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2014.04.01

権藤知彦「MR-2000S」インタビュー

ミックスは権藤さんが全部を?

はい。わりと自由にやってしまいますので、それをメンバーに確認してもらってああだこうだ言いながら調整していって、っていう感じですね。
みんなで一から作っていますから「こうしたい」っていう方向性も分かりますしね。それぐらい直感的にできる時代になっているのかなぁと思いますね。ここにある機材にしても、業務用ですけれども、買おうと思って買えないものでもないんですね。ですんで、ホントに良い音を追求しようと思ったら追求できる時代ですよね、今は。
僕がカセットでやってた時代にプロのような音を作るのは、それに近いまねごとはできても基本的には無理で、そういう意味でも機材の発達によって(レコーディング現場での)役割分担も薄くなってきてひとつになってきていますよね。これからもそういうタイプの人が増えるんじゃないかなって思いますよ。

ただマスタリングはひょっとしたらアマチュアの方でもいちばん分かりにくい分野かも知れませんね。

そうですね、マスタリングまではひとりでやりたくないですね(笑)。大変と言えば大変なんですが、それもマスタリング作業をどこまでやるかですよね。単にレベルを揃えるだけのことを「マスタリング」と言っても良いわけで…。レベル以外では曲間の長さの調整ですとか、基本的にはそれだけなんですけど、でもやっぱり最終的にCDとしてみなさんが聴いて下さるものとして整える作業ですから、大切な仕事です。

恐らく、非常に細かいレベルでの調整でしょうから…。

そうですね。マスタリング・エンジニアは制作に携わらずにいきなり入って仕上げていくわけですから、誰に任せるかというのは非常に重要なことです。そういう耳を持っている人でないとできませんから…。

今回はニューヨークで作業をされましたが、そのいきさつは?

トム・コインとは幸宏さんのソロを含めて今回で4回目だったんですけど、最初に行った時に幸宏さんがその音を気に入って、それからですね。
彼が良いのは、専門的な話になりますが、マスタリングの作業はレベルをそろえるのもそのひとつで、コンプレッサーを使って音圧をグッと上げるんですね。そうすると、ダイナミクスのある音楽だとレベルの低い音も上がって、全部ギリギリのレベルまで突っ込むことになりますね。それを波形で見ると真っ黒の棒のようになっちゃって、波形のギザギザが見えなくなっちゃうんですね。

旅館の朝食に出るのりみたいな…。

(笑)そうですね。それはそれでもいいんですけど、そうすると聴いた時にうるさく感じたりすることがあるんです、曲にもよるんですが…。そこで彼の場合はコンプをあまり使わないでEQで処理をしていちばん良いレベルを出していくんですね。僕も今はパッツンパッツンに音のつまった音楽をあまり聴いてませんし、音圧感があっても心地良く響く彼の音が好きで頼んでいます。

そうしますとMRシリーズの良さがよりハッキリと出ますね。

そうですね。過去3回はマスタリングの前段階の2ミックスを作った時に結構レベルが大きかったんじゃないかなと思って…。それでも黙ってやってくれるんですけど、MR-2000Sではレベルをこれまで以上にシビアに調節できますからね。

メンバーのみなさんはマスタリング後のサウンドについて何か感想はありましたか?

制作中にスルーで確認したりしていましたから、特に驚きはありませんでしたけれども、それにプラスして磨き上げられたサウンドになりましたから好評でした。

アマチュアの方々がDSDを扱う上でのアドバイスなどがありましたらお聞かせ下さい。

MRシリーズは使い方が簡単ですからね。まずどういう音なのか触れてみることがいちばんですね。楽器を演奏する人でしたら自分の音を録ってみて聴いてみるというのは楽しいと思いますよ。

PCMですとレベルがオーバーすると歪みがひどくなったりしますが、MRシリーズでDSD録音をする場合はどうですか?

ピークを越える瞬間も結構ありますけど、そんなに気になることはないですね。よほどでない限り歪みは出ませんね。

そういう意味ではレベル合わせもしやすいという感じになりますか?

そうですね、しやすいですね。普通にレコーダーとして使えますね。ちゃんとリファレンスを取って、それに合わせてMRシリーズで録れば音はちゃんと録れますからね。

では、近況などをお聞かせ下さい。

まずpupaのアルバムが7月に出まして、夏フェスにいくつか出演します。ワールド・ハピネス2010、ライジング・サン・ロック・フェスティバルなどに出演します。曲数も多くて、どうやって演奏するか、どうやって再現するかが大変ですね。pupaはバンドのようでバンドでないところもありまして、レコーディングしたものは作品として考えていますから、ライブ前提のアレンジはしませんね。でも逆に、CDとは違う形で表現するのもアリかなとも思っています。

レコーディングのほうは?

レコーディングも結構いろいろやっています。どちらかと言うとレコーディングのほうが好きなんですけどね…、楽しいんですよ。特に新しい機材が出るとホントに楽しいですね(笑)。ライブも、やってる瞬間は「やっぱりライブがいちばん面白いな」って思うんですけど、ライブの準備をしている時は…(笑)。

ご自身の作品は?

そうですね、何かしら考えていきたいですね。

最後に、コルグ・ホームページをご覧のみなさんにメッセージをお願いします。

シンセに限らずいろんな機材で新しい音を見つけていく作業は面白いですよね、曲を作りながらでも。「こういう音は新しいな」とか。そういうことを常に考えながら曲を作っていくと、音楽の幅が広がっていくと思いますね。いろんな音を楽しんで探して下さい。

今日はお忙しい中ありがとうございました。

ありがとうございました。