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2024.03.18

本間昭光氏がプロフェッショナル・アレンジャーPa5Xに出会った

 

2024年の2月から5月まで「いきものがかり」のホールツアーが全国19都市20公演で開催されている。そのホールツアーでバンドマスター&キーボーディストとして参加されている、日本を代表する音楽プロディーサーの本間昭光氏に、Pa5Xを初めて弾いて見た時の印象と、実際にPa5Xをホールツアーのライブで演奏した感想についてお話を伺うことができた。

—— いきものがかりのライブツアーではバンドマスター兼キーボーディストとしてPa5X-76をご使用いただいていますが、Pa5Xの第一印象はいかがでしたでしょうか?

本間:まずPa5Xには使える音が多かったのが一つと、日本製にはない海外製品のような響きを持つシンセサイザーだなーという第一印象がありました。 実は、私とコルグさんのシンセサイザーとの出会いは、古くはMS-20のアナログ・シンセサイザーに始まり、80年代のデジタル・シンセサイザー全盛期には、ヤマハさんの「DX7」や、ローランドさんの「D-50」を愛用しつつ、そしてコルグは何故か「M1」には手を出さずに、重量感のある「DSS-1」や音源モジュールの「DSM-1」を気に入って使っていました。その経験から同じようなサンプリング音源方式のデジタル・シンセサイザーといえども、各社それぞれのサウンドに個性があることを体験しました。また、逆にアナログ・シンセサイザーの個性的なサウンドの素晴らしさを再認識することもできました。コルグのアナログ・シンセサイザーTRIDENTなんかは高くてなかなか手が届かなかったけど、個性的なあこがれの音でしたよね。

KORG Digital Sampling Synthesizer DSS-1

KORG Performing Keyboard Trident

それから、アナログ、デジタル問わず、全ての楽器には、人間と同じで個性があるので、その個性と楽曲の相性みたいなものを大切にするようになり、適材適所に合わせて複数の楽器を使い分けてきました。
今回、コルグさんのPa5XとNautilusを弾いた時、Nautilusは流石コルグさんのフラグシップ・シンセサイザーだけあって、完成度の高い素晴らしい楽器だと感じました。それに対して、Pa5Xは昨今の日本製ハードウェア・シンセサイザーにはなかった「個性感」が私にヒットしました。その個性ってなんだろうって考えた時に、日本製と海外製品の違いなのかなという考えに辿り着きました。後でイタリア製だと聞いて、なるほどねって妙に腑に落ちました。(笑)

KORG Music Workstation Nautilus

—— 日本製と海外製の個性の違いってどんなことでしょうか?

本間:ちょうど、自動車でいうと、国産車と外車の違いのイメージです。国産車は安全と可搬性を重視した真面目な印象があるけど、外車はどこか突き抜けているでしょ。多少の不便さを感じながらも「これが可愛いんだよね!」って思わせる個性的な魅力と、なにより乗っているだけで楽しいんですよね。 今や、ソフトウェア・シンセサイザーもハードウェア・シンセサイザーも進化しまくってて、いろんな音で溢れかえっている環境です。そんな中で、こういった個性的な楽器は貴重だと思います。 これは私の持論ですが、たとえ何百種類のサウンドを搭載しているシンセサイザーでもメーカー毎に使える、「推しの音」は2、3種類に絞られると思うんです。でもPa5Xにはごく普通の名前の音色ばかりのプリセットなんですが、厳選した推しの音というよりも、弾いていて楽しい音色がいっぱい詰まっている感じなんです。外車の乗っているだけで楽しいのと同じで、弾いているだけで楽しいからフレーズのアイデアがたくさん出てくるんですよ。

—— なるほど。外車に例えていただくと非常に分かり易いですね。確かにイタリアの風格がありますね。 では、Pa5X-76の個性的に感じたサウンドとは何でしょうか?

本間:私の場合はストリングスでした。Pa5Xのストリングスは、バンドの中で演奏してもしっかり抜けてくれて、存在感のある立つ音なんです。 丁度、いきものがかりのホールツアーのリハーサル中に、使うサウンドをいろいろ試したのですがこのPa5Xのストリングスが楽曲とのマッチングが良く、そして音抜けもとても良かったのです。これは、私だけでなくライブの音響スタッフも言っていたので間違いないです。

いきものがかりのホールツアーのステージで本間氏はPa5X-76を使用されている

実際、ライブの楽曲で、生のオーケストレーションに、私がPa5Xのストリングスを重ねているんですが、生楽器に混ざっても全然違和感がなかったです。それと同じように、オルガン、トランペットやハーモニカの音なんかも手弾きで演奏しています。もはやPa5Xを生楽器のパートとして使っている感覚です。

生のオーケストレーションとも違和感なくなじむPa5Xのストリングス・サウンド

—— Pa5Xの音をそこまで評価いただき、ありがとうございます。
さて、Pa5Xはプロフェッショナル・アレンジャー・キーボードという肩書があるのですが、アレンジャー・キーボードとしてはどうでしょうか?


本間:そうですね。プロフェッショナル・アレンジャー・キーボードといっても他のワークステーション・シンセサイザーと同じで、演奏はできても、これだけでアレンジをしたり楽曲を仕上げることって難しいと思うんです。やはり日本においては最終的にPCやDAWを使って仕上げていくという流れが一般的だと思います。
ただ、このPa5Xで面白かったことがありました。ある日、ヘンリー・マンシーニ氏の教則本の楽譜をみながら、積みの音を確認していて気が付いたのですが、Pa5Xで和音の確認が正確にできたんです。一般的なシンセサイザーだと、適当に和音を重ねてもきれいに響くのですが、生楽器と同じで、その楽器のパートにとってダメな音の重ね方をすると、ちゃんとダメに聞こえます。
生楽器って最高音や最低音があるから、インターバル(和音)の重ね方には限界があるじゃないですか。なので理論上は間違っていない重ね方でも、実際の生楽器で演奏してもらうと、音がぶつかって綺麗にサウンドしないことがあるんです。それと同じで、譜面上のパート、例えばバイオリンをPa5Xのバイオリンで鳴らした時に、綺麗かそうじゃないかがすぐに分かります。本当にちゃんと楽譜を書かないとサウンドしてくれないんですね。今回もツアー曲のアレンジで譜面上の楽器構築を確認する時にとても役立っています。 おそらく、これはPa5Xの音色自体が必要以上に加工されていない音色、つまり、我々がスタジオに手練れのミュージシャンを呼んできて演奏してもらう時のような、生楽器の素の音に近いからなんだと思います。一言でいうとリアルなんです。今の若いミュージシャンはスタジオの音を聞く機会が少なくなってきていると思うんですが、Pa5Xを使ってスタジオで鳴っている響きをシミュレーションすることができると思います。
音楽はあくまで人間の集合体からなるサウンドであって、ボーカリストをバンドの伴奏がアシストしたり、インストだったらメロディーをいかに引き立てることができるかを目指して、私は譜面を書いています。そういう意味ではPa5Xはアレンジの結果を正しく教えてくれる優秀なアシスタントです。まさに、プロフェッショナルなアレンジャーですね。

—— 「優秀なアシスタント」だなんて、素晴らしいお言葉がいただけて感無量です。 本間さんのこれからの活動について教えていただけますか?

本間:今、いきものがかりのホールツアーに参加していますが、やっぱりライブはいいですね。もちろんレコーディングやアレンジはそのアーティストにとって一生残る大切なシーンなので特別な心構えで臨んでいますが、ライブはライブでその瞬間に立ち会ってくださった観客の皆さんにとっても一生残る思い出を共有できる大切なシーンなので、やりがいのある活動だと思っています。体が健康な限り、アレンジやライブにもどんどん参加するつもりでいます。

—— これからも益々のご活躍をお祈りするとともに全力で応援させてください。
本日はお忙しいところ貴重なお時間を頂きありがとうございました。


 

本間昭光

作編曲家、キーボーディスト、プロデューサー 1964年大阪府八尾市生まれ。
’88年に「マイカ音楽研究所」に入学。松任谷正隆氏に師事し、作曲アレンジを学ぶ。
’89年、上京とともに「ハーフトーンミュージック」に所属し、アレンジャーやサポートミュージシャンとしての音楽活動を開始。 これまで槇原敬之のバンドマスター、ポルノグラフィティへの楽曲提供やトータルプロデュース、いきものがかりのサウンドプロデュースほか、様々なアーティストを手掛け数々のヒット曲を生み出す。
また、新潟県長岡市で開催される野外フェス「長岡米百俵フェス」のキュレーターや、テレビ朝日「EIGHT-JAM」へのゲスト出演、ミュージカルの音楽監督を務めるなど幅広く活動している。
2023年には自身のプライベートスタジオ「FORCE RECORDINGS」を立ち上げ、創作活動にさらに力を入れている。

Produce, Arrange / Live
ポルノグラフィティ、いきものがかり、鈴木雅之、渡辺美里、MISIA、SMAP、KinKi Kids、V6、SUPER EIGHT、ももいろクローバーZ、天童よしみ、磯貝サイモン、Wink、工藤静香、原田知世、槇原敬之、広瀬香美、浜崎あゆみ、平井堅、北出菜奈、Buzy、FLOW、May’n、アンダーグラフ、長瀬実夕、風味堂、175R、ROCK’A’TRENCH、武藤彩未、中谷優心、柚希礼音、稲垣潤一、郷ひろみ、斉藤和義、藤井隆、藤木直人、前田亘輝、杏、井手綾香、家入レオ、chay、宇宙まお、め組、大黒摩季、華原朋美、JUJU、中川翔子、中島美嘉、hitomi、松下奈緒、水樹奈々、カズン、シド、PaniCrew、TEAM NACS、暗殺教室、境界のRINNE ほか (順不同、敬称略)

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