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2021.11.24

山木隆一郎「wavestate」インタビュー

数多くの有名アーティストのプロデュースや作曲などを手がける山木隆一郎さんは、歴代の「WAVESTATIONシリーズ」をずっと使ってこられたそうで、今回最新の「wavestate」も導入されたとのこと。

コルグ製品の長い歴史の中でも異彩を放つこのシリーズを愛してやまない理由、そして「wavestate」の使い方のヒントなどをご自宅の作業スペースにて伺ってきました。

山木隆一郎(やまき りゅういちろう)

安室奈美恵、鈴木愛理、東方神起など数多くのプロデュース、作曲、アレンジ、Remixを手掛ける日本R&B界の鬼才。主に、R&B、Hip Hop、FUNK、Electroなどを中核にしたClub/Dance系を得意とし、近年はジャンルを超えた作品も多数制作。日本人離れした鋭角なサウンドやグルーヴ、職人気質なプロデュースワークは、国内外のメジャーシーン、インディーズシーン問わず高く評価されている。自身を中心に構成されたユニット「RYPPHYPE」では、Vocalとシンセを担当。また、KORG、UVIなどのシンセサイザーのオフィシャルデモソングや、プリセット制作も行っている。

──音楽を始められたきっかけは

父が音楽大好きで大きいステレオのシステムがある家だったんです。そこでクラシックとかを聴いていったときに、これ良いから聴いてみなよと父から冨田勲の『惑星』のレコードを渡され聴いてそこから「すごい!何これ?」っていうのが始まりです。

そのレコードはまだ持っていますけど「シンセサイザーってこんなものなんだ」「じゃ音楽ちょっとやってみたいな」と思ったのが小学生の頃で、自分から言い出して小学校5、6年でピアノをやって中学に入ってギター弾いたり。当時は友達が「CZ-5000」(CASIO)を持っていてそれを借りてシンセってすごいなって思って。そして中学を卒業して初めて「EOS YS200」(ヤマハ)を買って、すぐに我慢できなくなって「WAVESTATION」を買いました。そこからの「WAVESTATION」とのつきあいですね(笑)


──2台目に「WAVESTATION」ってすごいですね(笑)何か使えるイメージがあってそれにしたんですか?

まず周りで持っている人がいなかったし変わっているものが好きだったので、今までのと違うし出音もすごく良かったし、そういったものを含めての選択でした。作っていた音楽は今とあまり変わらないです(笑)普通にポップスを作っていました。

──そのあたりで他に使われたものはありますか?

「M3R」(M1当時の1Uモデル)とかヤマハの「TG55」ですかね。「M3R」でいわゆる「M1ピアノ」をメインに使ったりしていました。シーケンサーはKAWAIの「Q-80」でした。一応PC-9801(NEC)もあって「カモンミュージック」(※メーカー名。製品名は「レコンポーザ」)も入れたりしていたんですが、単体で作った方が早かったので。

その頃に歳上の友達から「Mono/Poly」を借りて、高校時代はそれで音作りをして「TX-16W」(ヤマハ)でサンプリングして和音で弾くとか、そういうことをずっとやっていました。


──「WAVESTATION」も遍歴があるとお聞きしていますが(笑)

最初の「WAVESTATION」はずっと使っていてそこからEX(※有償でPCM波形を追加)にアップグレードしてしばらく使っていたんですが鍵盤が壊れてしまって「WAVESTATION A/D」を買ったんです。それも壊れたあとに(笑)「WAVESTATION SR」。これは大丈夫で長い間使っていたら「KORG Legacy Collection」で「WAVESTATION」がプラグイン化したのでそれにしました。

その後また何かのきっかけで鍵盤付きの本体を手に入れることがあって、そこから鍵盤のEX、もう一回A/D、SR。一旦なくなりまた幾つか得たうち減って今はSRが残っています(笑)


──全部取っておくわけにはいかないですもんね。

2011年の震災のあとに栃木の実家に戻ったので、そこで機材を整理しました。当時からそうだったんですけどデータでやりとりすることが多くて、これなら栃木に帰っても仕事はできるなとは思いました。 ただレコーディングのときに東京に呼ばれることが多くなってきたり、アーティストのプロデュースの話があり東京にいないとなかなか難しいということもあり、それで戻ってきた感じです。

──様々な「WAVESTATION」遍歴のあと、今回「wavestate」を導入されたわけですがどこに魅力を感じられたのでしょうか?

最初、開発段階のときにコルグから「山木さん、WAVESTATION詳しいから意見ください」ということで稲城の本社に行って触らしてもらう機会があったんです。試作の1台しかないような状態のときだったんですけど、音出したらすごく良くて。今までの「WAVESTATION」で操作が難しかった部分が全部パネル上に出ていて、これ使いやすいねって話になったんです。


──-ご自分でwave sequenceの組み立てとかはなさるんですか?

(WAVESTATIONの頃に)何度かはやったんですけど、さすがに面倒臭いなと思うことはあって(笑)iPad版の「iWAVESTATION」はランダマイズがあるじゃないですか。あれが結構好きなんです。「wavestate」はランダマイズが付いているので似たようなことができるかなというのもあって。確かに自分で組むのも良いんですけど必然的というよりは偶然的に組んだ方が面白いんじゃないかな。


──-wave sequenceはモーフィング的な(音色が変わる部分をフィーチャーした)ものとリズミックなものと2通りあると思うんですけど、どちらを使う方が多いですか?

どっちも使います。リズミックだと自分の意図を反映させるよりもランダム性の面白さの方がありますよね。細かく打ち込むなら「wavestate」でなくて良いのかも知れません。

minilogue xd moduleも使って頂いているとのこと

──オリジナルの「WAVESTATION」と音色的な違いを感じる部分は?

「wavestate」はいまどきの音が結構しています(笑)元になっている音が(WAVESTATIONに比べて)すごく良いじゃないですか。その違いがかなりありますよね。プリセットが非常に面白いものばかりなので、友達からも「どうやって使ったらいいの?」と訊かれるんですけど(笑)


──そこをすごくお伺いしたかったんですが(笑)

「wavestate」に関しては一旦LAYERのオン/オフをしてみるのが一番わかりやすい使い方かなと思います。必要以上な複雑さを省いて1音1音試してみると。プリセットをそのまま使うとみな同じになっちゃうので、いじるのならLAYERをオン/オフしてフィルターをかけてみるとか。あるいはオン/オフした上でwave sequenceをランダムにしてみるとか。そこが一番面白いかなと思います。あとはベクタージョイスティックでいじっていくとか。

──山木さん的にはどういう楽曲、どういう発想のときに「wavestate」を使いたいと思うんでしょうか?

wave sequenceだと楽曲を展開させるときとか、Bメロで8小節そのまま使っちゃうってときもありましたし、隠し味的に使うことが多いですね。いろんなジャンルで使えると思いますよ。シネマティックとかよく言われますけど、普通にポップスで使えます。どんなジャンルでもいくらでも合うと思うんですよね。

あとパッドのモーフィング、SAMPLEつまみを回したときのモーフィングとかは結構使えるとこなので。「自分だけのパッドサウンド」はみなが求めているところだと思うので、そういうのは作りやすいんじゃないかという気はしています。バージョンが2.0になってサンプルも取り込めるのでさらに作りやすくなったんじゃないかなと。


──ありがとうございました。

山木さんによるwavestateお薦め3音色+ランダマイズ機能紹介

山木さんがwavestateなどを使用したRYPPHYPE(ライプハイプ)待望の新曲「Brand New Life」が配信限定でリリース。

RYPPHYPEは、安室奈美恵、鈴木愛理、東方神起など数多くのアーティストへの作曲・プロデュースを手掛ける、山木隆一郎と、佐野元春、鈴木雅之などでマルチプレイヤーとして活躍する、スパム春日井のユニット。(メインボーカルのerina.は現在活動休止中。)