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2016.05.18

ever-glee 「KROSS & KRONOS etc.」インタビュー

 

SUNAO(Guitar)、Aya(Piano、Keyboard)、岸利至(Programming、Synthesizer)によるユニット「ever-glee」のファーストアルバムがついに完成した、ということで、アルバムの制作や楽器のことなどについてお話を聞かせていただきました。
 
photo by maru

コンセプトを決めなくても自然と良いバランスになった

──ユニット名を以前の「PGP」から「ever-glee」に改名して、初めてのアルバムということになりますね。

: 以前のバンド名 「PGP」 は、僕の中で、活動前にPGPの存在、サウンドの匿名性の意味を込めたんですが、いざ活動を始めて形態が変わっていく中で、匿名性がなくなっていったことと、また何より、作曲においてもレコーディングにおいてもステージにおいても、音を作り出す喜びをいつまでも感じていたい、それが音楽の本質なのではないか・・・という意味を込めて、このバンド名をメンバーに提案して決定しました。


──そして心機一転、ということで、このアルバム制作にあたって、コンセプトや方針みたいなものはあらかじめあったのですか?

:当初、僕はコンセプトを打ち立てて、アルバムを作りたかったんですが、3人でミーティングをした結果「自分たちの中から湧き出てくる自然なものを形にしていこう」ということになりまして。

SUNAO:でもそれが結果的にバラエティに富んだ内容になりましたよね。


──ボーナストラックだけが日本語で、あとは全部英語の歌詞ですが、これはやはりワールドワイドな活動を目指しているということですか?

:サウンドとしての英歌詞が僕らに必要だったので、基本英語で曲を制作しています。ただ、僕らの最初の頃にライブで歌ってくれていたemicaのトラックをアルバムに収録したくて、この「Over」の日本語化がもちあがり、実現しました。

SUNAO:結局、日本語の曲「Over」は、英語の歌詞が続く中での流れを壊したくなかったので、ボーナストラックとしてアルバム最後の曲になっています。

:ピアノ、ギター、ボーカル、バックがうまく交わってever-gleeのサウンドになるようにバランスは考えます。そして作曲、編曲するときにも、僕のバックトラックに2人がどう絡んでくるかを楽しみにしながら作ってますね。

Aya:ピアノのソロがない曲ではメロディをピアノで弾く、とかそういうアレンジになっていて、全体でメンバー全員がフィーチャーされているようになってます。

SUNAO:ボーカリストは曲ごとのイメージに合わせて4人起用したんですが、期待した以上にそれぞれの良いところが凄く出ていて、成功したなと思っています。

:詞のイメージを話したら「こういうイメージ?」と絵を送ってきてくれたり、曲作りの初期の段階から「こういうのどう?」と提案してくれたので、アルバム全体の方向や世界観が明確に出ましたよね。

Aya:ボーカルの人と合わせると、そこでまたみんなアイデアが出てくるのがおもしろい。クラシックって楽譜の通り演奏するだけなんだけど、このバンドだとその場でなんでもありだから、そういうコラボレーションがすごく新鮮なんですよね。

データを送り合って曲を仕上げていく

 

──皆さんの制作環境を教えてください。

:僕はデジパフォ(デジタルパフォーマー)をずっと昔から使っていて、それこそ目をつぶっても使えるくらいなんですけど、弾いたり打ち込んだりしたデータを2人に送って、という感じですかね。だから2人共デジパフォを使ってもらっています。

SUNAO:岸くんはギター弾けるから、ちゃんとほぼ完成したデータが来るんですよ。ギターパートも入っているし、ピアノパートも入っているし。

:僕は、中途半端なdemoでは気が済まないんですよ(笑)

SUNAO:逆にAyaの曲は、ピアノのリフだけが送られてくることが多いので、ギターのアイデアを出してトラックを作り、最終的にはアレンジの中心である岸くんに送ります。

Aya:だって私はみんなみたいにシーケンスとか組めないから(笑)

SUNAO :もちろん、このスタジオに3人で集まって、ああしようこうしよう、とミーティングを重ねて作ることもありますけどね。


──では、SUNAOさんのギターもご自宅で録ってるわけですよね、ギターは主に何を使っていますか?

SUNAO:いろいろなギターを曲やセクションに合わせてチョイスしているので、どの曲でどのギターとは細かく言えないですけど、今日持ってきたポールリードスミスはけっこう使ってますよ。ロック・サウンドでのバッキングはメインです。

:最近は、どこからが曲作りでデモでアレンジでレコーディングで、という手順の境界線がなくて。データのやりとりしているあいだに出来上がっていくという感じですよね。さすがにボーカルと生のピアノはスタジオでレコーディングしましたが、3人のデータの交換でバックトラックの完成までやっていました。

生ピアノで弾くフレーズを、「脳内変換」してKROSSでレコーディング

──Ayaさんのピアノはどのようにレコーディングしたのでしょう。

Aya:「eternity」という曲は生のピアノでスタジオでレコーディングしましたが、その他のピアノパートはKORGのKROSSの鍵盤を使って、演奏データをデジパフォに入力しています。

KROSS

──Ayaさんのようにクラシックピアノのプレイヤーでもあると、生ピアノとのとタッチとシンセサイザー系の鍵盤とのタッチの差が気になることはないのでしょうか。

Aya:同じ鍵盤で音を鳴らす楽器だけれども、生のピアノとシンセサイザーとはまったく違うものだ、と考えて演奏してますね。同じフレーズを弾くのも、シンセサイザーで弾く場合には頭の中でシンセサイザー用に変換してます。

SUNAO:クラシックと違って、我々の音楽には「一定のビート」という囲いがあるからね。

Aya:クラシックで一定のリズムで弾くと「機械的」と言われるので、あえて音楽的にずらして弾いたりしますもんね。だから最初3人で合わせたときは大変でした。

:元々、このユニットのコンセプトが、「ハウスビートに生のクラシカルなピアノを乗せたらおもしろいものができるかも」というところだったんですけど、いざやってみると、ビートは一定なのに対してピアノは揺れが持ち味、というところがある。相反するタイミングの特長をいかにまとめるか、というところで、今のところはAyaがビートに合わせている、という状態なんですね。ただ、将来的には我々ももっと研究して、ビートとピアノの良いところを融合させていきたいですね。それが結果的にever-gleeらしさになるのではないかと思っています。


──今、タイミングの話になりましたけど、生ピアノといわゆるシンセでは音を鳴らすタイミングを指先で変えているのでしょうか?

Aya : 生のピアノって、実は鍵盤を押している途中でも音が鳴るんですよ。そこに強弱やタイミングのコントロールの微妙な感じが出せるんですね。一方シンセは、鍵盤を本当の一番下まで押し切ったところで初めて音が鳴るんです。つまり、今までピアノだと途中で音が鳴っていたのに、シンセになると最後まで弾いたときにやっと音が出るんです。だから、さあみんなで音を合わせよう、シンセで鳴らそう、というときに、もう全然音が遅れてしまって・・・・


──なるほど、生ピアノとシンセの鍵盤ってそういう違いがあるんですね。

Aya:そう、ピアノの「音符的なテクニック」ってある程度みんな同じくらい習得できるんですけど、その先の「表現力」というところになると、その「途中の音」をどれだけコントロールできるかで決まっちゃうんですよね。

SUNAO:へぇ~初めて聞いた、それ(笑)。僕もこの間、Ayaがクラシックの曲を弾くコンサートを見に行ったんですけど、そういう話を聞くとよくわかるよ、生ピアノとシンセの違いって。

Aya:私も楽器フェアに出演したときに、色々なメーカーのシンセとか弾かせてもらったんですけど、やっぱり今使っているKROSSの鍵盤は、もちろん生ピアノと同じではないんですが、その差をすごくコントロールしやすいんです。もう体に馴染んでますね。

:本当は全部生ピアノでやりたいんですけど、生ピアノの音ってビート系の音に負けちゃってうまく理想とするサウンドにならないんですね。なので、AyaがKROSSで弾いたMIDIデータをもらって、ソフトシンセ「GALAXY」でうまく「立つ」音にし加工して取り込んでいるんです。

SUNAO:つまりKROSSのおかげで今回Ayaはレコーディングできた、ってことだよね。

Aya:そうそう。本当にタッチが気に入ってます!ライブでも使ってますよ!曲によっては生ピアノの音だけじゃなくてエレピをレイヤーさせたり、リバーブ足したりして。良い雰囲気になるんですよね。

:「ピアノの音」と言えば、生ピアノを使った「eternity」を作曲したときは、僕の愛用するKORGのKRONOSの電源入れたときに立ち上がるピアノの音で作りましたね。なんというか、音色に触発されて自分の中からフレーズが出てきたんです。なので「eternity」はKRONOSのおかげでてきた曲ということになりますね。

シンセのサウンドに触発されて曲が生まれる

KRONOS

TRITON

MS2000

──では、シンセサイザーの音からインスパイアを受けて曲ができるということもある?

:僕はそれすごく多いですね。ひょっとしたら作曲はいつもそうかも。一番多いのは、ピアノにちょっとパッド系の音が混ざっている音ですね。単純なピアノだけ、オルガンだけという音よりもイメージが膨らんでくるんですよね。

Aya:私は逆かなあ・・・曲ができてきて、その頭の中で鳴っている音をシンセで探す、という感じですね。リフとかフレーズからまずピアノで作って、ある程度の形になったら2人にアレンジを頼んじゃいます。あ、でもソフトシンセとかも研究中なので、できるところまでは作るようにしています。

SUNAO:僕はギタリストだからよく「ギターから作るの?」って聞かれますけど、むしろギターは一番後で、メロディとコードがいっしょに浮かんでくる感じですね。

:ビートから作った曲の場合に関しては、メロは一番最後かな。

Aya:え!そうなの? へぇ~人によって違うんだね(笑)知らなかった(笑)


──今回のレコーディングでは、ハードのシンセサイザーも使っていますか?

:僕はもう自他共に認めるKRONOSのヘビーユーザーなんでけっこう使ってますよ。「LOOP」「On The Floor」のストリングスはKRONOSですね。他にも「REASON」のSEでTRITON、MS2000使っています。あと「Night Forest」のシーケンスではハードシンセの名機をシミュレートしたソフトシンセの「Legacy Collection」シリーズも使っていますよ。 

自分にはないサウンドバランスを求めて、エンジニアにミックスを依頼

   

──マスタリングは岸さんが担当されているということですが、サウンドの傾向的にすごくヨーロッパを意識されていると思ったのですが。

:そうですかね? でも、意識というより、今回目指すサウンドの傾向がヨーロッパ方面なのかもしれません。今回、リファレンスとなるCDを聞き込んで、追いつけ追い越せで、マスタリングしました。


──逆にミックスは外部のエンジニアさんに依頼しているのですね?

:音を客観的に聞いて仕上げてほしかったんですよね。我々が作り上げたサウンドを、まったく白紙の状態からミックスしてほしい、というのがありまして。これまで長い付き合いで信頼しているエンジニアさんなんですけど、しっかりと良い音を追求して仕上げてもらいました。

SUNAO:ミックスに入る前に一度我々のライブに来ていただいて、雰囲気とかを感じ取ってから作業してもらったんです。で、ミックスが上がってきたら、期待通りのトーンになっていて、すごく良かったし、嬉しかったです。

:正直、出来上がってきた時に「そう来たか!」という曲もあったんですけど、先入観がない状態で、単純に良い方向へ持っていってくれたので、新鮮でしたね。


──今回のアルバムの聞き所を教えてください。

SUNAO:とにかく曲がバラエティに富んでいて楽しんでもらえると思います。いろいろなタイプの曲が揃っているので、僕が普段はやらない16(分音符)のカッティングとかブルージーなソロとか、曲ごとにいろいろなギターのアプローチをしてるところも是非聴いてほしいですね。

Aya:アルバム全体もすごく良い出来だと思いますが、私自身のプレイで言えば「REASON」という曲のソロで、これまでライブではそれなりにやってたんだけど、レコーディングではこれまでにないアプローチで弾いていて、これがすごくエキゾチックな感じが出て良かったと思います。そこをぜひ聞いてください!あ、あとアルバムリリースツアーもやるので、ライブも見に来てね!

:とにかくいろいろな要素が入ったアルバムに仕上がりました。クラシカルなピアノ、エモーショナルなギター、ダンサブルなビート、あとはボーカルでは英語/日本語の歌詞と日本人/外国人、という要素をうまくまとめられたと思います。どんなジャンルが好きな人でも、きっと気に入ってもらえると思いますので、ぜひ聞いてみてください!

ever-glee

ever-glee 1st Album 『ever-glee』
2016.5.6 ライブ会場にて先行発売開始 / 13 曲 2,800 円(税込み)

SUNAO (Guitar)
情熱的でマイルドなトーンと、ナイフのような鋭さを合わせもつ洗練されたハードロックなギタープレイで、様々なアーティストと共演。中でも、'98よりサポートしていた T.M.Revolution こと西川貴教をはじめ、 柴崎浩・ 岸利至と「abingdon boys school」を結成。
2007 年にリリースされた、SUNAO 作曲である 4 枚目シングル
「BLADE CHORD」ではオリコン初登場 2 位を獲得。現在は、ソロ・バンド活動の他、ライブ・セッションやギター・ワーク・ショップ (電脳音楽塾)など、ジャンルの枠を飛び越えた幅広い分野で活躍中。
https://twitter.com/sunao_g0428
http://www.pinxrecords.com (電脳音楽塾)

Aya (Piano)
桐朋学園大学音楽部演奏科、ニューヨーク・マネス音楽院大学院にて修士課程修了、同音楽院ディプロマ修了。スタインウェイ・ホール、 アリスタリーホール、ミラーシアター他でソロ、室内楽、オーケストラのコンサートに出演。 バロック・ミュージック・コンサートでの演奏が"The New York Times" 紙に 掲載される。伴奏者としても活動し、マネス音楽院の嘱託伴奏員、ボードイン・インターナショナル・サマーフェスティヴァル専属伴奏員を務める。
室内楽グループ"Delancey" を創立、ニューヨークのホール・教会・サロンでコンサートシリーズを開催。日本クラシック音楽コンクール、KOBE 国際学生音 楽コンクール優秀賞受賞。
https://twitter.com/ayaiwata


岸利至 (Programming,Synthesizer,Vocoder, Voice)
プロデューサー/アレンジャー/プログラマー。
TMR 西川貴教、exWANDS 柴崎浩、SUNAO との「abingdon boys school」、 酒井愁とのテクノとメタルの化学反応ユニット「TWO TRIBES」、 さらにソロテクノユニット「tko」や「tko stream」で活動中。またプロデューサーとしてViViDやD'espairsRay、アレンジャーとして森友嵐士、Cocco、TMR、THE ALFEE、ゴスペラーズ、プログラマーとして、布袋寅泰、坂本龍一、コブクロなどの作品に参加。また TV「ガイヤの夜明け」のテーマソングや映画音楽、ゲーム音楽の作曲も手がける。プログラミングを基調に"クールで熱い"音楽を作り続けている。
https://twitter.com/tko1017/
http://toshiyukikishi.net (オフィシャルサイト)

Live Information

 
■アルバム・リリース・ツアー 2016
東京公演
日時:2016年5月21日(土)18:30開場 19:00開演
会場:東京・吉祥寺  KICHIJOJI SHUFFLE
料金:前売 3,500円 当日 4,000円(ドリンク別)
出演:ever-glee with nana hatori
取扱: イープラス、吉祥寺 SHUFFLE
お問い合わせ:吉祥寺SHUFFLE 電話 0422-42-2223(14:00~22:00)
※ご入場はイープラス(整理番号順)、会場予約(並び順)の順となります。

ライブ出演情報
日時:2016年5月28日(土)18:00開場 18:30開演
会場:東京・町田  町田プレイハウス
「~The PlayHouse 33th anniv.~ ”Maximum Machida Magic” Acoustic」
料金:前売 3,000円 当日 3,400円(ドリンク別)
出演:ever-glee、藤井ケイタ、NAOKI SHIMADA with Jah-Rah、tezya
チケット店頭電話予約:042-851-8311 ThePlayHouse(15時〜22時 5/27〆切)
※詳細は町田プレイハウスのホームページ、 Twitterをご確認ください。