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2014.05.01

マイカ・ルブテ「RK-100S & tinyPIANO」インタビュー Powered by CINRA.NET

近未来だけど懐かしいEAのサウンド
機械だけでは計算しきれない、人のぬくもり


そんなマイカさんは2009年、ギタリストのShinya Saitoさんと、2人組ポップ / エレクトロニカ / オルタナティブユニットEA(エア)を結成します。Shinyaさんとはバイト先で知り合い、音楽の話で意気投合。ハードオフで中古シンセを見つけたときもShinyaさんと一緒だったとか。

マイカ:「このシンセは貴重だから絶対に買っておいた方がいい!」ってそそのかされたんです(笑)。ハードオフはときどき信じられないくらい安価な値段でアナログシンセを売っているんですよ。最初、私はその価値が全然分からなかったので、機材知識の豊富なShinyaに鑑定してもらっていました。1980年代の音楽を好きになったのも、彼の影響がかなり大きいですね。

二人は2012年、セルフプロデュースによるファーストミニアルバム『METEO』をリリースしました。mi-guやTHE CORNELIUS GROUPでおなじみのドラマー、あらきゆうこさんを迎えて制作された『METEO』は、ちょうどマイカさんがテクノポップに傾倒していた時期だったということもあり、その辺りのサウンドプロダクションをかなり意識したものになりました。

マイカ:テクノポップもそうですが、「宇宙っぽいサウンド」っていうテーマが自分の中にありました。テクノポップと宇宙が合わさって、「レトロフューチャー感」が出せたんじゃないかと思っています。近未来なんだけど、どこか懐かしいというか。ただ、最初はギターやドラムなどの生楽器を入れることに抵抗がありました。それまでずっと1人で音を打ち込んで作曲してきたので、誰かとコラボすることの必然性が、今一つピンとこなかったんです。でも、実際にあらきさんやShinyaと一緒にやってみて、自分で想像していたこと以上の作品ができることが分かり、最終的には人のぬくもりが大事だし、機械では計算しきれないところに人は感動するんだっていうことにも気づきました。今思えば、それって2度と同じ音が出ないアナログシンセに惹かれたことと同じなのかも、って思います。
 

デビュー、多くのミュージシャンとの出会い
違う世代の人たちから感じたエネルギー


デビューしたことで、鈴木慶一やChocolat & Akito、Salyu×salyu、小山田圭吾など多くのミュージシャンと共演する機会を得た二人。これまでずっと好きで聴いてきた音楽を実際に作り上げた世代の人たち。その人たちからは、自分たちの世代にはないエネルギーを感じたそうです。

マイカ:これがオリジナリティーということなのかな……って、とても刺激を受けました。あと、坂本龍一さんにはアドバイスをもらったんです。『METEO』の収録曲“Red Block On The Hill”をリリース前に聴いてもらったとき、「これ、フランス語で歌ってみたらどう?」っておっしゃってくれて、それがキッカケで、ボーナストラックにフレンチバージョンを収録することになりました。それまで何故かフランス語で歌ってみようと思ったことは一度もなくて。でも、日本語とは全然語感が違うし、面白かったです。フランス語は日本語ほど自由には操れませんが、「あ、こんな響きになるんだ」って、自分の中で新しい可能性が広がりました。
 

ポップミュージックを目指すのは
音楽を人と共有したい気持ちがあるから


2013年からは、EAの活動と並行してソロ活動も開始したマイカさん。自作の映像を使ったライブパフォーマンスや、モデルとして人気フォトグラファーとコラボレーションをするなど、シンガーソングライターとしての分野にとどまらない幅広い活動に取り組んでいます。

マイカ:これまでEAは、私が曲を書いてアレンジも手がけていたんですけど、最近はShinyaも曲を書くようになってきて。彼の曲は、私とまた違ってすごく実験的なんですね。それで今後EAでは実験的でアバンギャルドな曲というか、Shinyaの持ち味も活かした方向で行こうかと思っています。男女2人組ユニットというのも、得体の知れないイメージが作りやすいですし(笑)。ソロ活動のマイカ・ルブテとしては、自分がずっとやりたかったポップな側面を、もっともっと突き詰めていきたい。しばらくはソロをしっかりと軌道に乗せることに専念するつもりです。

一概に「ポップ」といっても色んな定義があり、解釈も人それぞれですが、マイカさんにとっての「ポップ」とはどういうものなのでしょうか。

マイカ:そうですね……私にとってポップとは、「人が聴くことを意識して作る音楽」なのかな、って思います。自分だけじゃなく、相手にとっても心地の良い音楽であることを意識するというか。覚えやすさとか、分かりやすさもそうですよね。高校生の頃、THE BLUE HEARTSを聴いていたんですが、やっぱりシンプルなメロディーっていいなと思うんです。今、話していて思ったんですけど、きっと私は自分で作った音楽を人と「共有」したいんだと思います。自分が「これ、いい!」って思ったものは人に知らせたくなるし、相手にも「いい!」って思ってもらいたくなる。もちろん、相手に寄せすぎても駄目だと思うからバランス感覚も大事にしたい。音楽だけじゃなく、バランスって自分にとって一生の課題なのかもしれないです。気持ちのバランスが崩れて余裕がなくなってしまうと、相手に優しく出来ないし、相手に合わせすぎてしまうと自分の軸がブレてしまいます。そうならないために、普段からヨガで気持ちと身体を整えるようにしています(笑)。姿勢が良くなると心も整いますからね、本当に。