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2014.04.01

Hair Stylistics a.k.a. 中原昌也 インタビュー

「とにかく機材をいじっているのが好きなんですよ」

1988年頃より「暴力温泉芸者」として音楽活動を開始。以来、国内外から高い評価を受け、現在まで多方面で活動を続けている中原昌也。1997年よりHair Stylistics名義での活動を開始し、2004に待望の1stアルバム『Custom Cock Confused Death』を発表、2008年4月からは『Monthly Hair Stylistics』シリーズを12ヶ月連続でリリースし、2009年3月のvol.12で完結。また、当初は50作を予定していたと云われている私家版CD-Rシリーズも、2011年4月には50作目『Smiley, Soil Smiley』をリリースし、現在もさらなる新作が次々と発表されている。このようなリリース・ラッシュと並行して国内外での精力的なライブ活動もこなす彼の機材リストにはmonotribeやKAOSS PAD QUAD、MS-20やX-911など新旧のコルグ製品が存在している。今回は、monotribeを中心に音楽観や機材に向ける思いなどを伺った。

掲載日:2011年8月24日

高校生の頃からノイズというか、このようなスタイルの音楽を?

ノイズがやりたかったというよりは、なんかできないかなぁと思った時にノイズかなぁと思ったんです。楽器が弾けたら弾いていたかも知れませんが。でも、小さい頃は電子オルガンをやっていたりしていましたよ。決して上手いほうではありませんでしたが…。

その頃からノイズ・ミュージックをよく聴かれていたのでしょうか?

それだけということはもちろんなくて、その頃のヒット曲なども普通に聴いていましたよ。ニューウェーブなどですよね、80年代後半にかけてのあの頃ですね。

最初の頃はどういう機材を使っていたのですか?

サンプラーですね。80年代の後半は、サンプラーが買える値段になってきた頃でしたよね。キーボード型のサンプラーとか、買いましたよ。

サンプリングの初期ですね。

そうですね。その前からもトレヴァー・ホーン(*1)とか、あの辺のも普通に聴いていましたよ。中学生の頃ですね。まぁ僕は世代的にはYMO世代なので、聴くには聴いていました。あとディーヴォ(*2)は好きでしたね。

(*1)トレヴァー・ホーン:イギリスの音楽プロデューサー。ヒット曲「ラジオ・スターの悲劇」で有名なバグルスのボーカル、イエスのボーカルを経て、1983年にZTTレコーズを設立、自身のプロジェクトでもあったアート・オブ・ノイズやグレイス・ジョーンズ、プロパガンダなどのプロデュースを精力的に行い、時代の先端を走るプロデューサーの1人となる。近年ではベル・アンド・セバスチャン、シャルロット・チャーチ、t.A.T.u.のプロデュースで話題に。また、バグルスの再結成や、イエスの新作のプロデュースも行う。

ディーヴォ:アメリカのロック・バンド。1974年結成。ポスト・パンク・ミュージックの先駆とも言えるエキセントリックかつポップな音楽を演奏し、同時期に登場した数々のニューウェーブ・バンドの中でも突出した影響力のあるバンドであり、日本ではクラフトワークとともにテクノ・ポップの成立を語る上で不可欠な存在となる。後年のPOLYSICSにも大きな影響を与える。エレクトロニクス独自の語法を追求する数少ないバンド。バンド名の「DEVO」は「De-evolution」の略で、「人間は退化した生物」だという意味。近年では、2003年、2008年のサマーソニックで来日。

ライブの機材量はいつもものすごい物量ですよね?

機材は少なくしたいですよ、もうホントに(笑)。ラップトップだけでやっている人とか、羨ましく思いますね(笑)。だけど一時期、コンピュータに移行しようと思って機材を色々用意してやっていた頃があったんですよ。でも色々あって結局またハードに戻りました。

ライブ機材の特徴として、同じ機材が複数ありますが、これはどうしてですか?

僕の場合はステレオでやりたくなるんですよ。ステレオで出ている音でも、左右で違うことが起きるような。そういう欲望が出てきちゃうとどうしても2台以上になっちゃうんですよね。だからそれだけ機材が増えちゃうんですよね。

でも、見た目の迫力は圧倒的です。

そうですね。音楽の好みは別としてジャン・ミッシェル・ジャール(*3)とか、クラウス・シュルツェ(*4)とか、物量で圧倒するような(笑)……ああいうのに憧れがありますね。タンジェリン・ドリーム(*5)とか、機材がたくさんある感じとかね、ああいうのが好いなぁって思いますね。ただ僕は単なる機材マニアというわけではなくて、「こういう音が聴きたい」って買い集めていたら、いつの間にかものすごい量になっていたというだけなんですよ。決してコレクター的に集めているわけではありません。

(*3)ジャン・ミッシェル・ジャール:フランスの音楽家、キーボーディスト。パリ国立音楽学校を卒業後、実験音楽と電子音楽の道に進み、1976年シンセサイザー音楽としての第1作『幻想惑星』を発表、翌年に全世界発売となり一躍シンセサイザー音楽の第一人者になる。1981年には欧米のミュージシャンとしては初の中国公演、1986年には米ヒューストン市制150周年記念行事でのコンサートや1998年サッカーワールドカップ・フランス大会のテーマ曲(小室哲哉と共作)など、ビッグ・イベントに欠かせない音楽家の1人。父親は映画『アラビアのロレンス』の映画音楽で知られるモーリス・ジャール。

(*4)クラウス・シュルツェ:ドイツの音楽、作曲家。1960年代末?1970年代初頭にかけて、タンジェリン・ドリーム、アシュ・ラ・テンペルのドラマーとして参加。自身のソロ作品第3作『ピクチャー・ミュージック』以降はシンセサイザー主体の制作姿勢を採るようになり、以来30年以上にわたり多数のソロ作品を発表し、初期のシンセサイザー/電子音楽のパイオニアと称され、後年のテクノ、エレクトロニカ、アンビエント・ミュージックや、トランス・ムーブメントにも影響を与える。ライブ・コンサートでは、大量の機材をステージ上で駆使することで有名。

(*5)タンジェリン・ドリーム:ドイツのロック/シンセサイザー音楽グループ。クラウト・ロックの代表的存在であり、プログレッシブ・ロック、アンビエント、ニューエイジ、テクノに大きな影響を与える。エドガー・フローゼを中心に1967年結成。以来、メンバー交代を繰り返しながらも、現在まで活動を続けているグループ。初期に見られる既製の楽器にエレクトロニクス処理をするスタイルから、’71年頃から急速に電子音楽化を始め、現代音楽的な難解な作品群に続き、’74年の『フェードラ』、翌年の『ルビコン』はシーケンサーを全面的に使用した画期的な作品となり、続く’76年の『浪漫』ではリズム、メロディ、ハーモニーといった伝統的語法に回帰、その後’80年代はサントラ作品を多数手がける。

機材選びのポイントとしては、どういうものがありますか?

やっぱり無駄そうな機能が付いているものには惹かれますよね(笑)。

ということは、謎の部分があると惹かれるとか?

そうですね、これをどうやって使おうか?なんて考えたり。あと、便利そうな機能だけど、これをどう間違った使い方をしようか、とかそういうことを考えちゃいますね。そういう気持ちは大きいですね。

Hair Stylistics a.k.a. 中原昌也 - Studio Live at KORG - Part.1

monotribeについて、特にお気に入りのポイントは?

アクティブ・ステップが好きですね。コレ良いですよ。気が利いてますね。これを使うとポリリズムっぽいことが簡単にできて楽しいんですよ。

ライブなどでもすでにmonotribeをお使いですが、印象はどうですか?

価格が安い割に色々できて面白いですね。周りからも「あの機材なに?」とか「もう4台も持ってるんだ!」とか(笑)言われますよ。半ば呆れたかのように(笑)。

ライブでどれがどの音を出しているのか分からなくなることなど、あるのでしょうか?

むしろ分からなくしようと思って4台使っているという意味もあるんですよ。リバーブを深くかけてドローンのようにすることもありますし。monotronも出た時にすぐ2台買いましたよ。ただ、monotronはみんな使ってますよね。僕のようなタイプの音楽の人もみんな。

コルグ製品のイメージや印象をお聞かせください。

僕が機材をいじり始めた最初の頃に使っていたのがMS-20だったんです。MS-20の何が良かったのかというと、最初に適当に作った音があまりにも音楽的でなかったところに「自由度があるなぁ」って思ったんです。海外のこの手のミュージシャンもみんな使ってますよね。特に80年代のドイツではみんな使っていましたよね。なんかこう、汚く濁ったような音とかもちゃんと出ますから…今そういう音を出そうと思っても逆に難しいんですよね。今の機材だと特に「いかにもテクノっぽい音」とか、そういう感じになっちゃいますから、そういうものをわざわざ崩さなきゃ面白くないわけで、当然キレイな音も出れば、よく分からない音も出るみたいな、そういうシンセが好きですね。世界的に見てもMS-20はすごいですよね。このぐらいの価格帯でここまでの自由度のものって、なかなかないですから。これくらいのサイズでパッチできるものって他にないですよね。だから、そういうところがコルグにはあるなぁって今も感じますね。自分で音を作らなくちゃ使えない機材ですよ。今、そういう機材が少ないからプリセットみたいな音楽ばっかりになっていくわけですよ。それはホントに残念なことですね。monotribeもMS-20の流れを汲んでいますから、どうしようもない音も出ますよね(笑)。「これは使えないだろ!」っていう音も(笑)。汚い音っていうわけではないんですが「何に使うの?」っていう音も。でも、そういう瞬間があるというのは逆に自由度が高いわけですから、「おっ、好い感じ」って思うんです。そう感じるシンセって案外少ないですよ。そういう良さがコルグ製品にはあると思いますよ。