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2014.04.01

椎名純平「SV-1」インタビュー

「SV-1は、指にピッタリついてくる楽器ですね」

2000年11月のデビュー以来、3枚のアルバム、11枚のシングルをリリースし、ビンテージ・エレクトリック・ピアノによる弾き語りをはじめ、デュオ・ライブやクラブ・イベントなど、さまざまな形態でのライブ・パフォーマンスを展開する中、2008年には新たに椎名純平 & The Soul Forceを結成した椎名純平。「自身の分身とも言える」ビンテージ・エレクトリック・ピアノに注ぐ深い愛情は、コルグのステージ・ビンテージ・ピアノSV-1に共鳴し、彼のライブでの相棒となった。そんな椎名純平にSV-1のインプレッションやビンテージ・エレクトリック・ピアノなどについて、お話しを伺った。

掲載日:2010年5月25日

音楽との出会いは?

モーツァルトから都はるみまでかかる家だったんですね、うちは。そんな中でいわゆるAOR(*1)と呼ばれていた音楽が「なんか好きだな」って思い始めたのが、たぶん最初のキッカケです。今から30年ぐらい前の話ですね(笑)。 その一方でピアノを習っていた…と言いますか、習わされていたんですね、その頃。でもピアノのレッスンはイヤでイヤでしょうがなくて…。幼稚園の時にちょっと習った後、小学三年から中学一年までやったのかな?

(*1)AOR(エー・オー・アール):Adult-Oriented Rock(和製英語「アダルト・オリエンテッド・ロック」)の略。本来はAudio-Oriented Rock(オーディオ・オリエンテッド・ロック)などと呼ばれる、70年代~80年代初頭の音志向の米国ロック。TOTOやシカゴ、クリストファー・クロス、スティーリー・ダンなどが代表格。ボズ・スキャッグスなど、日本でAdult-Oriented Rockと呼ばれた音楽は現在の米国ではAdult Contemporary(アダルト・コンテンポラリー)と呼ばれ、ノラ・ジョーンズが代表的な存在。

じゃ、ずいぶん長く…

そうなんですけれども、とにかくイヤでイヤで…でも絶対イヤだから辞めるというほど意思は強くなくて(笑)、何となく流されてやっていたという辺りが第一の芽生えですね。 それで、その後に高校一年ぐらいに「あ、ビリー・ジョエルって弾き語りでできるのかな?」ということをふと思った時に、家になぜかその弾き語りの譜面があったんです。それでそれをやってみたりして、再びピアノに触り出したんですね。一方で、高校一年の時に友だちにブラスバンドに引きずり込まれたんですね。そこでパーカッションを始めて、そうなるとドラムを自動的にやることになり、そうなるとバンドをやることになり(笑)、バンドをやると、自分で歌うようになり始めて…。だいたい高校三年、卒業間際ぐらい…そこからですね。

それで歌を始め、その前にAORでピアノと「再会」して、という形で…それが現在の椎名さんのスタイルに繋がっていく…

そうですね…でも、当時はいわゆる打ち込みと言いますか、R&B的な音楽をやってたもんですから…。もう鍵盤は打ち込みの道具ぐらいにしか思っていなくて、それでデビューをする直前にライブをやった時に、当時のディレクターの人に「お前の鍵盤は面白いから弾きながら歌ったらいいじゃん」と言われて、「え?そういうこともあるの?」という感じでやり始めたんです。

それでデビューにつながるわけですね。当時はR&Bのようなスタイルの音楽を?

そうですね、その頃はディアンジェロ(D’Angelo)(*2)のアルバム『ブードゥー(Voodoo)』が出る直前で、いわゆるヒップ・ホップも好きですし、R&Bみたいな音楽も好きだし、それでヒップ・ホップが当時サンプリングを多用していた時代ですから、サンプリングしていた元の音楽…70年代だったり、80年代であったり、そういう音楽にも興味を持っていた時期で、いずれにせよ、感じとしてはディアンジェロ的な動きをしていたんですね。だから音楽の聴き方もそうですし、鍵盤を弾くということに関しても、ディアンジェロも弾きながら歌っていたし、何となく弾き語り的なものに目覚めかけていて…。ディアンジェロ以外にも例えばマックスウェル(*3)やグルーブ・セオリー(*4)、エリカ・バドゥ(*5)といったニュー・クラシック・ソウル(ネオ・ソウル)(*6)と後に呼ばれるような音楽がバーッと出てきて、いわゆるヒップ・ホップっぽい、タフなビートとベースで、でもビンテージ・エレピが乗っかっていてちょっとオシャレな感じで、っていうような音楽が世界的にヒットしていましたから、やっぱりそういう影響はかなり受けましたね。

(*2)ディアンジェロ(D’Angelo):アメリカの歌手。ボーカルだけでなく、ピアノ、ギター、作詞、作曲なども行う。多くのミュージシャンに影響を与えている、いわゆるミュージシャンズ・ミュージシャンである。70年代ソウルの感覚とヒップ・ホップの感性を融合させたニュー・クラシック・ソウルのムーブメントを作り出した一人。アルバム『ブードゥー(Voodoo)』は2000年発表のセカンド・アルバム。

(*3)マックスウェル(Maxwell):アメリカのR&Bアーティスト。2009年発表のアルバム『BLACKsummers’ night』で2010年のグラミー賞ベストR&Bアルバム部門を獲得。

(*4)グルーブ・セオリー(Groove Theory):アメリカのR&B/ヒップ・ホップ・デュオ。女声シンガーであるアメール・ラリュー(Amel Larrieux)とプロデューサーのブライス・ウィルソン(Bryce Wilson)により1993年に結成。アルバムに『Groove Theory』(1995年)がある。

(*5)エリカ・バドゥ(Erykah Badu):アメリカのミュージシャン。ニュー・クラシック・ソウル/ネオ・ソウルの立役者の一人。1997年発表のアルバム『バドゥイズム(Baduizm)』で1998年グラミー賞ベストR&Bアルバム部門を受賞。近年ではテキサス州ダラスでのミュージック・ビデオ撮影で現地の警察に訴追されたことで紙上を賑わせた。

(*6)ニュー・クラシック・ソウル/ネオ・ソウル:1970年代のソウル・ミュージックに、ジャズ、ファンク、ヒップ・ホップ、ハウスの要素を加えて発展した音楽スタイル。

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