2015.09.11
JazzLife チューナー・レビュー
各楽器ごとに最適なチューニングができるコルグ・チューナーを
人気ジャズ・ミュージシャンが一斉レビュー!
ミュージシャンにとって、チューナーは、楽器と同様に重要なアイテムだ。1975年に、世界初の針式メーター・チューナーWT-10を開発して以来、“チューナーと言えばコルグ”と言われるほど高い信頼性と実績を誇る老舗ブランドから、より使いやすさを追求した最新モデルや、チューナーの概念を塗り替える新感覚のアプリが、続々とリリースされている。その中から注目モデルをピックアップし、その使い勝手を検証してみよう。
取材:布施雄一郎 撮影:桧川泰治
こちらの記事は2015年6月発売のJazzLife 2015年7月号に掲載されたものです。
Sledgehammer Pro
review by 田辺充邦 (guitar)
デザインと表示方法が画期的。
信頼性が高く、実にスムーズに操作できる
筒型のデザインとメーターの表示方法が、画期的で、青と緑のランプが見やすいですね。客席から見てもじゃまにならない色合いだと思います。レギュラー・モードで、正しいピッチが近づくとメーターの動きがスローになるので、チューニングしやすいです。ストラップに取り付けてもピッチが測れるほど感度がよく、フルアコの弦交換時に、駒の位置を調整する際にも使えるほど信頼性が高いのには、驚きました。各設定は、シャトル・スイッチを回して行ないますが、これがペグを回す動作に近いので実にスムーズに操作できます。電源も回してオンにするタイプですので、ケースの中でボタンが押され、自然と電源がオンにならない点もいいですね。クリップ部、アーム共にしっかりしていて、ディスプレイ部が正面に向いていなくても、この表示ならはっきり確認できます。ウッド・ベースの駒に取り付けても見やすいでしょう。
Sledgehammer Pro 製品情報はこちら
Dolcetto
review by 中津裕子 (bass)
反応が素早く、精度も高い。
ボタンが前面に配置され、より使いやすくなった
私は、ずっとコルグのチューナーを愛用していますが、やはり最新モデルは反応がとても素早いです。ウッド・ベースは、音が低いうえに多くの倍音を含んでいるので、精度が高くないと、音を拾ってくれないこともあるんです。その点、「Dolcetto」は精度が高いですし、表示の見やすさも素晴らしいと思いました。個人的に気に入った点は、操作ボタンがディスプレイ側に変わったこと。前モデルは裏側にボタンがあったので、操作ミスもありましたが、その点が解消され、さらに使いやすくなりました。演奏時に、本体がガタガタと動いて ノイズを出したり、表示部分の角度が変わるようなこともありません。また、メトロノームが搭載されているのも嬉しいですね。ピッチの安定感が重要で、しかもウッド・ベースは、フレットがない楽器ですから、開放弦の音合わせだけでなく、基礎練習で1音ずつ音程を確認する際にもチューナーは必須だと思います。
Dolcetto 製品情報はこちら
Dolcetto-T
review by 牧原正洋 (trumpet)
表示が滑らかでピッチが合わせやすい。
メトロノーム機能もあり基礎練習時にも便利
ディスプレイが明瞭で、メーター表示が細かくぶれず、滑らかなのでピッチが実に合わせやすかったです。何よりも、ベル部分の振動をピックアップすることで、自分の音だけを確認できるのが便利です。音色にも影響ありませんし、通常の演奏する分では、本体が動いたりすることもありませんでした。楽器の特性上、管を長くするとピッチが下がる傾向にありますが、その際にはどのくらい下がるのかを確認し、把握するためにとても役立ちます。もちろん、気温によってもピッチが変わりやすい楽器ですので、チューナーは必須です。また“替え指”を使う際も、耳だけではなく、チューナーを使って正確にピッチを確認することで、テクニックも向上できるでしょう。メトロノーム機能もありますから、基礎練習時にあると便利ですし、バラッドなどでロングトーンを吹く際には、シヴィアに音程をチェックしながら練習するといいでしょう。
Dolcetto-T 製品情報はこちら
Dolcetto-V
review by maiko (violin)
ヴァイオリン奏者にはうれしい純正律対応。
ピッチを厳密に確認でき耳の訓練にもなる
ふだんは耳で音程を合わせるので、実はチューナーを使っていないのですが、これは操作も分かりやすく、ほんとうに使いやすかったです。クリップがヴァイオリンとヴィオラ専用なので装着時の安定性もよく、付けたまま演奏しても、違和感がありませんでした。ヴァイオリンとヴィオラで専用モードを切り替えられる点もいいですね。クラシックですと、平均律でチューニングしても、合奏時に音がなじまず、アンサンブルになりませんから、チューナーはNGとされることが多いんです。その点この「Dolcetto-V」は、純正律に対応しているので問題ありません。また、初心者が耳で合わせると、ピッチが甘くなったり、自己判断で演奏して音がズレてしまうこともあるので、正しいピッチを厳密に確認できると、耳の訓練にもなると思います。私自身も、スタジオ仕事やポップスの現場ではチューナーが必要だと感じていたので、これはぜひ、使ってみたいなと思いました。
Dolcetto-V 製品情報はこちら
Rimpitch-C
review by 田辺充邦 (guitar)
楽器を傷付けずに装着可能。
クロマティック機能とキャリブレーション機能の追加でより実用的に
僕は、以前からラインナップされているもうひとつのモデル「Rimpitch」を愛用していますが、今回の新製品「Rimpitch-C」は、クロマティック機能とキャリブレーション機能が新たに搭載されました。ヴォーカルとのデュオやソロ以外の現場、たとえばピアノといっしょに演奏する際は、キャリブレーションの設定は必須ですから、より実用的になったと言えるでしょう。実際、現場のピアノは440Hz、442Hzがありますから、これは便利です。また、ソロを取る際にギターを少し目立たせたいという場合に、他の楽器は基準ピッチ440Hzでも、自分だけ441Hzで音抜けをよくさせるといった“裏技”もできます。楽器を傷付けずに、ほとんどのアコースティック・ギターに手軽に装着できて、しかも、付けたまま持ち運んでも外れたりしない安定感がありますから、現場でチューナーを忘れてしまう心配がないことも大きなメリットです。音色にも影響しないので、ヘッドには、クリップ式チューナーなど、何も取り付けたくないという方には特にお薦めです。
Rimpitch-C 製品情報はこちら
cortosia
review by 牧原正洋 (trumpet) & maiko (violin)
自分が鳴らしている音の状態が一目瞭然。
ランキングが出る機能も面白い
トランペットは、マウスピースで音色やピッチ感が変わるので、それを知る目安にいいですね。実際に会場の響きでマウスピースを使い分けますし、ウィントン・マーサリス(tp)は、直線的な音を出すために倍音を抑えた楽器も使用していましたが、そういう目的の練習にも応用できそうです。自分が鳴らしている音の状態が一目瞭然ですし、ランキングが出る機能も面白い。ひとりでもゲーム感覚で楽しめますね。<牧原>
ピッチの確認だけでなく、音の安定度や、倍音感の何が足りないのかといったことが、ひと目で分かりました。擦弦楽器の魅力のひとつであるロングトーンを目で確認しながら強化できる点がいいですね。対応している楽器は5種類ということですが、時系列グラフで、ロングトーン時の音量やピッチの安定具合を確認する練習は、他の楽器でも活用できそうです。<maiko>
cortosia 製品情報はこちら
田辺充邦 (g)
65年生まれ、東京都出身。高校時代からジャズを始め、宮之上貴昭に師事。85年からプロとしての活動を開始し、阿川泰子(vo)、八代亜紀(vo)らと共演を重ね、現在、ライヴハウスやレコーディングなどで活躍中。最新作は田辺商店の『ゲット・オン・ア・スウィング』。
牧原正洋 (tp)
1971年生まれ、岩手県宮古市出身。武蔵野音楽大学卒業。箱石啓人、福井功、佛坂幸男に師事。大学在学中よりライヴ活動を始める。卒業後、花岡詠二(cl)、酒井潮(org)、谷口英治(cl)、角田健一ビッグバンド、宮間利之&ニューハード、オルケスタデルソルに参加。スウィングからモダン・スタイルまで幅広く活躍。
maiko (vln)
神戸市出身。3歳からヴァイオリンを始める。京都市立芸術大学卒業。2001年からの8年間で2,000回を越えるライヴ・パフォーマンスを行ない、自己のスタイルを確立。高い技術と音色の美しさで聴衆を魅了する。洗足学園音楽大学ジャズコース非常勤講師。最新作は3月にリリースした『ザ・デュオ』。
中津裕子 (b)
東京理科大学モダン・ジャズ・グループにて、コントラバスを始める。コントラバスを吉田水子、エレクトリック・ベースを板谷直樹に師事。03、04年島田歌穂ブルーノート・ツアー。04年より「BIANCA」に参加。08年テイチクエンタテンメントから『BIANCA』をリリース。09年より「Love Notes」に参加。