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2016.07.15

Rei「WAVEDRUM mini & STAGEMAN 80」インタビュー Powered by CINRA.NET

|「気持ち良さと気持ち悪さは紙一重」という信念
 
2015年2月、7曲入りの1stミニアルバム『BLU』でデビューを果たしたReiさん。共同プロデューサーはペトロールズの長岡亮介さんで、ブルーズを下敷きにしつつ、1960年代のロックや70年代のシンガーソングライターのエッセンスを凝縮した楽曲は、シンプルでありながらも豊かな広がりを感じさせ、聴き込むごとに味わいが増していきます。しかも、単なる懐古主義ではなく、ルーツミュージックを今の視点で照射した「現在進行形のサウンド」に仕上げているところが、まさに彼女の真骨頂といえるでしょう。

Rei :ストーリー性のあるアルバムが昔から好きなんです。The Whoの『Quadrophenia』(1973年)や、Yesの『Fragile』(1971年)、The Beatlesの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(1967年)とかですね。ロックオペラ的な、頭から最後まで聴くのが好きなので、自分が初めてアルバムを作るときにも、全体の流れや滑らかにストーリーを進めるための曲順にこだわりました。長岡さんのことは、「歌声に気持ち良くフィットするギターを考える人だな」と思っていて。しかも、ギターの魅力も余すことなく伝えるアレンジなんですよ。私自身も、歌とギターを同じくらい大事にしているので、きっと長岡さんならいろいろ教えてくださるんじゃないかと思ってお願いしました。

 


日本語と英語を「ちゃんぽん」にした歌詞も、Reiさんの楽曲の魅力のひとつ。まずは英語で歌詞を書き、そこからどの部分を日本語にするか決め、その言葉の「響き」を大切にしながら仕上げていくのが彼女のスタイル。長岡さんの日本語の使い方にも大きな影響を受けたそうです。例えば、「~している」という歌詞があったとして、メロディーの1音に対して「い」や「る」など、1文字を割り当てることが邦楽の場合は多いのですが、そこを「いる」と1音節にすることで、他にはあまりない譜割となり、独特のリズム感を生み出しています。しかも英語の歌詞は、日本人が耳にしてもすぐ意味が入ってくるような単語を使っているため、「ちゃんぽん」の歌詞がそのままダイレクトに脳へと入っていく快感を味わえるわけです。

Rei :歌詞の内容は、日常的に使っているけど誰も着目していない言葉とか、意外な組み合わせをいつも探しています。例えば“BLACK BANANA”という曲は、「ブラック」も「バナナ」もみんな知ってる言葉だけど、組み合わせることで、「え、なんだろう?」と思わせるフックにしていたり。大切にしているのは「違和感」です。聴いていて「なんとなーくムズ痒いぞ」とか、ちょっとずつズレているような感じがして「これでいいのだろうか?」みたいに感じることって、気持ち良さと気持ち悪さが紙一重だと思うんですよ。「気持ちいい違和感」って言うのでしょうか。例えば、音色ひとつとっても、かなり耳に痛い音でも一瞬だったらものすごく耳を引いたりとか。あとは「テンション&リリース」というか、グラグラしていたものが、いきなり落ち着くところにきたときの気持ち良さってありますよね。それを音楽で演出するには、どうしたらいいのかを考えています。

 
|「ポップ=ハーシーズのチョコ」というReiのポップ観
 
2015年11月には2ndミニアルバム『UNO』をセルフプロデュースでリリース。前作よりもポップで親しみやすいメロディーを持つ楽曲が並んでいますが、よく聴くと様々な仕掛けが施されています。例えば、リード曲“JUMP”はベースラインをトロンボーンが担っていたり、“POTATO”にはジャガイモを包丁で切るときの音をパーカッション代わりにサンプリングしていたり、本来の使い方ではない「遊び心」が溢れています。「ギターをギターとして弾かないことを意識した」という彼女の発言は、かつてジョン・レノンが「ギターをピアノのように弾き、ピアノをギターのように弾きたい」と述べていたことを思い出しました。

 


Rei :既成概念を取り払ったら、ギターももっと面白い使い方があるかもしれない。ギターを愛しているからこそ、「私の考えを彼(ギター)に押し付けず、弾かれたがっているように弾いてあげるにはどうしよう?」って思うんです。そういう気持ちと併せて、The Beatlesもそうだったように、ポップな面と実験的な面が両方入っている楽曲をこれからも作っていきたい。「ポップ」という言葉を、私自身は「浸透性」というふうに捉えています。例えばアタリメのように、何度も噛まないと味が出てこない、理解するのに時間がかかるものではなく、ハーシーズのチョコみたいに、口に入った瞬間に「甘い!」って思えるような(笑)。味がダイレクトに伝わってくるという意味での「浸透性」の高さが、ポップの基準なんじゃないかって。

 

「Rei」と刻印されたギター



| 弱冠23歳のRei、次の挑戦は「エモーションの極端なところ」
 
現在は次作のリリースに向け、鋭意制作中だというReiさん。今後の展望はどのように考えているのでしょうか。

Rei :『UNO』は幾何学的というか、本人はポーカーフェイスなんだけど、ちょっとエキセントリックなことをやっているみたいな、自分の中でのキャラクター像がありました。次の作品は「人間的」というテーマで、よりドラマチックにエモーションの極端なところを表現したいです。日常の会話では建前や自分を良く見せたいという見栄があったりするかもしれないけど、一人きりのときにしか出てこない、自分の極端な感情を、音楽にぶつけてみたらどうなるのかな? と思いながら制作しています。どういう仕上がりになるか、ちょっと今の段階ではわからないけど、人間的なアルバムが作れたら嬉しいですね。