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2014.04.01

モーモールルギャパン「SV-1」インタビュー

『BeVeci Calopueno』では様々なスタイルの音楽が渾然一体となっていますが、特に「821」のコード進行などはどうやって作ったんですか?

ユコ:あれの元のコードはもう忘れてしまったんですけど、レコーディングされたものとは違う、普通のコードだったんです。

ゲイリー:「こういう曲だから」って渡したら、全然違うコード進行になって、「こうなっちゃったんだけど、どうかな?」って言われて聴いて、「わー何がどうなってるのか全然分からないけど良いと思うー」(棒読み風に)(笑)

作る時は弾きながらですか?

ユコ:(ゲイリーから渡された)元の曲がありますんで、それを自分で弾いてみて、弾きながらだんだん変わっていく感じですね。「どうやったらこの曲の魅力がいちばん出るかな?」っていうのを常に考えながらです。

やっぱりメロディと歌詞の世界観を大切に、という感じですか?

ユコ:私の場合、歌詞はあんまり気にしていないんです。歌詞が上がってくるのがギリギリっていうのもあるんですけど、歌詞よりもメロディだったり、雰囲気というかそういうところのほうが大きいですかね。

弾きながらというよりも書いた感じがするところもいくつかあるように思いましたが。

ユコ:いや、すごく感覚的に全部やってますね(笑)。理論で作るというよりは、弾いてみて響きが好きだったら「あ、いいな」と思って、そこからどんどん派生して作ったりとか、そういう感じです。

それをコード譜などに落とすんですか?

ユコ:一切書かずに、音のままです。コードを弾くのが私だけですから、伝えるのはベースのルートだけですかね。それもザックリだよね?

マルガリータ:うん。

じゃ、マルガリータさんはそこからベースラインを?

マルガリータ:何となぁく考えて…。あの曲(「821」)は、あのコード進行になって、「どうしようかなぁ」って弾いていたら、何か良い感じになって、それがそのまま、結構最初に弾いていた感じがそのままあのベースラインになった感じですね。

でもアルバム『BeVeci~』のベースラインは普通じゃないというか、よく練り込んである感じがしますが…。

マルガリータ:「こういう雰囲気」っていうのを伝えてもらって、そんな感じで弾いてみて、それでどうしても出てこなかったら、「こんな感じで弾いて」って(ユコに)弾いてもらったりとか(笑)、そんな感じですね。でもやっぱりベースとドラムで成り立っていないと分からないっていうことになるんで、ベースで気になるところを言ってくれる感じのことが多いですね。

じゃ、そういうふうに修正を加えていきつつ、ゲイリーさんとのコンビネーションということなんですね?

ゲイリー:だいたい僕は好き勝手にやってますね(笑)。

でもアルバム全体を通してテクニカルな感じもしますよね。

ユコ:自分があんまりテクニカルだとは思わないですね(笑)。たぶん譜面に起こすとそんなにテクニカルではないと思いますよ。

例えば曲中のセクションの移り変わりの感じとか、かなり凝ってますよね。

ユコ:そこは結構こだわってます。

歌詞はどのように作っているんですか?

ゲイリー:とりあえず、書きたいことが自分の中で固まって、それが形になった段階で、読ませるんですよ、ユコさんに。そうすると、「ここ嫌い」「ここ嫌い」「ここ嫌い」って言われるんですよ。それで、「よし、もうちょっと頑張ってみよう」(笑)っていう感じですね。昔は、もっと直感でぽぽぽ?んってそれこそ10分ぐらいで作詞してたんですけど、最近はちゃんと時間をかけて歌詞を書いて、客観的な意見も取り入れて…。客観的じゃないですけど(笑)、はい。

そういうふうに変わっていったいきさつは?

ゲイリー:「このことばが安い」って言われて自分では気づかなくて「…ま、言われてみればな」って納得することが多いんですよ。そういう感じで感覚を信頼しているんで、ユコさんに読ませるようになりましたね。特にユコさんが歌う曲で僕が作詞っていう曲も多いんですけど、ホントに厳しいですよ。「歌いたくない、この歌詞」そこまで言いますからね(笑)。

ユコ:だって女の子目線の歌なのに、絶対女の子こんなふうに思わないってことがいっぱい書いてあったりするんで(笑)。

ゲイリー:『BeVeci Calopueno』でユコさんがボーカルの曲が3曲あって、そのうちの「ワタシハワタシ」と「rendez-vous」は僕が作詞なんです。だから大変でしたよ。そんな大変な思いをして書いた歌詞を「こんな気持ち分かんないけど、まぁ、歌うぐらいならできる」って平気で言いますからね、この人(笑)。

とは言え、「rendez-vous」の最後の歌詞は素敵ですよね。

ユコ:あそこはみんなで考えたね、そう言えば。

ゲイリー:違うよ、最後が「ただ胸が」だったんですよ最初(笑)。「胸が」は嫌だよって言われて(笑)。

ユコ:「胸が」は嫌だよねって(笑)。そんな会話ばっかりだよね(笑)。

ゲイリー:「そこだけ変えよう」ってことでみんなで話し合ったんですよ。

原詩を集めた本を出しても良いかも知れませんね。

ユコ:なんか昔、(ゲイリーは)俺が書いたブログをエッセイにして本にするとか言ってたじゃん、あれどうなったの?(笑)

ゲイリー:マジで?僕ね2008年ぐらいからすっごい本気でブログ書いてたんですよ。ひとつひとつもう、魂と肉体を削るような勢いでブログに魂を込めていた時期があって、そう言えばそんなこと言ってたかも知れない。すっかり忘れてた。

音楽ではビートルズの話がありましたが、詞を書く部分で影響を受けた人はいるんですか?

ゲイリー:自分以外の尊敬する人の詞はみんな好きですね。「なんでこの人たちこんなに良い詞を書けるんだろう」っていつも思っていますよ。それこそミスチルからスピッツから尾崎豊、みんな良い詞書くなぁ。ブルーハーツ、良い詞書くなぁってみんな思いながら「俺もこういう詞書きたいなぁ」って思いながら(笑)。

そういう好きな詞から自分が影響を受けているなぁって感じることはありますか?

ゲイリー:そうですね、影響はされてますね、やっぱり。でも影響は受けていても、俺が言っても面白くないし、説得力ないよなぁって思って、結局自分のことばで書かないと意味がないじゃないですか。最近はボブ・ディランの自伝とか読んで「この人こんなすごいこと考えてるんだぁ、やっぱボブは違うなぁ」とか思いながら(笑)。

ユコ:ボブ呼ばわりなんだ…(笑)

例えばそういうポイントを何かに書き留めておくとかしているんですか?

ゲイリー:まぁだいたい毎日ノートを開いて何かしら書いていますね。今は、次の作品のための詞をノートに書き溜めているんですけど…。そのノートをシラフで読むのを禁止してるんですよ。夜な夜な酒を飲みながら、笑みを浮かべたり、小さく泣いてみたりして作詞してるんです。

ユコ:ノート、絵描いてあったよ(笑)。

マルガリータ:絵は見た。

ところで、歌謡曲とかもゲイリーさんはお好きなんですよね。

ゲイリー:山口百恵さんとか大好きですねぇ…。

あの時代の歌謡曲の完成度の高さはすごいですよね。

ゲイリー:そうですねぇ、当時は修正できないってのもあったのかも知れませんが…。今回の我々のCDのカップリングの「俺、風呂入るトゥナイト」って曲は、僕盛大に音程外してるんですよ。たぶんここ最近、あそこまで音程外してるもの、リリースされてませんよ(笑)。

ユコ:本人が外れてるのが分からないんですよ。みんなが「ずーっとシャープしてない?」って言ったんですけど、「そう?」って感じで(笑)。

それは以前の録音ではなくて、再録なんですよね?

ユコ:そうです。アレンジもちょっと変えてます。

ゲイリー:昔からやってる曲がなぜが歌えてないっていう(笑)

でも、それ込みでモーモールルギャバン・サウンドという言い方もできますよね?

ユコ:慣れたよ、聴いてるうちに(笑)。

ゲイリー:周りから「ズレてる」ってどんなに言われても、自分で理解できないから、「自分のペースを崩したら負けだ!」って思って、自分の音程で歌いましたから、音楽的には間違ってるけど間違ってないんですよ(笑)。ここで俺が分かってないのに変に微調整したら負けだって思って(笑)。そうそう。あれはね…。

ユコ:筋が通ってるってこと?

ゲイリー:筋は、すっごく無理矢理だけど通ってるんですよ(笑)。プロデューサーに言われましたよ。「フラットするのはしょうがない。シャープするのは訓練不足」(笑)。そのプロデューサーが最近「お前ドラム練習しろ」ばっかり言ってるんです。歌練習したいんですけどーーー!もう色んなものに板挟みされながら…はい…。

聴いた人はどう思うんでしょうねぇ?それもまた面白いですよね。

ゲイリー:ただ、モーモールルギャバンの歌の音程がちょっとズレているからってモーモールルギャバンはダメだと思う人は、最初からモーモールルギャバンを聴かないと思うんですよね(笑)。

ただ、きれいなだけが音楽じゃありませんからね。そういう意味では今はチャンスの時代かも知れませんね。

ゲイリー:そうかも知れませんね。10年前だったらモーモールルギャバンはたぶん見向きもされてなかったと思いますよ。そういう意味でモーモールルギャバンがちょっと注目してもらえる世の中って面白いですよね(笑)。

ユコ:やりがいのある時代かも知れませんね(笑)。