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2014.04.01

七尾旅人×やけのはら「kaossilator 2 & mini kaoss pad 2」インタビュー

 

シンガーソングライターの七尾旅人。そしてDJ/ラッパーであるやけのはら。二人は、2009年リリースの名曲「Rollin’ Rollin’」をはじめ、作品やステージで幾度と無く共演を果たしてきた。そんな二人の新たなコラボレーションのテーマとなったのは、コルグ。遂に発売になる新製品「kaossilator 2」と「mini kaoss pad 2」を駆使した即興セッションの模様を捉えたスペシャル・ムービーを制作したのだ。当ページでは、旧来よりKAOSSILATORやKAOSS PADなどのユーザーでもあった二人に、今回の新製品の印象などを伺ったインタビューを掲載する。

掲載日:2012年3月28日

七尾旅人

ンガーソングライター。98年のデビュー以来、驚異の3枚組アルバム『911fantasia』や『Rollin' Rollin'』そして最新アルバム『billion voices』で旋風を巻き起こす。唯一無二のライブパフォーマンスは必見。自身のライフワークと位置づけ全国各地で開催してきた弾き語り独演会「歌の事故」、全共演者と立て続けに即興対決を行う「百人組手」の二つの自主企画を軸に、各地のフェス、イベント、Ustでも伝説的ステージを生み出し続けている。 開発に携わって来た自力音源配信ウェブサービスDIY STARSを使って2011年3月17日より【DIY HEARTS 東北関東大震災義援金募集プロジェクト】を開始した。 http://www.diystars.net/hearts/  情報は主にTwitterにて発信中。

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やけのはら

DJ、ラッパー、トラックメイカー。『FUJI ROCK FESTIVAL』、『METAMORPHOSE』、『KAIKOO』、『RAW LIFE』、『SENSE OF WONDER』、『ボロフェスタ』などの数々のイベントや、日本中の多数のパーティーに出演。年間100本以上の多種多様なパーティでフロアを沸かせ、多数のミックスCDを発表している。またラッパーとしては、アルファベッツのメンバーとして2003年にアルバム「なれのはてな」を発表したのをはじめ、曽我部恵一主宰レーベルROSE RECORDSのコンピレーションにも個人名義のラップ曲を提供。マンガ「ピューと吹く!ジャガー」ドラマCDの音楽制作、テレビ番組の楽曲制作、イルリメ、環ROY、Aira Mitsuki、サイプレス上野とロベルト吉野などのリミックス、多数のダンスミュージック・コンピへの曲提供など、トラックメイカーとしての活動も活発に行なっている。ハードコアパンクとディスコを合体させたバンドyounGSoundsではサンプラー&ボーカル担当。2009年に七尾旅人×やけのはら名義でリリースした「Rollin' Rollin'」が話題になり、2010年には初のラップアルバム「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」をリリース。近作はStones Throw15周年記念のオフィシャルミックス「Stones Throw 15 mixed by やけのはら」。

YAKENOHARA BLOG

GROUNDRIDDIM(グランドリディム)

HIFANA・鎮座ドープネス・DJ UPPERCUT・IZPON 等 複数のミュージシャンやエンジニア/ディレクター/プロデューサーを擁する音楽チームと、映像ディレクター/グラフィックデザイナー/イラストレーター などのヴィジュアル・チームで構成される総合クリエイティブ集団。音楽と映像がシンクロした最高のVJパフォーマンスでHIFANAのライブを支 える彼らは、音楽業界のみならずコマーシャルのフィールドにおいても高い評価を得ている。2011年には、鎮座ドープネスをフィーチャーしたモー ド学園のTVCMをはじめとするビジュアル全般や、ケンタッキーフライ ドチキンの「KRUSHERS」キャンペーンを手がけ成功を収めたほか、FUJI ROCK FETIVALにおいてはYMOのVJとして抜擢され、話題を呼んだ。広告やCDジャケット、MusicVideoのディレクションからイベントやワーク ショップの企画プロデュースまで、その活躍のフィールドは広い。

:: GROUNDRIDDIM ::

─撮影のご感想を。

七尾旅人:撮影だということはあまり意識せずに、セッション自体をすごく楽しめました。この楽器にはプリミティブとか、フィジカルな感じっていう印象を受けるんですよね。それもあって、もの凄くのめり込んで夢中で演奏できました。

やけのはら:僕も楽しかったですね。シンプルなんだけど、いじればいじるほど新しい発見がありますね。

─野外というシチュエーションの面白さもありました。

旅人:ピッタリでしたね。外で歩きながら演奏したり作曲したいっていう欲求は普段から持ってるんで、この楽器の登場は個人的にも結構収穫です。

やけのはら:小さくて軽いし、上着のポケットに入るんで、ホントに持ち歩けるっていうか。小さい割に重かったりすると、扱いに気を遣っちゃったりしますけど、この楽器は外装のプラスティックな感じも良い意味でガジェットっぽいし、カジュアルな感じがしますよね。

旅人:俺も実際に電車で使ってみたよ。凄く楽しかったですね。音楽って、音とかフレーズとか、その時の環境に意外と左右されることがありますから、今回の撮影みたいに川沿いを歩きながら演奏したりすると、小鳥が飛んでたり犬が走ってたり、そういうのに引っ張られますね(笑)。選ぶ音色も変わってきますし。エフェクトもつい空間系を選んじゃったりして楽しいですね。この小ささ自体が重要です。

─その後、スタジオでのセッションとなりました。

旅人:僕は、やけくんが即興で作るビートの上に、今回新しく付いた内蔵マイクを使ってルーパー風に声を重ねてみました。俺、KAOSSILATORシリーズ全種類持ってるんですけど、やっぱり声を入れられることで、今までのシリーズの中で個人的に一番好きなものになってます。これは凄く重要な変化ですよ。

やけのはら:マイクが付いたのは大きいよね。

旅人:うん。

やけのはら:外からもマイクを付けられるけど、ここ(内蔵マイク)でやれるのが良いよね。

旅人:手軽さが良いんだよ。一方スタジオのスピーカーに繋いてちゃんと聴いたら、音が良くてビックリするし。その辺は初代KAOSSILATORからの初心を忘れずに進化してるなって思いました。その瞬間に何ができるか、っていう初代の刹那的なところが良かったですよね。何ていうかKAOSSILATORって、音楽の“肝”になる部分だけを抽出して、ある意味、既存の音楽を破壊してる部分もあるじゃないですか。リズムとスケールとテクスチャーの快感を抜き出せば、誰でも指1本で曲が出来ちゃう。言ってしまえば、ちょっとバレちゃったわけですよ、ミュージシャンのやってることが。だから逆に、ミュージシャンにとってのハードルが上がって面白いなって思います。一体何をもってプロの表現者とするのか、ということですよね。それって凄く暴力的で面白い出来事だなって思うんですよ。コルグのそういう部分が好きですね。凄く前衛的なことをやることで、誰でも音楽に入って行けるように敷居を下げて行くっていうか。60年代のフリージャズとは真逆のベクトルで、凄く前衛的な動きじゃないかと思うんです。楽曲のエッセンスだけ抜き出して「これであなたの音楽ができますよ」って言われちゃった後…その後の音楽を一体どうするのか、ってことをミュージシャンは考えなきゃいけないし。誰でもこれで音楽ができるということは素晴らしいことだけれども、本当のミュージシャンにはさらに本質が求められると思うんですよ。そういう意味で、コルグにはもの凄く注目しています。観察してるんです、ELECTRIBEぐらいから。その頃から、「コルグはヤバいなぁ」って。

やけのはら:あぁ、ELECTRIBE好きだな。

旅人:ヤバいでしょ!あとKAOSS PADも。それに初代KAOSSILATORは、ハッキリ言って歴史に残る楽器だと思う。KAOSS PADの初代と一緒で、歴史を変えたというか、楽器史に刻まれる機材だよね。ELECTRIBEとかKAOSS PADの頃から何年か経ってKAOSSILATORが出たじゃないですか。「どんどんキテるな!」って思いました。それからDS-10が出たり、iKaossilatorが出たり、どんどんひた走ってるじゃないですか!ホント音楽解体ですよ。

やけのはら:うん、分かる。今ってiPhoneのアプリとかでもタッチパッドものが多いけど、KAOSS PADが出たときのああいう、指を動かすとエフェクトが変わるっていう感覚はビックリしたよね。フィジカルな面での発明っていうか、そういう感じがしたもん。初めて触った時。

旅人:「えっ!?」って感じだよね。KAOSSILATORが出た時も「来た来た!ついにコルグがここまでやったぞ!これで誰でも曲が作れる!」って思ったよ。だから逆に面白くなるよね、ホントに凄い奴しかミュージシャンになれなくなるっていうか。kaossilator 2、mini kaoss pad 2はバージョンアップなんだけど、ツボを押さえてて、お客さんの声を誠実に汲んでくれたんだなっていうのがよく伝わってきますね。

やけのはら:確かに、楽器としてのバランスが良いよね。ループ録音で遊べるのは面白いんだけど、オーディオ録音だからズレたりするし、これで1曲ちゃんと作れって言われたらパソコンとかも使わないと難しいかも知れないけど、これだけでかなりのところまで出来るよね。「ここまでは出来るけど、そこから先はこれだけでは諦めて下さい」っていう割り切り方がちょうど良い気がする。それに音が良いよね。kaossilator 2の、BS.036 House Bassって音色が好きだな。それにストリングスの音色も良かった。音が良いと遊んでても楽しいよね。

旅人:侮れないよね。kaossilator 2の肝は、音楽をやったことない人でも手に持った瞬間に楽しくなるってとこですよ。そういう意味で初代KAOSSILATORの楽しさをそっくり引き継ぎながら、バージョンアップしたなっていう感じで、凄く嬉しかったです。

─では最後にひと言ずつメッセージを。

旅人:kaossilator 2は、楽器を一度も触ったことがないとか、興味あるけどシンセは敷居が高いと思っていたという人こそ、試してみて欲しいですね。会社帰りとか学校帰りにイヤホン付けて遊ぶだけでも凄く楽しいし。ちょっと人生が楽しくなったりして、それでもっと音楽が好きになったら、もっと凝ったシンセにチャレンジしても良いかも知れないし。そういう意味で、音楽好きな人を増やすための素敵な入り口だと思います。それを今日、僕も童心に帰っていじり倒していく中で改めて思いましたね。「音を出す」っていう、原初的な楽しさがありますよ。

やけのはら:旅人くんが言ったように、敷居が低くなって色んな人に可能性があるものだし、シンプルだけど凄く奥が深くて、kaossilator 2とmini kaoss pad 2で色んな組み合わせを考えていくと「こんな音になるんだ」とか「こんな使い方が出来るんだ」っていう、探求すれば色んな可能性のある機材だと思うんで、僕は逆にこれで新しい使い方を編み出している人の作品を聴いてみたいですね。自分で曲を作る時とかでも、音質的に全く問題なく使えますし、ライブとかDJに取り入れたりとか、アイディア次第で色々使えますよね。例えばmini kaoss pad 2にしても、あれと同じことを他の機材でやろうとしたら、実はすごく大変なんですよ。そういうことをサラッとやれるのが良いですよね。

GROUNDRIDDIMインタビュー

今回の撮影は、「Rollin’ Rollin’」ミュージック・ビデオのディレクターも在籍するプロデュース集団GROUNDRIDDIMのディレクションの元で行われた。彼らは映像だけでなく音楽機材にも精通したプロ集団であり、kaossilator 2、mini kaoss pad 2にも興味津々の様子。撮影中の七尾旅人×やけのはらの様子をファインダー越しに見つめた、その感想などを伺った。

─今回の撮影の感想をお願いします。

撮影中も出演者のお二人が楽しそうだったから、まずは良かったなってところですね。そうじゃないと良いものは撮れませんから。すごく音楽ありきの撮影なので、まず音楽が第一にあって、音楽が良くなれば、次に映像も良くなるっていうか。お二人に何かをやってもらうというよりは、お二人の中から自然に出てきたものの方が良いんです。水物っていうか、「何が撮れるのか、撮ってみるまで分からない」方が面白いですし、結果的に良い物が出来ますから。でもこのセッション、実は長大な曲なんですよね。全部はお聞かせできないのが残念ですけど。

─kaossilator 2、mini kaoss pad 2は如何ですか?

すごく良いですよね。初代KAOSSILATORも持ってるんですけど、今回のも欲しいです(笑)。スピーカー内蔵で、電源を入れた瞬間に即遊べる。これは大きいですよね。逆にそれがなかったら今回のような撮影はできませんでした。スピーカーが付いてたから、野外のカットを入れたくて。あとデザインが、いかにも男の子が好きそうな感じじゃないですか(笑)。そういうところも魅力です。「外に持ち出そう!」って言いたくなるような形をしてますもんね。映像を作る環境も、今はノートPCを使ってどんどん外で行うようになってますし、どこかに据え置きで根を生やしちゃうのは、これからの時代に向かないのかなと。kaossilator 2とmini kaoss pad 2も、外に持ち出せる手軽さを打ち出しつつ、音は好い感じのローが良く出ていたりと非常に本格的で。本格的に使えるオモチャの究極だなと思います。