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2017.11.17

丈青(SOIL&"PIMP"SESSIONS)「Grandstage」インタビュー Powered by CINRA.NET

「日本人は、模倣をするのは得意なのだけど……」
 

SOILの活動と並行して、秋田ゴールドマン(Ba)さん、みどりん(Dr)さんとともにピアノトリオJ.A.Mを結成。ジャズをベースにヒップホップやハウス、ロックなど様々なジャンルを柔軟に取り込み、唯一無二のサウンドスケープを構築していきます。ソロ名義では、2014年に1stアルバム『I See You While Playing The Piano』を発表。さらにSOILとしては、昨年の『リオ五輪閉会式』の「フラッグハンドオーバーセレモニー」の演奏を一部務めるなど、精力的な活動は止まるところを見せません。

丈青 :「常に心がけているのは、オリジナリティーのある作品を作るということ。日本人は模倣をするのは得意なのだけど、そこで終わってしまうところがウィークポイントだとよく言われます。それだと、世界的にはまったく認められない。

オリジナリティーというのは、自分の内側から自然に出てくるもの。つまり、その人の生き方、エクスペリエンス(経験)から出てくるものなんですよね。リスナーが求めているのもそこじゃないですか。その人自身から出てくる音をみんな聴きたいわけですから。

そしてなにより、音楽に対してどれだけ真剣に向き合って来たのかが重要。たくさんの音楽を聴き、自ら進んで追求し、いいものをどんどん享受する。アート全般に対しての感性を磨いていくことでしか、オリジナリティーは生まれないと僕は思います」

 



大事な手を負傷。入院、リハリビを経て、今の状態はどう?
 

SOIL、J.A.M、そしてソロと、順調に活動していた丈青さんに転機が訪れます。2017年4月に右手の薬指を負傷した彼は、伸筋腱断裂・化膿性腱鞘炎と診断されたことを受け、予定されていたJ.A.Mのツアーをすべて中止することになりました。

丈青 :「17日間、入院してたんですよ。そのあともずっとギブスを付けていたから、ピアノを弾けない状態が1か月以上続いてしまって。それほど長いあいだピアノを弾かないことなんてこれまでなかったし、腕も筋肉が落ちて細くなってしまったから、「ちゃんと元に戻るのだろうか?」と不安で仕方なかったですね。

怪我のほうは、お医者さん曰く奇跡的に治ってくれたのですが、そのあとのリハビリは相当時間がかかるんじゃないかと言われていました。でも結果的には、イメージ通り弾けるようになるまでに、それほど時間がかからなかったんです。それで気付いたのは、フィジカルなスキルよりも、自分がイメージしたことをピアノで表現する力のほうが大事なんだということですね」

 

 

 


7月14日から放送中のテレビドラマ『ハロー張りネズミ』(TBS系 / 毎週金曜夜10時より放送)の劇伴を担当しているSOIL。実はそれらの楽曲のレコーディング期間も、入院やリハビリの最中だったそう。

丈青 :「僕が弾いていない曲も入っているし、僕が弾いた曲もまだリハビリ中だったため、指が動かない状態だったんですよね。切ない感じの曲は、指が動いてなくて本当に切なかった(笑)。ほとんど左手だけでレコーディングした現場もあったんです、しかも一発録りで。みんな「全然遜色ないよ!」って言ってくれたのでよかったんですけど……」

 

SOIL&"PIMP"SESSIONS『真夜中のハリネズミ Music from and inspired by ハロー張りネズミ』



野田洋次郎とコラボした経緯と、大根仁監督への敬意
 

『ハロー張りネズミ』の主題歌“ユメマカセ”は、RADWIMPSの野田洋次郎さんをボーカルに迎えた異色の一曲。1990年代のアシッドジャズをイメージしたという楽曲は、これまで聴いたことがない野田さんの新たな魅力を引き出しています。

丈青 :「野田さんとのコラボは、大根(仁)監督のアイデアです。大根さんは本当にセンスがいいですよね。映像のなかでの僕らの音楽の使い方、エディットの仕方が素晴らしいんです。ドラマを見ていると、本当に彼は音楽が好きなんだなって分かるし、「この仕事がやれてよかった」と嬉しく思います。

そして野田さんは本当に素晴らしいボーカリストです。彼が新しいスタイルへの挑戦を、すごく楽しんでやってくれたことがなにより嬉しくて。「売れるものを」とか、そういった邪念があると絶対にダメだけど、この曲はお互いにピュアな気持ちで取り組むことができました。僕が一番シビアに考えたのは、グルーヴに関してで。黒くなりすぎず、現代の日本のマーケットにはまるくらいの絶妙な配合を目指しました」

 

 


大きな怪我を乗り越え、見事復帰した丈青さん。今後の展望についてはどんなイメージを持っているのでしょうか。

丈青 :「怪我もそうですが、2014年にソロアルバムを出したことは、自分にとって非常に大きな出来事でした。ピアノと真摯に向き合い、その可能性を追求したことで、経験に裏打ちされた自信を得たというか。

わからないことがたくさんあるときは、つい虚勢を張ってしまうし、等身大でいられなくなってしまう。自分に自信を持てば等身大でいられるし、いろんなものを素直に吸収できるようになるのだと思います。これからもずっと素直であり続けたいし、それが成長していくために一番大事なことなのかもしれないですね」

 

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