果たしております。自分自身の音程感を磨くのですが、音程を通して、口の開け方、顔の表情、身体全体の使い方を訓練するのに大活躍しています。

──ボーカル向けチューナーを使う意義や、これを使うことによってどのあたりが良くなると思われますか?

声楽ソロでの使用は、音をとてもリアルに表してくれるのと、微妙な高低、また、不安定な音程を出してくれるので、教える時に説得力があります。特に(自覚症状がない)プライドを持った人には、音程が悪い指摘をストレートに見せて聴かせる事ができるので、音程感を付ける上でも強力な助け船になります。また言われた本人も納得し、耳の訓練にもなっています。

合唱団での使用は、ハーモニーは流石に拾えませんが、各声部のパートの音程がはっきり高低がわかるのでこれも練習の上でとても役に立ちます。合唱団の場合は、人数も多いこともあって指揮者が持つVPT-1一台をそれぞれの団員に見せながら歌わせるのはなかなか難しいので、一人一台を持つように推薦したいと思っています。

使用するときは、±0のブルーと、上のレッド(少し#気味に)で揺れるようにすると、声という楽器の良さが出てきやすいです。♭と#を行き来してしまうと、少し振れ幅が大きすぎるので、これくらいが良い、と指導しています。楽器だとブルー(±0)にピッタリ合わせるようにするわけですが、声では音程のふれ方が全然違うから面白い。

──このチューナーへのリクエストなどありましたらお願いします。

色は何種類かあれば良いと思います。黒系の色ももちろん良いのですが、例えばカバンの中でカラーが明るいのもあれば、見つけやすいと思います。もちろん、音程の青と赤の点灯が阻害されてはいけないので黒のベースカラーは必須かと思います。これにあった袋かカバーの専用付属品があると一層、持っていても楽しめそうです。

機能的な要望としましては、もちろん基本A=442ヘルツで良いのですが、合唱の場合もアカペラ(無伴奏)の時はより純正音を出す時などA=440ヘルツとか古典音楽は435ヘルツ、モーツァルトなどの時代には436と低い音域を使っていたので、その時代の曲を演奏する際は低い音域に合わせたいです。また上は、445ヘルツでの楽曲があるので、それに対応した基準Aが出来ると良いかと思います。

またメトロノーム機能や時間系統もあればなお便利だと感じます。メトロノームが入っていると嬉しいですが、あまり操作が複雑になり過ぎてしまって使えない人が出てきてしまうのは望ましくないですけど。説明書は私の読解力でも大丈夫な感じでしたが、読み切れてなく、まだ機能を使いこなしていないところもあるかも知れません。

いずれにしましても、とても使いやすい商品だと思います。このような素敵な声楽用チューナーは大いに広がると思います。声楽分野でも普及できると確信しておりますので、よろしくお願い申し上げます。私にこのご感想を依頼して頂いた事に心より感謝申し上げます、ありがとうございました。


──ありがとうございました。

鹿内芳仁

声楽家・合唱指揮者。1962年青森市生 国立音楽大学声楽科卒業、同大学院声楽専攻修了。日本オペラ振興会オペラ歌手育成部特待生 第13期首席修了。声楽を大谷洌子 田島好一 布施隆治 渡邊誠の各氏に師事。指揮法を高田三郎 溝上日出夫に学ぶ。在学中、高田三郎氏顧問、高田三郎混声合唱団団長・学指揮を歴任、くにたちカンマーコール国内演奏旅行で経験を積む。また、N響第九で出演した国立音楽大学混声合唱団のリーダーを歴任。以前、所属の藤原歌劇団合唱部員として、他二期会合唱団、東京合唱協会、東京カンマーコール、東京オペラシンガーズでエキストラで本公演・文化庁芸術鑑賞教室に出演。合唱指揮者として公立中学校合唱祭、コンクールの特別審査員。また、合唱団を率いて国際交流の活動をしている。国立音楽大学附属中学校合唱部指揮者を3年間歴任、在任中、東京都合唱コンクール、同春コンで金賞、Nコン東京で予選金賞、本選銅賞の成績をあげた。声楽では第1回国際音楽祭ヤングプラハ日本代表、94年イタリアコモ歌劇場でオペラ、ベルガモでオラトリオを歌う、「魔笛」他8演目、香港日本人倶楽部演奏会で9回ソリスト、99年度国際交流基金派遣事業による海外オペラ公演。2022年世界的ソプラノ歌手スミジョーと東京芸術劇場にて共演。東京国際声楽コンクール、日本クラシックコンクール声楽部門審査員他。現在、国立音楽大学附属中学高校声楽・合唱講師 日本合唱指揮者協会会員 日本演奏連盟会員 藤原歌劇団正団員 東大和市音楽連盟前会長