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2013.11.28

ハヤシ (POLYSICS)「KingKORG」インタビュー Powered by CINRA.NET

あの人の音楽が生まれる部屋 Vol.4
Powerd by CINRA.NET

DEVOやKraftwerk、YMOといったテクノバンドの影響を強く受けつつも、パンクやハードロック、プログレなど様々な音楽スタイルを貪欲に取り込み、唯一無二のサウンドスケープを構築するニューウェーブ・ロックバンド、POLYSICS。揃いのコスチュームに身を包み、アグレッシブなパフォーマンスを展開する彼らのライブは日本のみならず、海外でも大きな評価を受けています。度重なるメンバーチェンジを乗り越え、3人編成となった今もなお第一線で活躍し続けるバンドの頭脳、そしてリーダー / リードボーカルのハヤシさん。姉に聴かされた筋肉少女帯で音楽に目覚めたという彼の、「もの作り」へのこだわりはどのようなものなのでしょうか。普段、バンドのリハーサルをしているという下北沢のスタジオを訪ね、話を聞いてきました。

テキスト:黒田隆憲 撮影:豊島望


こちらの記事はCINRA.NETでもお読み頂くことができます。

POLYSICS(ぽりしっくす)

1997年、高校生だったハヤシがDEVOに憧れPOLYSICSを結成。1999年、早くもアルバム『1st P』でインディーズデビュー。翌年にはキューンレコードからメジャーデビューをはたし、海外での活動も開始する。以降、国内外ともに大きな評価を受け続けている。2010年8月からは、ハヤシ・フミ・ヤノの3人体制となり、『Oh! No! It's Heavy Polysick!!!』、『Weeeeeeeeee!!!』とコンスタントにアルバムをリリース。最新アルバム『ACTION!!!』が2014年1月15日リリース予定。

特撮ものが大好きだった幼少時代〜
筋肉少女帯に感じたパンクなメッセージ


幼少の頃は、とにかく「特撮」が大好きだったというハヤシさん。クリーニング屋を営んでいる彼の実家には、「冬物30%OFF!」などを案内するチラシが山積みになっていて、そのチラシの裏にウルトラマンの怪獣や仮面ライダーの怪人を、とにかく描きまくっていたそうです。ご両親が共働きだったこともあり、家でずっと絵を描いてはそれを壁に貼って遊んでいるような、そんな子供時代を過ごした彼が音楽に目覚めたのは、5つ年上のお姉さんの影響でした。

ハヤシ:姉とはプラモデルを一緒に作ったりして遊んでいたのですが、彼女の中で「プラモブーム」が終わって「バンドブーム」になったのをキッカケに、自分も音楽に目覚めました。最初に興味を持ったのが筋肉少女帯。バンド名からしてギャルバン(女性バンド)だと思ってたら、実は男だったというところでまず興味が沸いて(笑)。“高木ブー伝説”も、最初は笑って聴いてたんですけど、繰り返して聴くうちに「この人たちはすごいかもしれない!?」って思い始めて。コミックソングのようで、実はすごくパンクなメッセージが込められているな、って感じたんです。
 

箱ごと譲り受けた『宝島』のバックナンバー
テクノミュージックとの初めての出会い


おりしも当時は「第一次バンドブーム」。中学生になってからは、ユニコーンやレピッシュなど、とにかく色んなバンドを聴いたり、ライブを観たりしていたそうです。自分でもバンドをやってみようと思った彼は、何故かドラムが置いてあった近所の児童館でミニアンプを使い練習を始めました。

ハヤシ:その頃には、完全に音楽中心の生活になっていましたね。大槻ケンヂさんのラジオ番組でかかる曲は片っ端から聴いて、そこで初めてケラさんがやっていた有頂天というバンドの存在を知りました。彼らの3rdアルバム『ピース』の歌詞カードに、「WE HAVE NO MESSAGE」って書いてあって、「これはカッコいい音楽に違いない!」って確信したのを覚えています(笑)。そしたら、ちょうどクリーニング屋のお客さんに、モッズバンドをやっている年上の人がいて、その人から雑誌『宝島』の1980年代のバックナンバーやら有頂天の7インチレコードやらを段ボール箱ごと譲り受けたんですよ。

山のような『宝島』のバックナンバーを貪るように読んでいくうちに、ヒカシュー、P-MODEL、PLASTICSという「テクノポップ御三家」だけでなく、YMO、さらにはDEVOやKraftwerkといった海外のテクノバンドが存在することを知ったハヤシさん。それがテクノミュージックとの最初の出会いでした。中でも、耳を惹いたのはそこで使われているシンセの音だったそう。それまでのハヤシさんにとって「シンセ音」のイメージは、流麗なストリングスサウンドだったり、エレクトリックピアノだったり、あるいはオルガンだったり。いわゆる「鍵盤楽器」が奏でるサウンドでした。

ハヤシ:有頂天を聴いたときに「面白い音がするなあ」と思ったのが原体験です。今まで聴いたことのないような、ピコピコした音とか、ビヨ〜ンっていう音とか、ものすごく興奮したんですよね。「こんな音も出るんだ! これならピアノが弾けなくても出来るかも」って。それで、ヘンな音を出してみたい願望が高まり、友達からMTRを借りて、一人でわけの分かんない宅録を始めました(笑)。YAMAHAの小型キーボードに内蔵されているリズムを録音して、そこにディレイをかけたシンセや声を重ねたりして。「どんな音が出るのか分からない楽しさ」っていうのを、そのときに味わったんですよね。

高校生時代のバンド「コアラ盛り合わせ」
一発録りで生み出された2枚の幻のアルバム


家では宅録にいそしみ、外ではバンドを8個くらい(!)掛け持ちしていたというハヤシさん。当時はまだ、バンドに「ピコピコサウンド」を融合しようとは思っておらず、とにかく色んなジャンルを片っ端からコピーしていたそう。ハードロック、メタル、パンク、ニューミュージック……。それが、今のPOLYSICSの「雑食性」に繋がっているのかもしれません。やがて高校生になると「コアラ盛り合わせ」というバンドを結成し、初のオリジナル曲、そして「レコーディング」にも挑戦しました。

ハヤシ:父親の会議用のテレコを部屋の真ん中に置いて、リズムマシンに合わせて歌ったり叫んだり、ギターやベースをミニアンプで鳴らしたり、「メタルパーカッション」といいながら灰皿を叩いたり(笑)、そんな一発録りで2枚のアルバムを作りました(笑)。今の若い子たちのデモ音源とは、もう比べ物にならないくらいヒドイです。でもその頃は、人生(電気グルーヴの前身バンド)やThe Residentsを聴いていて、「楽器が弾けなくても、面白いアイデアさえあればいいんだ、それがニューウェーブだ!」って思ってやっていましたね(笑)。