2014.04.01
モーモールルギャパン「SV-1」インタビュー

シーンを内側からかき乱す暴れ馬に
モーモールルギャバン。この京都発のギターレス3ピース・バンドに何を思い浮かべるだろうか。ロック、パンク、ファンク、ジャズ、あらゆる音楽スタイルを併呑しつつも、そのどれでもない彼らだけのケイオティックなサウンドか、偏執的な愛の歌詞か、絶叫か。もちろんそのすべてであり、それが彼らの云うところの「J-POP」なのである。だがしかし、その疾風怒濤のサウンドの向こう側には、ストイックとも言えるほどに音楽へ向きあうひたむきな姿勢が見え隠れする。コルグ取材班は、そんな彼らモーモールルギャバンにロング・インタビューを敢行した。
掲載日:2012年1月10日

音楽を始めたキッカケは?
ゲイリー・ビッチェ(以下ゲイリー):僕は勉強も運動もできなくて取り柄がなくて、女の子にモテたくて始めました。中学2年生の時に。
最初からドラムだったんですか?
ゲイリー:ドラムが一番簡単そうなのと、大きくて目立ちそうなのと、あと近所にドラム教室があったので…でも兄も音楽をやってて家にギターがあったから、ギターも独学でやりつつ、ドラムは教室に通いつつって感じで、中学2年生ぐらいの頃からやってました。
ユコさんはいかがですか?
ユコ・カティ(以下ユコ):私が生まれる前に親が勝手にピアノを買って、「誰か弾くだろう」みたいな感じで(笑)。一人目に兄がいるんですけど、男の子だったんで全然弾かなくて、二人目が私で女の子がやっと生まれたってことで、それで私がちっちゃい時に遊びで触っていたのが、たぶん最初に楽器に触った時ですかね。
マルガリータさんはどうでしたか?
T-マルガリータ(以下マルガリータ):4歳ぐらいからピアノを習っていて、中3ぐらいでバンドを組み始めて、それからずっとバンドをやってる感じですね。
バンドは最初からベースだったんですか?
マルガリータ:いや、最初はギターとキーボードと両方やる感じで(笑)高2の時に、その時のベースが抜けて、その時僕はギターだったんですけど、ゲイリーもギターで、ギターが2人だったんで、「お前ちょっとベースやってよ」っていう感じで(笑)。
アルバムの曲作りはどういう感じで行われるんですか?
マルガリータ:メインで作ってるのはゲイリー、ユコですね。
ゲイリー:作詞作曲が僕で、作詞作曲以外のほとんどがユコさんっていう感じです。
ユコ:特に『BeVeci Calopueno』に関してはその傾向が強かったですね。それまでは、それぞれがそれぞれのことをして、くっついてでき上がる感じだったのが、『BeVeci~』からは、やることを分担してやったので、(ゲイリーを指して)曲と歌詞に専念する、(自分を指して)アレンジに専念する、っていう感じでした。
『BeVeci Calopueno』は、いつの時代でも聴ける「普遍性」のようなものも感じられますが、その辺は意識したのでしょうか。
ゲイリー:ビートルズが好きなんで…(笑)。「流行りのサウンド」というものにそれほど興味はないんです。バンドのメンバーも特にユコさんもそうですし、ウチのプロデューサーもそういうタイプなんで。古き良き時代の良かったものをちゃんと残していかないとっていうのは、すごいあると思うんで。 ビートルズがお好きとありましたが、「変な人」のキーボードの一節に「In My Life」のような感じのところがありますね。
ユコ:ホントですか!全然意識してなかったんですけど(笑)。でも影響は絶対受けていると思います(笑)。ビートルズって聴けば聴くほど面白いことをしているんですよね。自分が知識的に経験的に成長すればするほど発見があるんです。だからすごいバンドですよね。
逆に最近のもので気になったものはありますか?
ゲイリー:ヴァンパイア・ウィークエンド(*1)とか面白かった。スゲー!これ新しい!って思いましたよ。
12月に発売になりました新作『PINK and BLACK』はCD+DVDということで、DVDはライブ映像がメインなんですか?
ゲイリー:ライブ半分、悪ふざけドキュメント半分っていう感じです。
(*1)ヴァンパイア・ウィークエンド: 2006年結成のアメリカのインディー・ロック・バンド。これまでにアルバム『ヴァンパイア・ウィークエンド(邦題:吸血鬼大集合!)』を2008年1月に、『コントラ』を2010年1月に発表。『コントラ』は米ビルボード200チャートで1位を獲得。2010年夏にフジロック・フェスティバル・グリーンステージに初出演。その後に単独来日公演を行う。

ところで、ユコさんのライブでのキーボードは何をお使いになっていますか?
ユコ:メインのキーボードがSV-1(73鍵モデル)で、もう1台60年代のコンボ・オルガンと70年代のアナログ・モノ・シンセを使ってます。古いキーボードが好きで…(笑)。
アルバムでもコンボ・オルガンの音はかなり出ていますね。
ユコ:あれはVOXなんですよ。でもツアーには耐えられないんで、ライブでは別のコンボ・オルガンを使っています。
VOXオルガンはJaguar(*2)ですか?
ユコ:はい、Jaguarです。いただきものなんですけど(笑)。VOX好きだ!って言ってたら「余ってるよ」って言ってくれた方がいらっしゃって(笑)
(*2)VOX Jaguar Organ:VOX社が1960年代に発表したコンボ・オルガン。同社のContinentalと共にコンボ・オルガンの代表的機種。
出力はラインじゃなくてギター・アンプなんですよね?
ユコ:アンプです。やっぱり音作りが直感的にしやすいんで。今はVOX AC30とTB35C2です。この2台になるまではライブ・ハウスにあるアンプを借りていたんですが、ここ1年近くはVOXです。
アンプで鳴らしているのはオルガンだけですか?
ユコ:シンセもアンプから出しています。手元で全部できるようにそうしてます(笑)。
アンプにマイクを立てて、PAへっていうことですか?
ユコ:ギターとまったく同じ要領です。昔はDIを使っていたんですが、モニターによって音が全然違うんで、ずっと違和感があって。
メイン・キーボードのSV-1では、どんな音を中心に使っていますか?
ユコ:エレピがほとんどですね。
お使いになってみて、いかがですか?
ユコ:SV-1は知ってすぐに気に入って買ったんで。それまでは、X5Dを使っていたんです。X5Dは今でも愛用してて大好きなんです(笑)。
それまではピアノタッチではなかったんですね?
ユコ:なかったんです。で、SV-1になってピアノタッチの鍵盤になって、それもすごく気に入ってます。やっぱりタッチ出るのがすごく嬉しいですね。
ゲイリー:音もこれまでと全然違うもんね。
ユコ:そうですね。良い音です。
エフェクターもSV-1のパネルで?
ユコ:エフェクトはアンプとの相性も考えて、内蔵のドライブ(Valvetoronix)だけにして、あとはコンパクト・エフェクターを使っています。歪みと、オクターブっぽいのとか、ディレイとかは、全部ペダルでやってます。
キーボードらしい部分とギター同然の部分を両方同時にやってるわけですね。
ユコ:ギターがいませんからね…。まぁ、ギターの代わりっていうというわけではないんですけどね。