2016.10.20
TOKYO HEALTH CLUB「volca kick & volca sample」〜曲作りのインスピレーション探し
TOKYO HEALTH CLUB with KORG
3MCのカラフルなラップ・スタイルと、ポップ・センスを感じる垢抜けながらもタフなトラックで人気のTHCが、KORG「volca kick」「volca sample」を体験し、音作りのヒントを探る
PHOTOGRAPHY:KUSANO YOKO/TEXT:TAKAGI‘JET’SHINICHIRO
しかし今年7月にリリースされた『VIBRATION』は、その3MCのカラフルなラップ・スタイルと、ポップ・センスを感じる垢抜けながらもタフなトラックで、決して「ユルい」という惹句では評価しきれない、「ヒップホップ・グループとしてのTHC」を提示した好作となった。
本稿では、そんな彼らにKORG社から十月にリリースされる機材「volca kick」、そして二〇一四年にリリースされた「volca sample」を試してもらった。
音を「フィジカル」に作りやすい。即興で作れる
「volca kick」は「beats」「bass」「keys」とリリースされてきた「volca」シリーズの最新作。その名前の通り「キック」、いわゆるバスドラムやキックベースなど、ビートの肝となる部分を鳴らすアナログ・ジェネレーターである。KORGの銘機・MS-20譲りのアナログ・フィルターを搭載し、プレーンなキックからアシッドなベースまでを、ツマミを調整することでリアルタイムに変化させることの出来る、感覚的な操作性も大きな魅力だろう。
「低音をすごくフィジカルに作りやすいですね。ここで音を作って、それをDAWに流し込んで使うって使い方がメインになると思いますね。キックだけでいろんな音が作れるんで、テクノの人も需要があると思いますね」(TSUBAME)
「DAWで曲を作ると頭で考えながら、モニターを見ながら視覚的に作る部分もあるけど、この機材だとその場の即興で作れますね。使いこなせるようになればライブでも使えるかも」(JYAJIE)
「どういう風にすればトラックが作れるかが、なんとなく分かりました。これで僕もトラック作れるかもしれないから、次のアルバムに入れてもらおうかな(笑)。ビートだけ流して、ラップの練習したり、曲を考えたりするのにもいいかも」(SIKK-O)
「音楽の構造すらよく分かってなかったんだけど、これで『一小節』の概念がやっと分かった(笑)」(DULL BOY)
ポータビリティにも優れた機材ではあるが、同時に機能に関してはシンプルに抑えられ、いわゆるDAWソフトウェアなど、作曲に無限に手が加えられるようになった機材に比べると、制限が多いことは否めない。
「ただ、無限にできると情報量が多くなりすぎて、音がどんどん濁ってくる場合があるんですよ。だけど制限のある中で作ると、音の構造がシンプルに、クリアになるっていうか。その気持ち良さがありますね」(TSUBAME)
「リアルなリスナー」を楽しませたい。
前述の通り『VIBRATION』で更に注目度を高め、今年はワンマンやツアーなども行い、注目度に相応しい活発な動きを見せるTHC。 「ネットで『いいね』って言われても、それはやっぱりバーチャルな感じだったけど、声をかけてもらう機会も増えて『リアルなリスナー』が分かってきたし、それは『VIBRATION』を出してより深まりましたね」(JYAJIE)
「確かに今まで以上にリスナーの存在がリアルになったよね。ライヴ前に『期待してます!』とか言われると、『やべえ!今日はちゃんとしなきゃいけない日だ!』って(笑)」(DULLBOY)
「そういう人が友達とかと来てると、『変なライブを見せたりしてこの子に恥かかせちゃいけない!』って思うし、結構プレッシャーにはなりますね。僕らはいいけど、そういう人が友達から信用をなくすことは許されない(笑)」(SIKK-O)
「リアルなお客さんが見えたんで、これからはライブのパフォーマンスや構成っていう、見せる側としての表現でもう少し遊べればって思いますね。そして、その先に次のステップは考えようと思ってます……この機材をもらえたら、ちょっとそのインスピレーションが湧くかな、って(笑)」(TSUBAME)
二〇一〇年結成。MCのSIKK-O、JYAJIE、DULLBOY、ビートメイカー兼DJのTSUBAMEで構成。トラックはTSUBAMEとJYAJIEが手がけている。MACKA-CHINの新作にも参加するなど活動の幅を広げている。
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