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2014.05.01

マイカ・ルブテ「RK-100S & tinyPIANO」インタビュー Powered by CINRA.NET

あの人の音楽が生まれる部屋 Vol.9
Powerd by CINRA.NET

シンセサイザーの音色を基調としながら、どこか懐かしく暖かみのあるメロディーと歌声を奏でる日仏ハーフのシンガーソングライター、マイカ・ルブテさん。2009年に男女2人組ユニットEAを結成し、高野寛やsalyu×salyu、小山田圭吾らと共演しながら徐々に注目を集めてきた彼女が、昨年より本格的にソロ活動を開始しました。多くのビンテージシンセに囲まれながら作曲にいそしむ宅録系女子は、ミュージシャンとしてのみならず、モデル活動など様々な分野で活躍しています。そのバイタリティーはどこから来ているのでしょうか。彼女のプライベートスタジオで話を聞きました。

テキスト:黒田隆憲 撮影:豊島望


こちらの記事はCINRA.NETでもお読み頂くことができます。

マイカ・ルブテ

14歳より作詞作曲・宅録を独学で始める。有機的な歌声と暖かみのある電子サウンドで次世代のオルタナティブポップを追究。日本語・仏語・英語を独自に操る。趣味はビンテージアナログシンセサイザーの収集。日本人の母とフランス人の父を持つ。2009年に男女2人組ユニットEAを結成。2012年、セルフプロデュースによる1stミニアルバム『METEO』をリリース。2013年秋より、本格的にソロ活動を開始。

転校ばかりだった幼少時代を救ったピアノ
パリ国立高等音楽院にも合格。しかし……


フランス人のお父さんと、日本人のお母さんの間に生まれたマイカ・ルブテさん。父の仕事の関係で、国内外で引っ越しを繰り返すことが多く、転校するたびに友だちを作るのが大変だったとか。幼い頃から音楽に触れる機会は多く、クラシックが大好きな父に勧められて5歳のときからピアノを習い始めたそうです。

マイカ:近所に女の子がたくさんいて、みんな習っているからという軽い気持ちで始めたんです。小学5年生くらいまでは日本の教育しか受けてこなかったから、それから突然フランスへ引っ越すことになったときは、言葉が全く通じなくてハードな毎日でした。ただ、そんな中でもピアノが弾けたので、音楽の授業のときなどにチョロっと弾くと「マイカ、うまーい!」って褒めてもらえて。「芸は身を助く」じゃないですけど(笑)、心のよりどころにはなっていましたね。ただ、中学2年くらいの反抗期のときに本気で「やめよう」と思ったことはあります。パリ国立高等音楽院の入学試験を受けて、合格まで行ったのに「もういいや」って、辞退してしまったんです。今考えると「もったいないことしたなあ」って思います。結局、ピアノ自体はなんだかんだで大学生くらいまで続けていたんですけど。
 

ピアノ一筋の道をドロップアウト
The Beatlesでポップミュージックに目覚める


マイカさんの人生を決定する、The Beatlesとの出会いはまさにパリ国立高等音楽院を辞退した直後でした。キッカケは彼らのベストアルバム『ザ・ビートルズ1』(2000年)。初めて聴いたとき、「ポップスってこんなに面白いんだ!」と驚いた彼女は、それから本格的にポップミュージックへと傾倒していきました。自分でも曲を作りたくなって、オールインワンシンセ(シーケンサーやサンプラーなどの機能が搭載されたシンセ)を購入。すべて打ち込みでカラオケを作り、歌のうまい同級生に歌ってもらったりしていました。今ではボーカリストとして綺麗な歌声を披露するマイカさんですが、その頃は自分で歌おうとは「微塵も考えていなかった」そうです。

マイカ:当時は漠然と「音楽が作りたい」としか考えてなくて。手本にしていた音楽とかも特になかったんです。ただ、当時はThe Beatlesとスピッツを交互に聴くような毎日だったので、無意識にその影響はあったかもしれない。今思い出してみると、J-POPっぽい感じのアレンジの曲を作ってましたね。フォーキーなことをやりたいのに、使っている楽器はオールインワンシンセだから、それで多重録音という……ギターのパートも鍵盤で打ち込んでたんですよ(笑)。

アナログシンセとの偶然の出会い
バイト代をすべて機材に注ぎ込む日々


そんな彼女が現在のように本格的にシンセサイザーに興味を持つようになったのは、父親の仕事の都合で今の家に引っ越してきた後のことでした。家の近所を散歩中に偶然中古品販売店「ハードオフ」を見つけ、陳列してあった中古のアナログシンセサイザーを何気なく弾いた瞬間、強い衝撃を受けたそうです。

マイカ:それまでCDで聴いてきたシンセの音とは全然違う、一度も聴いたことのない音で、「なんだろう、この音は!?」って。それからはバイト代をすべてつぎ込んで中古シンセサイザーを買いあさる日々。1年間に10台とか買っていましたね(笑)。なんでそこまでハマったのかというと、アナログシンセ特有の生き物のような太いサウンドに惹かれたんだと思います。

それからはテクノやニューウェーブといった1980年代の音楽、Eurythmics(ユーリズミックス)や、Missing Personsなどにハマっていったそう。さらには、YMOが関わった歌謡曲のコンピレーションCD『イエローマジック歌謡曲』に収録された“コンピューターおばあちゃん”(酒井司優子)なども特に印象深かったそうです。

マイカ:私は1989年生まれだから、どれも生まれる前の音楽なんですけど、とっても新鮮でした。もちろん、The BeatlesやSimon & Garfunkelのような60年代の音楽も、相変わらず大好きで。基本的にはメロディーのあるものが好きなんだと思います。シンセが大好きでも、バキバキのテクノの方にはあまりいかなかったんですよね。