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2024.02.22

コルグの最新フラッグシップ・プロフェッショナル・アレンジャーPa5Xを河野啓三がチェック!「月刊エレクトーン2024年2月号より転載」

この活きた音色とリアルな表現で有機的な音楽を奏でてほしい

プロフェッショナル・アレンジャーPa5Xは、コルグ最高峰のサウンドを搭載した第五世代のエンタテインメント・キーボード。世界中のさまざまな音楽をカバーする「リズム/バッキング・パターン」(スタイル)を搭載し、コードを入力するだけで、そのコードに合わせてゴージャスなリズム/バッキング・パターンが自動で追随。一人で演奏しているにも関わらず、まるでオーケストラやバンドを従えて演奏している気分が味わえる。弾いて楽しむだけでなく、編曲や作曲にも活用できる本機の魅力について、エレクトーン経験者で現在は自身のペースで音楽活動を続ける河野啓三に語ってもらった!

Pa5X

単独のピアノやオルガンと変わらない優れた音質とシンセの実戦的ないい音が詰め込まれています

 初めてPa5Xに触れた時、まずは見た目がカッコいいと思いました。フロント・パネルなどのデザインも良くて、操作性もとても良い。そして、鍵盤の触り心地が良くて、演奏しやすいですね。それと、鍵盤楽器として一番重要なアコースティック・ピアノとエレクトリック・ピアノの音の良さが印象的でした。ピアノは、とても繊細な音。エレピは、コルグの昔からの特徴だと思いますが、アグレッシブなサウンド、アタッキーなサウンドで、実戦的なプログラムが充実しています。目を閉じて聴いたら、本物のエレピと聴き分けられないくらいリアルなサウンドにチューニングされていて、プレイヤー心をくすぐる音色になっていますね。オルガン・サウンドも得意で、スライダーでドローバー・コントロールができる点も良いです。そういったことができる機種や画面上で操作できる機種は他にもありますが、スライダーで直接コントロールできるのは、すごく便利。実際、オルガン奏者は演奏しながらドローバーを操作することが多いので、すごくライブ向きのキーボードでもあると思います。
 それぞれの楽器の音色がとても良いので、オルガンだけとかピアノだけのために使っても十二分に価値のある楽器ですね。コルグのワークステーション(Mシリーズ等)が80年代からどんどん進化してきて、その流れの中にある最高傑作のひとつ。単独のピアノやオルガンと変わらない優れた音質と、シンセサイザーも実戦的ないい音がたくさん詰め込まれているというのは、大きな特徴だと思います。

メロディーやコードを認識して自動伴奏を付けてくれる

 エレクトーンと共通する部分として、1台でワンマン・オーケストラ的なことができるんですね。一番特徴的なのが自動伴奏機能で、この中に音楽のカテゴリーとして世界中の何百(670以上)ものジャンルの演奏形態(スタイル)がプログラムされていて、それが自動的に出てくるんです。押さえたコードや演奏したメロディーを認識して、それに沿った伴奏を自動的に付けてくれる。テンションコードなどの細かいところも認識して、柔軟に反応してくれるんです。
 あと、自分が作ったハーモニーに対して、どのコードが正解なのかわからないことってあると思うんですけど、その答え合わせもできる(笑)。一瞬で解決できます。プロの方でもコードの表記の仕方って、それぞれ人によって違うんですけど、この子は常識的というか一番妥当なところを出してくるので、音楽をよく知っている子だなって(笑)。  さらに各スタイルに対して、いろいろなイントロやエンディングが用意されていて、驚くほどのクオリティになっています。誰が作ったんだろう、それぞれのジャンルの専門家が作ったのかな…っていうくらい精密で、実際にライブで使える機能になっています。音楽制作の時は、このアレンジを聴けば、とても多くのことが学べますね(笑)。それをチェックするだけでも相当な時間がかかりますけど、飽きないというか面白いと思います。16トラックのシーケンス機能とレコーディングと同じようなレベルのエフェクトとミキサー機能も内蔵されているので、その気になればすぐにオリジナル曲のデモができます。

音源制作やライブなど、使い方によって必要な機能と可能性を提示

 ギターのフレットノイズや管楽器のブレスノイズが再現されるところも、とても面白いですね。バイオリンやチェロなどの音色も、とても美しい。あまり考えずに弾いても、めちゃめちゃ綺麗な演奏をしてくれるんですよ(笑)。そういった技術は年々進化していて、細かいことの積み重ねが音質を向上させていくんだと思います。ただ、“音色がリアルだ”ということも大切ですが、プレイヤー的には“リアルな表現が可能だ”という部分が、音をリアルに聴かせるポイントだったりします。なので、音源制作の時には便利で時間の節約になってありがたいし、演奏をする時には、よりリアルな表現ができる。どんな使い方をしたいかによって、それに必要な機能と可能性を提示してくれます。
 操作性の面では、一番手前の左に並んでいる“スタイル・エレメント/マーカー”のボタン(INTRO 1~3、VAR 1~4、FILL 1~4、BREAK、END 1~3)がお気に入りです。ワンタッチで伴奏の基本となる演奏パターンを切り替えることができる。あと、左手でコードやルートを弾いたり、右手でメロディーを弾くということに対して自動伴奏が付くのは、エレクトーン・ユーザーの方にもとても馴染みやすいと思います。ディスプレイに楽譜やコード、歌詞が表示できるというのも良いですね。だから、ライブで弾き語りをする方にも便利だと思います。

Pa5X

エレクトーン・ユーザーにとってとても入りやすい楽器

 エレクトーン・ユーザーの方にとっては、とても入りやすい楽器だと思いますね。音楽制作やライブで使えるのはもちろんですが、音色の相性も良さそうなので、ライブでPa5Xとエレクトーンの2台使いとかアンサンブルもいいと思います。やはりキーボードは実際に“弾いてなんぼ”だと思いますので、この活きた音色とリアルな表現で有機的な音楽を奏でてほしいです。
 自分の場合は、音色をエディットしてプログラムしていく時に、どこまで行っても自分ができるだけ演奏しやすいチューニングに…結局そこがすべてになってくる。例えば、ソロを弾く楽器、バッキングを弾く楽器、それぞれの用途によって演奏しやすいチューニングにしていきます。で、それがもっとも演奏しやすい状態になった時に愛着を持てるし、演奏する時も当然盛り上がれる要素になって、結果、いい演奏ができる可能性が開けていく。そういった、プレイヤーにとって優しいチューニングがもともと成されている楽器というのは、やっぱり僕らにとっては本当に嬉しいですね。

  • Pa5X

    インタビューでも語っていた“スタイル・エレメント/マーカー”ボタン。曲中を素早く移動できるマーカーを搭載し、リハーサルやライブで繰り返し演奏したい箇所へ簡単にジャンプすることができる。

  • Pa5X

    8インチの大型ディスプレイは、歌詞やコード、スコア(楽譜)、マーカーなどを鮮明に表示。その手前中央には、クロスフェーダー(X-FADER)を装備。DJさながらにプレイヤー1とプレイヤー2の演奏をクロスフェードさせて曲をつないだり、サプライズ演奏を待機させたりするなど、エンタテインメントに優れた機能となっている。

取材・文/編集部 写真/溝口元海(※除く)
ELECTONE・エレクトーンはヤマハ株式会社の登録商標です。

河野啓三

1971年2月4日生まれ。東京都出身。6歳の頃からエレクトーンを始める。高校の頃からピアノやキーボードを始め、卒業後はプロとして活動。2000年、サポートメンバーとしてT-SQUAREに参加。2004年に正式加入し、“音楽総監督”的存在として活躍。2011年、1stソロアルバム『DREAMS』を発表。2020年、前年の急病による治療・療養および自身のペースで音楽活動を続けるとの理由からT-SQUAREを退団。その後もT-SQUAREのアルバムに楽曲を提供(一部演奏でも参加)。2022年には2ndソロアルバム『BEST FRIENDS』を発表。

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