0123456789
list icon
list icon

Features

Artists

2016.10.20

TOKYO HEALTH CLUB「volca kick & volca sample」〜曲作りのインスピレーション探し

TOKYO HEALTH CLUB with KORG

3MCのカラフルなラップ・スタイルと、ポップ・センスを感じる垢抜けながらもタフなトラックで人気のTHCが、KORG「volca kick」「volca sample」を体験し、音作りのヒントを探る

PHOTOGRAPHY:KUSANO YOKO/TEXT:TAKAGI‘JET’SHINICHIRO

 TOKYO HEALTH CLUB。多摩美大出身のメンバーで構成されるこの3MC&1DJグループは、フリースタイルやハードコア、US直系といった、いわゆる「ヒップホップ・シーン」と呼ばれる部分とは別の角度からシーンにエントリーしたグループである。「出自」のような部分が他のシーンより重要視されるヒップホップ・シーンにおいて、亜流から登場したTHCは、そのスタイルやスタンスも含めて何故か「ユルい」という評価を受けてきた。
 しかし今年7月にリリースされた『VIBRATION』は、その3MCのカラフルなラップ・スタイルと、ポップ・センスを感じる垢抜けながらもタフなトラックで、決して「ユルい」という惹句では評価しきれない、「ヒップホップ・グループとしてのTHC」を提示した好作となった。
 本稿では、そんな彼らにKORG社から十月にリリースされる機材「volca kick」、そして二〇一四年にリリースされた「volca sample」を試してもらった。

音を「フィジカル」に作りやすい。即興で作れる

volca kick

「volca kick」は「beats」「bass」「keys」とリリースされてきた「volca」シリーズの最新作。その名前の通り「キック」、いわゆるバスドラムやキックベースなど、ビートの肝となる部分を鳴らすアナログ・ジェネレーターである。KORGの銘機・MS-20譲りのアナログ・フィルターを搭載し、プレーンなキックからアシッドなベースまでを、ツマミを調整することでリアルタイムに変化させることの出来る、感覚的な操作性も大きな魅力だろう。
「低音をすごくフィジカルに作りやすいですね。ここで音を作って、それをDAWに流し込んで使うって使い方がメインになると思いますね。キックだけでいろんな音が作れるんで、テクノの人も需要があると思いますね」(TSUBAME)
「DAWで曲を作ると頭で考えながら、モニターを見ながら視覚的に作る部分もあるけど、この機材だとその場の即興で作れますね。使いこなせるようになればライブでも使えるかも」(JYAJIE)

 一方「volca sample」は、文字通りサンプル・シーケンサーであり、サンプルした音源を鳴らし、シーケンスで走らせることができる機材だが、iPhoneと連携したサンプリングができるなど、「volca」シリーズに共通した「初心者にも分かりやすい操作性」は、この機材においても設計に込められている。トラック制作の経験のないSIKK-O、DALLBOYの二人も、「kick」「sample」をシンクロさせながら、ビートをその場で組みたてることができていた。
「どういう風にすればトラックが作れるかが、なんとなく分かりました。これで僕もトラック作れるかもしれないから、次のアルバムに入れてもらおうかな(笑)。ビートだけ流して、ラップの練習したり、曲を考えたりするのにもいいかも」(SIKK-O)
「音楽の構造すらよく分かってなかったんだけど、これで『一小節』の概念がやっと分かった(笑)」(DULL BOY)
 ポータビリティにも優れた機材ではあるが、同時に機能に関してはシンプルに抑えられ、いわゆるDAWソフトウェアなど、作曲に無限に手が加えられるようになった機材に比べると、制限が多いことは否めない。
 「ただ、無限にできると情報量が多くなりすぎて、音がどんどん濁ってくる場合があるんですよ。だけど制限のある中で作ると、音の構造がシンプルに、クリアになるっていうか。その気持ち良さがありますね」(TSUBAME)

「リアルなリスナー」を楽しませたい。

volca sample

 前述の通り『VIBRATION』で更に注目度を高め、今年はワンマンやツアーなども行い、注目度に相応しい活発な動きを見せるTHC。 「ネットで『いいね』って言われても、それはやっぱりバーチャルな感じだったけど、声をかけてもらう機会も増えて『リアルなリスナー』が分かってきたし、それは『VIBRATION』を出してより深まりましたね」(JYAJIE)
「確かに今まで以上にリスナーの存在がリアルになったよね。ライヴ前に『期待してます!』とか言われると、『やべえ!今日はちゃんとしなきゃいけない日だ!』って(笑)」(DULLBOY)
  「そういう人が友達とかと来てると、『変なライブを見せたりしてこの子に恥かかせちゃいけない!』って思うし、結構プレッシャーにはなりますね。僕らはいいけど、そういう人が友達から信用をなくすことは許されない(笑)」(SIKK-O)
「リアルなお客さんが見えたんで、これからはライブのパフォーマンスや構成っていう、見せる側としての表現でもう少し遊べればって思いますね。そして、その先に次のステップは考えようと思ってます……この機材をもらえたら、ちょっとそのインスピレーションが湧くかな、って(笑)」(TSUBAME)

TOKYO HEALTH CLUB

二〇一〇年結成。MCのSIKK-O、JYAJIE、DULLBOY、ビートメイカー兼DJのTSUBAMEで構成。トラックはTSUBAMEとJYAJIEが手がけている。MACKA-CHINの新作にも参加するなど活動の幅を広げている。


tokyohealthclub.com